水の殺菌で注目を集める深紫外LED

市場拡大のカギを握る高出力化で業界をリード

スタンレー電気の高出力深紫外LEDが、衛生分野を中心に大きな注目を集めている。
水の殺菌用に最適な波長265nmで50mWと業界最高レベルの出力を達成。
水浄化装置など深紫外光を応用した機器の用途が広がる可能性が一段と高まったからだ。
同社は、長年手掛けてきた可視光LEDや赤外光LEDで培った材料やプロセスなどの技術を駆使して、さらに高出力化を追求。深紫外LEDの新市場開拓を加速する考えだ。

高出力化を阻む問題に2つの対策

深紫外LED特有の課題とは、その構造に起因する。一般に深紫外LEDは、光を取り出す側から、基板、n-AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)層、AlGaN活性層、p-AlGaN層が積層された構造になっている。さらにn-AlGaN層にはn型電極、p-AlGaN層にはコンタクト層と呼ばれるp-GaN(窒化ガリウム)層を介してp型電極が設けられている(図3)。

ここで、高出力化や高効率化を阻む主な要因の一つが、AlGaN層と基板の格子定数や熱膨張係数の違いによってAlGaN層で発生する転位(結晶欠陥の一種)である。この転位が増えるにつれて出力や発光効率が低下する。また、基板と空気の屈折率差が大きいことに起因して、基板界面で光が全反射し、AlGaN活性層で発生した光が外部に取り出せずに内部に留まってしまうことも出力や発光効率を下げる要因になる。また、コンタクト層のp-GaNが、波長が約360nm以下の光を吸収するため、外部に取り出せない光の多くはp-GaN層に奪われ、最終的に熱に変換される。

図3 深紫外LEDの構造

層構造の図解

低転位で高透過性のAlN基板

これらの問題の対策として同社が採用した2つの技術のうちの1つが、ハイドライド気相成長(HVPE)法で作製したAlN積層基板の採用である。昇華法で作製した低転位密度を備えたAlNシード基板上に、HVPE法によってAlN層を形成した積層構造の基板だ。従来の昇華法で作製したAlN基板に比べて波長300nm以下の透過率が格段に高い(図4)。つまり、265nmの光を取り出すには有利な特性を備える。しかも、AlGaN層で発生する転位の密度は格段に小さくなる。サファイア基板に比べると約1万分の1と劇的に転位密度が減る。「素子に流れる電流を増やしたときに生じる効率の低下、いわゆるドループも極めて小さい。これも高出力化を図るうえで有利です」(木下氏)。

図4 HVPE法で作製したAlN積層基板の透過率特性

層構造の図解

もう1つの対策技術が、AlN基板の表面全体に微小な突起(ナノフォトニック結晶)を設けて、基板と空気の界面で発生する反射(全反射)を抑制する技術だ(図5)。反射を抑えて基板から取り出す光量を増やすことで、出力を向上する。「基板の表面を荒らすことで、基板内部の反射を抑える技術は一般的ですが、当社の場合は突起の形状や密度を高精度で管理しています。これによって反射抑制の効果を高めました」(木下氏)。しかも、量産性を重視して、突起を形成するプロセスにはナノインプリントによるリソグラフィーを採用している。つまり、基板表面に型を押し付けることで、微小な突起を効率よく形成する生産性の高いプロセスだ。「開発の段階では、電子線を使って描画する手法を採用していましたが、生産性を重視してナノインプリントに切り替えました」(木下氏)。

図5 基板表面に微小な突起を形成して基板内部の反射を抑制

層構造の図解
電子顕微鏡画面

ナノインプリントリソグラフィーによって独自のナノフォトニック結晶を形成

スタンレー電気では、光の取り出し効率の向上や基板の特性改善など従来のアプローチを追究することで、さらに出力の向上を図る考えだ。高出力化によって応用が広がり、新たな市場をもたらす深紫外LED。また水処理分野に革新をもたらすことで地球環境の改善にも貢献する。深紫外LEDの開発を強力に推進するスタンレー電気の今後の取り組みは、ますます注目を集めるに違いない。

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