日経 xTECH Special 日経 xTECH 日経 xTECH Special

もっとスマートに、高度に、柔軟に、2018年に注目すべきテストのトレンド

新しい技術や製品の開発において、テストは、機能や効果、性能、品質を検証し、保証する上で欠かせない。開発する技術や製品が高度になれば、テストにもより高度な技術が求められる。テスト環境の準備は、常に技術や製品の進化を見越して進めなければならない。高度なテストニーズに応える高い性能と柔軟性を兼ね備えたテストプラットフォームを提供しているナショナルインスツルメンツ(NI)には、世界中の最先端の研究機関、最新の製品開発の現場が抱えている課題や先進的テストのニーズが日々寄せられている。ここでは、同社が注目する、2018年に顕在化するテストにまつわる技術トレンドの一部を紹介する。

 NIは、テストに関する最新の動きを洞察し、2018年に注目すべき動きをまとめた「Automated Test Outlook 2018(自動テストの展望)」を発表した。研究開発でインパクトのある成果を挙げるため、さらには効果的で効率的な製品の開発や生産を行うため、テストのスマート化は欠かせない要素になっている。ここでは、Automated Test Outlook 2018の中で挙げられた6つのトピックスの中から、3つを選んで話題を紹介する。

テストシステムのセキュリティー確保
発生確率の高い脅威から段階的に対策

 研究開発や生産の現場では、テストシステムをネットワークにつないで活用するのが当たり前になった。条件設定や結果の管理を効率化し、取得したデータを蓄積して共有・活用するため、テストシステムとITシステムの連携が欠かせなくなっている。

早田 直樹氏
日本ナショナルインスツルメンツ
テクニカルマーケティング
エンジニア テスト&RF担当

 その一方で、ネットへの接続は、テストシステムに新たな課題を生み出した。セキュリティーの確保である。テストシステムは、日々の研究開発や生産活動に欠かせないツールであり、しかも機密情報を扱うことが多い。悪意あるハッカーにとって、絶好の標的であると言える。そのセキュリティーが侵害されると、テストシステムを使うユーザーにも、それを提供するサプライヤーにも、組織や企業の信用失墜や、収益の損失が及ぶ可能性が出てくる。

 もはやテストシステムのセキュリティー対策は喫急の課題だ。ただし、その実践は、それほど簡単なことではない。NIは、「最も発生確率の高い脅威を優先し、段階的に対処していくことが効果的です」(日本ナショナルインスツルメンツ テクニカルマーケティング エンジニア テスト&RF担当の早田直樹氏)とし、テストシステムを保護するための3つのフェーズからなる手順を提示(図1)。セキュリティー確保への筋道を指し示した。

図1 テストシステムのセキュリティー確保での3段階の取り組み
[画像のクリックで拡大表示]

ITシステムで一般に行われている対策を
テストシステムにも適用

 第1フェーズは、ITシステム向けの最善のセキュリティー対策を、テストシステムにも慎重に適用することだ。ここで重要なことは、最新のセキュリティー対策手法をやみくもに適用するのではなく、漏えいや侵害の最新トレンドを注視しながら、自社のテストシステムの状態や利用状況に応じて、適用すべき対策手法を慎重に選定するという点である。

 2016年、ある企業で3カ月間に製造システムが繰り返し使用不能状態に陥った。思い当たる理由が何もないにも関わらず、生産設備を制御するプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)が何度も停止してしまったのだ。原因を調査した結果、セキュリティー対策の一環として、IT部門がスキャン処理の範囲をテストシステム中の装置にまで拡大したことが原因であると判明した。ITシステム向けセキュリティー対策のスキャン処理によるネットワークトラフィックの増大に、PLCの能力が追いつかなかったのだ。よかれと思って実施した対策が、テストシステム特有の仕様を把握していなかったばかりに裏目に出て、数百万米ドルに及ぶ経済的な損失が発生させてしまったのである。

 テストシステムのセキュリティー確保は、新しい課題である。ほとんどのテストシステムは、ファイル検疫機能や大容量のネットワークトラフィックに対応できるようには設計されていない。セキリティー対策の適用に際しては、その効果だけではなく、副作用にも目配せする必要がある。

