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世界の半導体トップ企業が今なぜ東北に?

電子産業、ひいては半導体産業が一層成長していくためには、時代を先取りした新たな革新的基軸技術を継続的に創出していくことが欠かせない。東北大学を母体とした国際的な産学連携拠点、国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES )は、半導体産業のトップ企業を世界中から集め、革新的基軸技術の確立と実用化に挑んでいる。CIESを率いるのは、3次元NANDフラッシュメモリー研究の先駆者として知られる遠藤哲郎氏。半導体産業における世界の技術開発体制の動きを熟知する同氏に、本技術領域の将来展望と、その中でのCIES独自の取り組みについて聞いた。

――次世代を担う半導体技術開発でのCIESのアプローチをお聞かせください。

東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)センター長 教授 遠藤哲郎(えんどうてつお)氏

遠藤:CIESでは、より多くのシーズを扱う技術開発のデパートではなく、新しい時代を切り開く可能性を秘めた先鋭的なシーズを扱う専門店を目指します。具体的には、大容量・高速・高信頼な不揮発性メモリーを実現できるスピントロニクスや、パワーデバイスの電力効率向上に寄与するGaN(窒化ガリウム)に関わる技術に注力します。そして、20%や30%程度ではなく、ケタ違いの性能向上が狙える革新的基軸技術の実用化に取り組みます。開発対象は絞り込みますが、材料・プロセス・デバイスなど川上技術から、ソフトウエア・機器・システムなど川下技術まで、産業化に必要な技術は網羅的に開発します。革新的基軸技術のバリューチェーン創出こそがCIESの狙いです。

――技術のバリューチェーンの一貫開発が、なぜ重要なのですか。

遠藤:現在の半導体産業は、微細加工技術の進歩だけでは、チップのさらなる性能向上、応用の拡大、市場の成長につながる明るい未来が描けなくなっています。革新的基軸技術を開発し、成長メカニズムを支える必要があります。ただし、半世紀にもわたって半導体の進化を支え続けてきた基軸技術に代わるものを目指すわけですから、たとえ革新的なデバイスやチップができたとしても、その潜在能力を引き出す川下技術がなければ、実用化できません。だから、バリューチェーン全体を研究開発の対象にする必要があるのです。

――バリューチェーンの創出には、応用技術の開発も扱う必要がありそうです。

遠藤:その通りです。そこに総合大学である東北大学を母体とするCIESの強みが生きます。コア技術を持たず、参加企業による技術の持ち寄りだけに頼るコンソーシアムは、参加企業のメリットは少ないと考えます。その点、東北大学には世界トップクラスの知の蓄積(科学)に加えて、国家プロジェクトを通じて生み出した数々のコア技術があります。しかも、材料から電子デバイス、ソフトウエア、アルゴリズムなど保有技術の分野は幅広く、世界で高い評価を受けたものばかりです。さらに、スピントロニクス集積回路対応としては世界唯一、大学が運営する世界のトップ企業と互換性のある300mmプロセス試作評価ラインを保有し、実際にチップを作ることができます。評価・分析装置、スーパーコンピューターなど研究開発のインフラも充実しています。

――トップ企業間の利害は、どのように調整するのでしょうか。

遠藤:イノベーション創出に不可欠なオープンな開発と、自社の利益を守るクローズな開発を、研究開発のフェーズ、各社の目的や事情に合わせて柔軟に使い分けられる仕組みを備えることが、とても重要です。CIESでは、参加企業との間で2段階の契約を結びます。ひとつはすべての参加企業が合意する基本的な協業のマナー、もうひとつは各社の事情を反映したCIESと参加企業のP2Pの契約です。前者でオープンな場を規定し、後者でクローズな開発に対応します。

――自社の未来を支えるビジネスを生み出す場には、欠かせない仕組みですね。

遠藤:CIESで生み出した成果物は、参加企業にフリーライセンス供与します。東北大学には、八木・宇田アンテナから、現在のHDDに採用されている岩崎俊一先生の垂直磁気記録など先駆的技術開発に成功してきた実績と経験があります。現在参加している企業は、世界の研究拠点をベンチマークした結果、CIESに参加していると理解しています。CIESは、現在も成長中です。共に半導体産業の未来を開く企業および研究者の参加がさらに増えることを期待しています。

第2黎明期を迎えた半導体産業の将来はオープンイノベーションの成否にかかっている