“明日”をつむぐテクノロジー special

独自テクノロジーでさらなる効率を追求 DCモータ制御に30年の実績。高効率や調整レスで進化を図り幅広い製品群でニーズに対応

※記事中の情報につきましては、すべて取材時点のものとなります。
白物家電、複合機やプリンタなどのOA機器、オートフォーカスを備えたデジタルカメラ、各種産業機器、さらにはドローンなど、さまざまな製品や機器に搭載されている小型DCモータは電気エネルギーを機械エネルギーに変換する重要な役割を担う。モータ駆動ニーズの多様化に応え、東芝デバイス&ストレージ株式会社はエネルギー効率に優れたモータドライバを、他社の追随を許さない独自のテクノロジーと幅広いラインアップで提供する。
武本 昭彦 氏 東芝デバイス&ストレージ株式会社 ミックスドシグナルIC事業部 ミックスドシグナルIC応用技術部 ミックスドシグナルIC応用技術第一担当 担当課長

白物家電や産業機器や、OA機器に必ずといっていいほど組み込まれている部品の1つがDCモータだ。送風や冷却、機構の駆動や位置合わせなど、電気エネルギーを機械エネルギーに変換してくれるモータの役割は幅広い。

比較的小型のDCモータの世界市場規模は、車載用の小型モータおよびスマートフォンのバイブ機能に用いられている振動モータを除くと、2014年時点で年間およそ55億個ともいわれており、今後も堅調な伸びが見込まれている。

DCモータは、最も単純なブラシ付きタイプであれば直流電圧を印加するだけで回転させることができるが、正確でムラのない回転をエネルギー効率良く制御するには専用の駆動デバイスが必要になる。

そうした小型DCモータ用の駆動ソリューションを30年以上にわたって提供してきたのが東芝だ。「当社独自のテクノロジーを核に、パワーデバイスも内蔵しダイレクトにモータに接続できるドライバタイプ、外付けパワーデバイスを必要とするプリドライバタイプ、および制御機能のみを統合したコントローラータイプの大きく3種類を、さまざまな定格やパッケージで幅広くラインアップしてきました」と、東芝でモータ制御ソリューションを担当する武本昭彦氏は述べる(図1)。

「高効率」を大きなテーマとしながら、高性能化やBOM低減化を実現するとともに、調整レスあるいは自己検出といった最新のテクノロジーを搭載しているのが特徴で、DCモータユニットやDCモータを組み込んだ最終製品の価値向上を提案する。

顧客の多様なニーズにピンポイントで応えられるようにと、2017年9月現在で、ステッピングモータドライバ87製品、ブラシ付きDCモータドライバ36製品、およびブラシレスDCモータドライバ/コントローラ35製品を展開。さらに年間15品種ほどのペースで、機能、定格、パッケージなどのバリエーションを拡大中である。

図1 東芝のモータドライバの特長
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三相ブラシレスDCモータの効率を高める「InPAC」

東芝が開発した独自のテクノロジーをいくつか紹介しよう。

三相ブラシレスDCモータのさらなる高効率化を実現するのが「InPAC(Intelligent Phase Control)」である(図2、図3)。「三相ブラシレスDCモータでは、通電してから磁力が発生するまでに原理的にタイムラグ(遅れ)が生じます。タイムラグを補正する技術を『進角制御』と呼びますが、『InPAC』は回転数によらず進角を自動的に制御する最新のテクノロジーです」と武本氏は説明する。

回転数が一定であれば固定進角でもよいが、回転数が変わる場合は回転数または電流に応じて調整量を切り替えねばならない。従来は各ポイントごとに最適な設定になるような外付け部品を必要としていた。また、実機において進角を調整して効率の合わせ込みを行わねばならなかった。

InPACはホールセンサーによる回転子の位置情報に加えて、電流位相を検出することで、駆動電流の最適な位相を制御する。「当社のベンチマークによれば、3,750rpmにておよそ10%の電源電流削減に成功しています」(武本氏)。すなわち、外付けマイコンを用いた高度なベクトル制御に匹敵するエネルギー効率を、アナログ的なアプローチのみで実現できることを意味する。2017年9月時点でブラシレスモータドライバIC「TC78B016FTG」に搭載済みだ。