 さらに、一般的なIT向けセキュリティー対策技術では対処しきれないテストシステム固有の脅威もある。そうした脅威には、テストシステム向けに用意したセキュリティー対策を補完しなければならない。例えば、テストの質を左右するテストシーケンスや計測校正データ。これらをサイバー攻撃の脅威から守る際は、整合性監視(改ざん検知)技術の適用が有効になる。IT部門は、必ずしもテストシステム固有の事情に通じているわけではない。システムを利用する部門がセキュリティー対策の戦略策定と実践をリードすることが重要になる。

取引先も含めたサプライチェーン全体での対策

 第2フェーズでは、サプライチェーン全体でのセキュリティー確保を目指す。テストシステムの質は、システムを構成する機材や部品、ソフトウエアなどの質に大きく左右される。これらシステムの構成要素の中に、セキュリティー上の脆弱性が含まれていたり、マルウエアに感染したものがあれば、システム全体がサイバー攻撃の脅威にさらされる。システムの構成要素を複数のサプライヤーから調達する場合、それぞれのサプライヤーが適切なセキュリティー対策を施していることを、継続的に管理する必要がある。

 2014年、Energetic Bearというロシアのハッカー集団が、ソフトベンダー3社に対して攻撃を仕掛けた。3社がウェブサイトを通じて提供していた産業用制御システム向けソフトの中に、トロイの木馬型ウイルスを組み入れたのだ。これら3社とその顧客が被った損害の詳細は明らかにされていない。サプライヤーのセキュリティー対策に関心を持つことの重要性を知らしめた事例である。

  取引先のセキュリティー対策を知ることは、自社のビジネスを守る上で欠かせない。そして、対策が不十分な場合には、サプライヤーとの話し合いや対策の強化要請も必要になる。こうした取り組みは、IT部門だけにまかせることはできない。システムを構築するテスト部門、さらには調達部門なども交えて、組織横断的なタスクフォースを作って取り組む必要があろう。

クリティカルな機能では、アクセス権を分散

 第3フェーズで、内部不正に対する対策を講じる。内部関係者が関与するサイバーセキュリティー事件はそれほど多くはない。Verizon社が発表した「2016年データ漏洩/侵害調査報告書」によると、2015年に報告された6万4000件を超える事件のうち、内部関係者の関与があったものはわずか172件にすぎなかった。ただし、内部不正が明らかになれば、報道機関が広く報じる傾向がある。このため、直接的な被害以外の副次的な波及効果が大きい。

 1996年、OMEGA Engineering社で、システム上の製造用ソフトがすべて削除されてしまう事件が発生した。製造部門のシステム管理者を解任された人物が、腹いせに仕掛けた1996年に時限爆弾型のソフトが発動したものだった。これによって、OMEGA Engineering社は、数百万米ドルの経済的な損失を被った上に、80人の人員整理を強いられ、倒産寸前にまで追い込まれた。

 内部不正を防止するためには、テスト機能においてクリティカルな部分のアクセス権を複数に分散し、一個人だけでは侵害できないようにしておくことが極めて重要になる。同時に、従業員の異動・退職が生じた際には、速やかにアクセス権を取り消すことも忘れてはならない。

自動運転用センサーフュージョン
柔軟性の高いテストシステムが必須

 世界中の企業が、自動運転車の実現に向けてまい進している。自動運転車の実現には、数多くの新規技術を同時に実用化しなければならない。そうした実現の鍵を握る技術のひとつが、多様なセンサーから取得したデータを組み合わせて適切な判断を下すセンサーフュージョンである(図2)。

図2 自動運転車の実現の鍵を握るセンサーフュージョン技術
[画像のクリックで拡大表示]

 自動運転車の実現は、刻々と変化するクルマの走行環境を、システムが正確に把握できうる技術の確立が大前提だ。クルマが走行する環境は、晴天の見晴らしの良い舗装道路のようなところばかりではない。夜間、雨天、見通しの悪い市街地、舗装されていな山道など、いかなる場合でも周辺環境を正確に検知できなければならない。

 周辺環境の検知を、1種類のセンサーだけに頼ってしまうと、状況に応じて検知精度が大きく変動してしまう。安定した検知精度を得るには、得意分野の異なるセンサーを組み合わせて、互いに補完しながら多角的に状況を把握できるようにしておく必要が出てくる。このため、自動運転車では、GPS、カメラ、レーダー、LiDAR(レーザー光を使ったレーダー)、加速度センサー、ジャイロセンサー、車々間通信など多種多様なセンサーを併用し、それぞれから取得したデータを総合的に判断して走行環境の情報を把握する方法の採用が検討されている。これが、センサーフュージョンである。

