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日経テクノロジーonline SPECIAL

査察に耐えうる情報公開システムをArasで

シスメックス株式会社
技術戦略本部 技術情報部 開発情報課長
生駒晴哉

臨床検査機器・試薬メーカーのシスメックスは、設計情報公開システムの基盤に「Aras Innovator」を使用している。臨床検査機器や試薬の設計情報を管理するPDM(product data management)は以前からあったものの、当局の規制要件に対応するため、専用のシステムが必要と判断。PDMから公開用の情報を抽出してから公開する専用システムをAras Innovatorで構築。生産やサービス、品質保証などの部門で利用可能にした。シスメックスの生駒晴哉氏が、導入事例を紹介した。

 医療機器や医薬品は、とにかく開発に求められる文書(記録)が多い--。家電メーカー出身の生駒氏は、医療機器メーカーの同社に移った際に最初にそう感じたという。「家電では図面に全てを込めると教えられたが、加えて臨床検査機器や試薬では実験結果など開発過程でエビデンスを残さないといけない」(生駒氏)からだ。しかも医薬品の世界では開発が10年単位で行われることも珍しくなく、担当者の異動に備える必要があるため、「経過を残すという文化がある」(生駒氏)という。

 その文化の背景にあるのが、国による査察への対応だ。例えば、米国当局による査察では、見つかった問題点を2週間以内に改善もしくは改善計画を提出することが求められ、遅れると企業名公開や制裁の対象になり得る。そのため査察に備えて、普段から情報公開の準備を整えておく必要があるという。

 同社では図面など設計情報の作成や変更などを管理するシステムとして、既にPDMを導入しており、成果物はそこから出力した紙に押印しファイルで残していた。しかし紙では、スピードが要求される査察に十分応えることができない。既存のPDMで査察に対応しようとすれば、査察官の要求に応じてその内部を公開することになり、開発中や開発を中止したものなど査察に関係のない情報にまで対応が求められる可能性がある。査察だけでなく、生産部門など社内他部門が設計情報を参照する際も、大量のデータによってシステムのレスポンスが悪くなってしまう。

 そこで同社は設計情報のPDMとは別に、その情報を公開するためのシステムを作ることにした。両者を全自動で連携させ、PDMの中から電子承認された「設計情報の“上澄み”の部分だけを公開する」(生駒氏)もの。その基盤として採用したのがAras Innovatorだ。

Arasに手を加えることなく実現

 システムを開発するにあたって課題となったことの一つは、Aras Innovatorが査察に耐えうる規制対応を実現できるかという点だったという。しかし、同社は「規制対応済みのソフトなどそもそもない。規制要件を正しく理解したうえで『当社は規制要件をこのように解釈した』と整理して要件化し、システムに盛り込んでいった」(生駒氏)という。定義した要件を確実に実現させるため、コンピュータ化システムバリデーション手順を作成し、システム開発やバリデーションなど個々の工程について計画立案や実行結果を記録に残した。その中ではサプライヤに対する監査も行い、「このサプライヤと取り引きしても大丈夫ということを確認する手順をとった」(生駒氏)。

 こうして完成したのが、設計情報公開システム「Panda」(Publishing and document archive system)だ。Panda利用者のうち約70%が日々の業務で利用しており、約90%のユーザーがPandaに満足しているという()。その満足度の高いPandaは、「Arasにほとんど手は加えることなく実現できた」と生駒氏は振り返る。現在は国内向けのシステムだが、今後は海外拠点にも展開していく方針だ。

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図 Aras Innovatorを基盤に構築した設計情報公開システム「Panda」満足度の調査結果
約90%のユーザーが満足している。事前の業務分析をユーザーと取り組めたことで、高い評価を得られた。