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日経テクノロジーonline SPECIAL

航空機設計資産を生かすPLMを構築

社河内美名 氏
川崎重工業株式会社
航空宇宙カンパニー 企画本部 情報システム部 ITシステム開発課 主事
社河内美名

「Boeing787」などの開発・製造にも携わる総合エンジニアリングメーカーである川崎重工業は、グループ全体で利用するPLMシステム基盤を構築した。航空機の開発では、多種多様で大量の情報を、長期にわたって管理する必要がある。航空機特有のCADデータ管理に対応したシステムを、「Aras Innovator」を用いていかに実現したのか。長年同システムに携わってきた社河内美名氏が解説した。

 航空機の設計には、「製品寿命が長い」「共同開発が多い」「部品点数が多い」「適用号機管理」「機種ごとに新規設計」「開発スパンが長い」といった6つの特徴がある。活用する設計環境には、こうした特徴に合わせたシステムが求められる。

航空機設計に適したPLMとは

 航空機の製品寿命は、30年~40年も続く。ところが、ITツールの寿命は短い。この点がシステム構築上の悩みの種だという。また、航空機は1つの会社で一機丸々開発することはまれで、多くの場合、複数社による共同開発になる。開発を取りまとめる会社によって、図面の書き方や出し方が異なるため、柔軟なシステムであることが欠かせない。

 さらに、航空機1機の部品は200万~300万点、自動車の約100倍にもなる。川崎重工業が開発している最も大きな機体では、CADデータのツリーが17階層、7万点弱のデータで構成される。そして、航空機の開発・製造では、航空機1機ずつに「号機」と呼ぶ製造番号を付与。部品番号と適用する号機で形態を管理できる設計環境が必要だ。

 そして、航空機では開発する機種ごとに仕様が異なり、開発期間も10年単位となる。部品の流用はほとんどなく毎回新規設計になるため、その都度PLMのカスタマイズが必要になる。加えて、航空機1機の開発が10年間近く続くということで、長期間の開発の中で属人性が強くなり、積み上げた知見をいかに次の世代に引き継ぐかが課題になる。 

既存資産を生かす環境を構築

 現時点では、川崎重工業ではAras Innovatorを設計のCADデータ管理システムとして利用している。今後は、E-BOM(Engineering Bill of Material)に基づくCAD-BOMの管理や、CATIA V4/V5データの混在管理、そして機械設計だけでなく、電装設計にも拡大したいと考えているという()。さらに、これまでは航空機の機種ごとに時代に合う設計ツールを使ってきたが、共通のプラットフォームの利用に移行していく予定である。

川崎重工業のCADデータ管理システムとその周辺システム
図 川崎重工業のCADデータ管理システムとその周辺システム

 ただし、現在は設計、製造、品質保証など多くのプロセスで、既存システムが動いているため、「ライフサイクル全体をAras Innovatorで賄うことは考えていません。業務の流れとその変化に沿って、Aras Innovatorと既存システムが柔軟につながることが重要と考えています」(社河内氏)という。

 同社でのPLMシステム基盤の構築は2012年からスタート。航空機設計の特徴に沿ったツール選定から始めた。講演では様々な要件から各社ツールを比較検討する経緯が語られ、汎用性、拡張性、コストなどの観点からAras Innovator導入が決められた。

 川崎重工業では、発行済みのCATIA V4対応図面を全てCATIA V5対応に移行せず、新たに作成する新図と改訂図をV5に移行する方針を決めていた。このため、V4図面とV5図面の両方を維持できる設計環境を構築する必要があった。ところが、Aras InnovatorはCADコネクターを内部に持っていない。川崎重工業は、V4とV5混在設計に対応するため、ArasのパートナーであるドイツのT-Systems社の「PDM Workbench」をCADコネクターとして採用することで課題を解決した。

 プロトタイプを構築し、既存資産を生かすための課題などを解決する上で「Aras社は、レスポンスが速く、当社の要求を次世代版に盛り込んだり、何度も当社の拠点がある岐阜に訪問していただいたりと、対応が誠実でした。Aras社はユーザーの声に耳を傾けるベンダーであり、今後も協業関係を続けていきたい」(社河内氏)とシステム成功へ大きな支援を受けたことを語った。