 高度なセンサーフュージョンを自動運転車に適用する場合、その動作をテストするエンジニアは、2つの課題を克服する必要がある。ひとつは、センサー技術は急激に進化し続けており、テスト技術にもこれに追随した進化が求められること。もうひとつは、異なる種類のセンサーから取得したデータそれぞれの間で、同期を取ることが困難なことである。本格的な自動運転時代を前にして、こうした要件に合うテスト環境を整えておく必要がある。

センサーから取得したデータには時間の情報がない

 センサー技術は、常に進化を続けている。そして、これを組み込んだ自動運転車をテストするシステムに求められる技術要件もまた、時を追うごとに高度化している。

 例えば、天候に依存することなく障害物を検知できるレーダーでは、信号の周波数帯が24GHzから77〜82GHzへと移行していく。検出確度やレンジ、解像度を向上させ、さらにはアンテナの小型化、送信電力の高出力化を推し進めることが技術を移行させる狙いである。これをテストするシステムには、広い帯域幅に対応できるものが求められる。カメラもLiDAR、加速度センサーなどもそれぞれ性能が向上しており、テストシステムの高性能化を図る必要がある。さらに、センサー技術が進化してもテスト環境の開発資産を継承しながら対応するには、性能向上や機能の追加に柔軟に適応できるオープンなテストシステムを採用する必要も出てくる。

 また、センサーフュージョンでは、多様なセンサーから取得したデータそれぞれの変化を突き合わせながら走行環境を総合的に判断することになる。このため、各センサーから取得したデータが適切に同期されている必要がある。ただし、センサーから得られるデータにはタイムスタンプが付加されていないのが普通だ。このため、これまでは、テストシステム側でカメラのフレームレートといったセンサーの仕様を利用して、ソフトウエア処理によって同期のタイミングを推定していた。こうした方法では、十分な同期精度を確保できない。

 自動運転者の開発では、センサー間の同期だけではなく、車載コンピューター(ECU)の開発環境との同期も忘れることができない。ECUの開発では、路面状況や車両運動を模擬的に作り出すHIL(Hardware in the Loop)シミュレーターを活用する例が増えてきた。センサーフュージョンを投入した自動運転車の開発では、HILシミュレーションシステム上でリアルタイム実行される数学的モデルと各種センサーの計測との間でも、同期を取る必要がある。

 多種多様なセンサー間での同期、HILシミュレーションシステムとの同期を確立するためには、さまざまなセンサーを接続して、それらから取得したデータに共通のタイムスタンプを付加し、さらにはセンサーとテスト用のデータの同期を容易に確立できるテストシステムが求められる。最新技術を取り入れたテストシステムを使用できれば、安全でスマートな自動車を競合他社に先駆けて市場に届けることができるようになるだろう。

SiPのシステムレベルのテスト
業界標準プラットフォームの活用が効果的

 機器や電子システムの性能向上、小型化、低消費電力化、コスト削減に対する要求はとどまることがない。こうした要求に応えるため手段として、ひとつのパッケージの中に、多種多様な半導体チップや電子部品を集積したSiP(System in Package)の活用が広がりつつある(図3)。

図3 機器やシステムのさらなる進化に向けて活用が広がるSiP
[画像のクリックで拡大表示]

 半導体チップの中に機能を詰め込むワンチップ化は、性能向上などを実現するための効果的な手段だ。しかし、DRAMやフラッシュメモリー、アナログ回路、RF回路、MEMSセンサー、受動部品、アンテナなど製造工程が異なる部品をむやみにワンチップ化すると、思わぬコスト高を招いてしまう。ワンチップ化のメリットを維持しながら、製造工程が異なる部品を効果的に集積できる技術がSiPである。

 SiPは、ユーザーに提供する段階で、システムレベルの性能が保証され、かつプラグアンドプレイで利用できるものになる。スマートフォンやテレビなどの開発において、半導体メーカーが提供するリファレンスボードをベースにした製品開発の手法が広がっている。機器を開発するメーカーは、電子設計に費やす労力を軽減し、製品企画やデザインに注力できるからだ。SiPは同じ文脈の製品開発の流れの中で、製品のさらなる高性能化、小型化、低電力化、コスト削減を実現するものだ。機器メーカーはSiPの活用を望んでおり、その市場の成長は確実視されている。

