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日経テクノロジーonline SPECIAL

食品機械メーカーの開発設計を改革するCAD

設計者全員で Inventorを使用 流用設計で納期短縮を可能に

おにぎりを製造する不二精機の小型成形機。1時間に最大7000個製造する能力を持ち、コンビニエンスチェーンの食品工場などで利用されている。
おにぎりを製造する不二精機の小型成形機。1時間に最大7000個製造する能力を持ち、コンビニエンスチェーンの食品工場などで利用されている。
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 伊藤氏によると、55人の設計担当者全員がInvent or を日常使用し、部品レベルから基礎的な設計やモデリングを行っている。その設計資産は、データ管理ツール「Vault」で共有化され、履歴管理や過去の設計資産を元にした流用開発などが可能だ。

 食品機械は受注生産が基本的で、既存の機種をベースに流用設計が多い。既存機種の設計データの散在を防ぐVaultは、そうした食品機械開発の特性にも合致している。

 同社がInventorを初めて導入したのは2010年のこと。それ以前は別のツールを使っていたという。ハイエンドとミッドレンジ、2つのCADを担当者や業務によって使い分けていたが、設計者の異動などがあると融通が利かず、業務が平準化しにくいという問題があった。

 「ハイエンドのCADに片寄せすることも考えましたが、ミッドレンジのCADに慣れた設計者には使いづらく、片寄せにともなう移行は難しいと判断しました」と伊藤氏は振り返る。

 そこで全く別のCADに移行することにし、選んだのがInventor だった。設計者にとっては使いやすかったことに加えて、分散開発を支援する機能だったという。同じ設計図面を複数のエリアに分け、複数のスタッフが同時進行で設計を進められる機能で、納期短縮に効果をもたらしたという。

設計データの散在を防ぎ、 チーム全体で作業する環境を整える

 Inventorに加えてVaultは、煩雑になりがちなデータの履歴管理の改善を進めるきっかけとなったという。

 複数のスタッフが共同で設計を進める場合、それぞれが図面を編集することで図面が散在しがち。「そこで『設計情報はサーバーの中にある機種別フォルダに保存する』というルールを作ったのですが、時には設計者が『これは試作品だから』とローカルに保存してしまったりするうちに、どこにあるものが最新版か分からなくなってしまうことがありました」と伊藤氏は打ち明ける。

 Vaultでは設計者が図面をサーバー からチェックアウトすることで、その図面を編集できるようになる。編集を終えてチェックインで書き戻すまで、他の設計者は図面を編集できない。最新バージョンの図面がいくつもあるような事態を防げるわけだ。「データ管理を担当者任せにすると、その担当者が海外出張や休暇などで不在の際に仕事が滞り、手配が遅れるようなことにもなりかねません。Vault を使うことで他の設計者にもデータの状況が分かるようになり、チーム全体の対応力など開発業務全体の効率が上がりました」と伊藤氏は言う。

 またInventorで作ったデータを、設計業務以外でも有効活用できるようになったのは、製造業向けコレクション「Product Design Collection」の導入効果だ。例えば、Collectionに含まれるツールの一つ「Factory Design Utilities」を使うことで、Inventorで作ったCADデータ(モデル)を元に、実際の工場に機械を配置したイメージをユーザーに見てもらうことが可能になった。「受注の際、顧客からは工場の図面も一緒に渡されることがあります。その図面データに開発し た機械をはめこみ、指定された場所に正しく収まることを顧客に確認してもらっています」(伊藤氏)。

 その他にビジュアライゼーション機能を活用し、開発中の機械の画像をプレゼンや販促の資料などでも利用するようにしている。資料上で機械を現物に近い色や形で表現できるのは、具体化するうえで効果が大きい。

 同社はオートデスクの認定販売代理店である大塚商会の協力も得ながら、Product Design Collectionの各種ツールを活用し、設計作業だけでなく設計フロー全体の改善を進めた。「スタッフの研修などでも大塚商会の支援が役に立ちました」と伊藤氏は評価している。

繁忙期に絞ってライセンスの 追加購入が可能に

不二精機は55人の設計担当者全員が Inventorを標準の設計ツールとして使用。

 2017年、不二精機ではProduct Design Collectionの導入を「サブスクリプション方式」に切り替えた。大きな狙いの一つは、バージョン統一だ。同社の開発設計部門は毎年3~4人のペースで人員が増えており、増えるたびにライセンスを買い増している。その結果「社内には複数のバージョンが混在することになり、共有のためにデータをダウンコンバートする必要がありました」(伊藤氏)。サブスクリプションでは、それぞれのツールは常に最新バージョンに統一されるため、こうした手間を省けるだけでなく、ユーザー教育も一つのバージョンに共通化できるようになる。

 「通常期は十分な数のライセンスを用意していますが、展示会などの際はどうしても利用が集中し、ライセンスが足りなくなることがあります。そうした時に1カ月や3カ月などの単位でライセンスを利用できるのはありがたいですね」(伊藤氏)。

 また、サブスクリプションのメリットの一つである「海外への持ち出しが可能である」点も、高評価のポイントだ。海外での商談の際、顧客先での提案の場などに有効という。顧客のもとに出向いてプレゼンする際、普段は紙の資料を用意して、それを基に説明するが、顧客とのやり取りによっては紙による説明では足りず、CADのデータやビジュアライズした画像が必要になることがある。「特に安全にまつわる機構を顧客に理解していただくようなケースは、やはり3D CADのイメージを使うのが効果的です」(伊藤氏)。

 「“もっといいものを”と考えて、決して満足することはありません。常に新しい挑戦を続けています」と伊藤氏。また食品工場は少子高齢化の影響もあり、人手不足に悩まされる現場の一つとされる。そうした課題の解決に挑んでいるのが高速・高精度の同社の食品機械であり、それら機械を生み、経営者としての、また技術者としての挑戦を支援するツールの一つがオートデスクのソリューションなのである。

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