図2 三相ブラシレスDCモータの効率を高める「InPAC」の概要
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再生時、音声が流れます。音量にご注意ください。
図3 「TECHNO-FRONTIER 2017」(主催:一般社団法人日本能率協会)における
        「InPAC」のデモの様子

ステッピングモータの不要電流を省く「AGC」

もう1つのユニークな技術がステッピングモータの高効率駆動を実現する「AGC(Active Gain Control)」である(図4、図5)。ステッピングモータの制御では、最大負荷でも脱調が起こらないように多めの電流を与えてトルクに余裕を持たせるのが一般的だが、言い換えれば最大負荷ではない動作条件ではそれらのマージンは熱として捨てていることになり、エネルギー効率としては適切ではない。

AGCは、モータの動きから負荷を自己検出して、負荷が軽いと判断された場合は駆動電流を自動的に落として、エネルギーのムダを省くテクノロジーである。トルクを外部で検出したり、駆動電流を調整する信号を与える必要がないのが特徴だ。負荷が重くなった場合は、トルクを稼ぐために必要な分だけ駆動電流を増加させて脱調を防ぐ。

動作条件にもよるが、駆動電流の最大30%削減や、モータドライバICの発熱の30℃抑制などの効果が得られているという。

AGC機能は3A定格のステッピングモータドライバ「TB67S289FTG」、2A定格の「TB67S279FTG」に搭載されすでに出荷中。フラットパッケージ品でありながら4.5A定格と大電流駆動に対応した「TB67S249FTG」も9月より出荷予定だ。

このほか、ステッピングモータの駆動に関しては、電流センス抵抗を不要としプリント基板の小型化を実現する「ACDS(Advanced Current Detect System)」と、電流を階段状に正しく制御して追従性を高める「ADMD(Advanced Dynamic Mixed Decay)」をそれぞれ実用化済みである。

図4 ステッピングモータの不要な駆動電流を削減して効率を向上させる「AGC」
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再生時、音声が流れます。音量にご注意ください。
図5 「TECHNO-FRONTIER 2017」における「AGC」のデモの様子

アナログとデジタルの両方に強み

モータ駆動回路の開発環境としては、ステッピングモータ向け、ブラシ付きDCモータ向け、およびブラシレスDCモータ向けに、それぞれ設計リソースを提供する。例えばリファレンス回路については、株式会社図研が運営する回路モジュールダウンロードサイト「ModuleStation」※1で提供中だ。また、一部のドライバは、東芝のサイトにてPSpiceモデルを提供中である※2。評価基板は29製品を用意しており、現在、マルツエレック株式会社のウェブで25製品を販売中。今後、取扱製品数を増やしていく計画だという。

東芝ではこうしたモータドライバをアナログソリューションと位置付ける一方で、ベクトル制御などを必要とする顧客には、最先端のベクトルエンジンを搭載したArm® Cortex®-M3ベースの「TX03」シリーズとArm Cortex-M4(FPU機能搭載)ベースの「TX04」シリーズ、および新TXZファミリーでは[TXZ4]シリーズをデジタルソリューションとして提案し、幅広いニーズに応えていく考えだ。※3

また、モータ制御分野の最先端の技術開発を進めている東芝 生産技術センター(横浜市磯子区)内の制御技術研究センターとも連携しながら、さらなる価値の向上を目指していく。

「アナログとデジタルの両方が強いのが東芝ならではの強みです。このうちアナログのソリューションはソフトウェアが不要であり、開発期間の短縮やソリューションサイズの小型化が図れるなどのメリットがあります。これからも引き続き、30年以上にわたる実績を背景に、高効率を主眼としたテクノロジーと豊富なラインアップで、お客様のニーズに応えていきます」と武本氏は展望する。

東芝デバイス&ストレージ株式会社はこれからも、小型DCモータの制御をトータルでサポートしていく。

  • ※1 https://www.modulestation.com/ (ModuleStationのユーザー登録が必要)
  • ※2 https://toshiba.semicon-storage.com/jp/product/linear/motordriver.html (ユーザー登録が必要)
  • ※3 http://special.nikkeibp.co.jp/atcl/TEC/16/tomorrowtech_txz/
  • ※ArmおよびCortexはArm Limited(またはその子会社)のEUまたはその他の国における登録商標です。
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