SiP開発では、システムレベルのテストが重要に

 SiPに集積する個々の半導体チップには、通常、テストを実施してKGD(Known Good Die)の基準を満たしたものが使われる。ただし、SiPでは、複数の半導体チップを組み合わせ、さらには多種多様な能動部品や受動部品などを付加して構成する。このため、システムとしての性能もきっちりと確認して保証しておく必要がある。

 ここでは、アプリケーションに応じたシステムレベルのテストがより重要になる。アプリケーションの電気的形態、物理的形態、ソフトウエア形態を模擬的に再現して、テストを実施することになる。SiPで実現する機器の利用シナリオを100%網羅できることが理想だ。ただし、そうした要件を満たすテストソリューションを見つけることは困難である。その理由は4つが挙げられる。

 1つ目は、テストシステムのハンドラーが複雑化すること。システムレベルのテストを実施には、長い時間が掛かる可能性がある。その結果、ハンドラーには、より複雑な動作が求められる。テストのスループットを高めるためには、多数のテストサイト間で、非同期でロード/アンロードする必要があるからだ。

 2つ目は、特定用途向け機器インターフェースボードを用意する必要があること。アプリケーションごとの利用環境を模擬的に再現するためには、負荷ボードを特別に設計しなければならない。例えば、携帯電話端末用のSiPに対応する負荷ボードは、その端末のリファレンスデザインに似たものになる。

 3つ目は、ハイレベルの通信が求められること。システムレベルでのSiPのテストには、ICのテストと最終的な機器のテストの両方の要素が含まれる。通常、ICのテストは、テスト専用のデジタルパターンを用いてATE(自動試験装置)を使って実施する。これに対し、SiPのシステムテストでは、応用機器で扱う通信プロトコルがそのまま使われることがある。

 4つ目は、アナログ機能とRF機能が増加していること。SiPには、複数のセンサーや電源管理ブロックなどが収容される。それに加えWi-Fi、Bluetooth、GPS、NFC、2G/3G/4G などの携帯電話など、複数のワイヤレス規格に対応するものが少なくない。そのため、高性能のATEに匹敵するアナログ/RF入出力を備えたテストシステムが必要になる。

 こうした、SiPを対象としたシステムレベルのテストに伴う課題を効果的に解決するためには、基本性能が高く、なおかつ柔軟にテストシステムの構成を変更・追加できる、モジュール式の業界標準テストプラットフォームの活用が欠かせない(図4)。こうしたテストプラットフォームを用意しておけば、応用機器固有の追加の要件に即座に対応でき、技術投資が将来の進歩にもつながることが保証される。

図4 SiPの新たなテスト要件に備えるためのモジュール式テストプラットフォームの位置付け
[画像のクリックで拡大表示]
PDFダウンロード
  • 「テストの標準化」が競争力を高める!
    2018年版最新テストシステム事情に学ぶ

    5Gや自動車開発のみならずあらゆる製品の開発においてカギとなるのは、最大限に効率化されたテストシステムでありスマートなテスト戦略である。本資料は、毎年発行されている最新テスト動向を含む技術レポートであり、2018年最新版となる。

    企業は激化する市場における競争力強化と市場ニーズに応じた多品種小ロットの流れに対応しつつ、コスト削減・品質向上、上市までの時間短縮などあらゆる課題を解決する必要がある。2018年の最新版では、テストシステムをベースに注目されるセキュリティ分野から自動運転技術およびテストラボの最適化、パフォーマンスを求める組織作り、さらには規格策定と並行した製品開発におけるスムーズな上市をするヒントなど、それぞれの最適解を紹介する。製品開発にかかわるエンジニアの方にとっては必読の最新資料だ。

    ■テストシステムのセキュリティを確保する
    ■パフォーマンスの高いテストチームを構築する秘訣
    ■自動運転車用センサフュージョンのテスト
    ■テストラボの標準化
    ■ICパッケージング技術のイノベーションがテストに及ぼす影響
    ■規格が策定される前に効果的なテストを行うには

お問い合わせ
  • 日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
    日本ナショナルインスツルメンツ株式会社

    東京都港区芝大門1-9-9 野村不動産芝大門ビル8・9F

    TEL:0120-108492

    FAX:03-5472-2977

    URL:http://ni.com/