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日経テクノロジーonline SPECIAL

AI/IoT時代を支える基軸新デバイス

次世代電子産業を支える新たな基軸半導体技術を探求するグローバルコンソーシアム「東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES )」は、2017年3月21日と22日、「3rd CIES Technology Forum」を開催した。2日目の成果報告会でCIESは、半導体の電力効率と集積化を継続的に向上していくための要素技術群に見通しをつけ、今後はこれらのさらなる高度化に加えて、人工知能(AI )やIoTなどを支える具体的な応用分野へ拡充していくことを明らかにした。

 CIESの活動が始まってから3回目となる今回のForumには、「革新的集積エレクトロニクスシステムによる持続的発展への架け橋 ◆超低消費電力エッジコンピューティング ◆カーエレクトロニクス ◆脳型知能システム」という副題が付記された。CIESがForumに副題をつけたのは、今回が初めてである。

 「CIESの活動は新たなフェーズに入りました。このことを明確に打ち出すため、具体的な応用分野を副題につけたのです」と、CIES センター長を務める東北大学 教授の遠藤哲郎氏は話す。

新たなフェーズに入ったCIES

 CIESは、材料・プロセス・デバイスといった半導体バリューチェーンの川上技術の研究にとどまらず、ソフトウエア・機器・システムなど川下技術も含めて一気通貫で技術開発することで、効果的かつ効率的な社会実装を目指すことを理念として掲げている。今回披露された数々の報告は、その理念が、いよいよ具体的なかたちとなって動き始めたことを印象づけるものだった。

東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)
センター長(工学研究科・教授)
遠藤 哲郎(えんどう てつお)氏

 AIやIoTの活用による様々なイノベーションの創出に、世界中の期待が集まっている。しかし、それら高度な応用を生み出す源となる技術を顧みると、これまで半導体の継続的進化を保証してきた「Mooreの法則」と、コンピューターの万能性を裏付けていた「ノイマン型アーキテクチャー」という、現代の電子産業を支える2本柱の疲弊が目につくようになった。これらに代わる革新的技術を生み出さない限り、応用への期待が尻すぼみになりそうな状況だ。

 CIESでは、磁性材料を活用したスピントロニクスなど、新しい動作原理に基づく半導体デバイスとその応用技術を確立することでブレークスルーを開こうとしている。今回の報告会でCIESが披露した取り組みと研究成果の中から、新しいフェーズに入ったCIESの姿を端的に示す話題を3つ紹介する。

AI時代を支える脳型チップを創出

 まずは、スピントロニクスを活用して、電力効率を劇的に向上させたAIチップを開発する取り組みである。

 GPUやFPGAを使ってAIの学習とデータ処理を実行し、自動運転やIoTシステムを実現する動きが活発化している。しかし、市街地など状況が目まぐるしく変わる環境への対応が必須になる完全自動運転や、クラウド上の高性能サーバーに頼らずエッジ側で学習できるAIを実現するには、新しい動作原理に基づく、より電力効率の高いAIチップの登場が不可欠になる。

 CIESは、スピントロニクスを応用したメモリー素子である磁気トンネル接合(MTJ)素子を応用して、アプローチの異なる2種類のAIチップを開発した。

図1:高度な知能コンピューティングが求められている
[画像のクリックで拡大表示]

 1つは、脳内での認知過程を再現する脳型AIチップである。知覚したモノと記憶を照合する処理を、既存のノイマン型コンピューターで実行する。ただし、コンピューターを構成する記憶素子にMTJ素子を採用することで、広大なメモリー空間の中から、「0.05%の領域だけを起動させ、99.95%は待機状態にしておけます。これによって、GPUならば100W以上の電力を費やす画像認識処理を、たった600μWでできるようになります」と、遠藤氏は説明する。

 もう1つは、脳細胞の構造と仕組みをハードウエアで模倣した、非ノイマン型アーキテクチャーのAIチップである。記憶と判断を一体化させたニューラルネットワークを不揮発性のMTJ素子を用いた回路で実現する。既に、揮発性のCMOSを使うAIチップよりも3ケタ高い電力効率、2ケタ高い集積度を実現できることを試作チップで実証した。書き換え回数に制限がないため、膨大な回数の学習を繰り返す高精度なAIにも適用可能という。