• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
日経テクノロジーonline SPECIAL

深層学習を現場で気軽に始めるツール

ディープラーニングをはじめとする人工知能(AI)技術の活用が活発化している。その応用は極めて多岐だが、現時点でAIシステムを開発する際の技術面や費用面、労力面でのハードルは決して低いとはいえない。AI活用の本格化には、システム開発のハードルをもっと引き下げるツールの登場が欠かせなかった。こうした時代の要請に応えるべく、MathWorksはアルゴリズム統合開発環境「MATLAB」を、驚くほど簡単にAIシステムの開発ができる環境へと進化させた。たった10行のコードを書くだけで利用できるようになるなど、触れてみる価値があるツールだ。

 ディープラーニングの応用範囲は極めて広い。金融や工業製品の生産、物流、小売業といったITシステムの活用に慣れた業種だけではなく、医療、建築・土木、農業などにも広がる。ディープラーニングの活用によって実現する業務の効率化と新しい価値の創出が、各企業の成長に大きな影響を及ぼすことは確実。このため、世界中のあらゆる業種の企業や団体・機関が、ディープラーニングを活用する動きを活発化させている。

土木へ、医療へ、拡大するディープラーニングの応用

 先進的なディープラーニングの活用事例を2つ紹介しよう(図1)。

図1 ディープラーニングの活用例
[画像のクリックで拡大表示]
図1 ディープラーニングの活用例
大林組の山岳トンネルの掘削面評価用画像認識システムの例(上)。立命館大学の超低線量CT画像を高画質化するシステムの例(下)。

 大林組は、山岳トンネルを掘る時の掘削面評価にディープラーニングを活用した。トンネルを安全に掘り進めるためには、掘削面の状況を定期的に確認し、崩れ易さや湧水量などを判断して、トンネル空洞を支持する仕組みなどを変えていく必要がある。従来こうした判断は、地質学の専門家や土木技術者が下していた。

 同社は、これらの評価結果を教師データとして学習し、掘削面画像を評価するディープラーニングを使い、効率的に判定する支援方法を開発した。専門家の評価結果を基準にした的中率は、風化変質の判断で87%、割目間隔で69%、割目状態で89%に達したという。これが実用段階に達すれば、現場技術者の負担が軽減して、効率的な工事が可能になる。同社では、このシステムを工事現場で試行し、的中率向上に向けた改良を継続していく予定だ。

 立命館大学は、被験者の放射線被曝を大幅に低減して撮影した低画質の医用CT画像を高画質化する用途に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を活用した。通常のCT撮影では、被験者にX線を繰り返し当てるため、単純な胸部X線写真の100~500倍もの放射線被曝をしてしまう。このため、放射線被曝を抑えた低線量のCT撮影が推奨されているが、明らかな画像劣化が生じる課題を抱えていた。同大学では、低線量からさらに線量を落として撮影した超低線量CT画像と、対応する通常線量CT画像の関係をCNNで学習し、超低線量CT画像を高画質化する技術を開発した。通常の1/20に放射線被曝を抑えつつ、通常線量CT画像と遜色ない画像を生成できるという。

たった10行のコードで画像認識、システム開発が劇的に簡単に

MathWorks Japan
アプリケーションエンジニアリング部
宅島章夫

 ディープラーニングを自社業務に活用しようというアイデアがあって、システム化しようとしても、新しい技術に敷居の高さと難しさを感じる人が多いのも確かだ。実現の手順とシステム化に要する労力や費用が見えず開発に踏み出せないと嘆く声も多い。

 だだし近年、ディープラーニングの活用を後押しする環境の整備が急速に進んできた。オープンな学習用データや学習済みニューラルネットワークモデルが、ネットから簡単に利用できるようになったこと。そして、GPUなどの高性能化が進み、AIシステムの構築に十分な計算能力も調達可能になったこと。これらにより、AIシステムの開発は、この上なく簡単でそれでいて、高性能なシステムが出来上がるようになった。

 ディープラーニングの活用をグッと身近にする極めつけのツールは、MathWorks社のアルゴリズム統合開発環境「MATLAB」である。MathWorks Japanの宅島章夫氏によると、「たった10行のコードを記述するだけで、ディープラーニングを活用した高認識率の画像認識システムを構築できます」( 解説サイト「ディープラーニング:10行のMATLABコードで転移学習」 )という(図2)。

図2 たった10行のコード記述でAIシステムを開発
[画像のクリックで拡大表示]
図2 たった10行のコード記述でAIシステムを開発
実際のコードを入力した画面(上)と、カメラ画像の中の果物の種類を自動判別している様子(下)

 例えば、オレンジ、みかん、レモン、グレープフルーツ(ホワイト)、グレープフルーツ(ルビー)といった果物の判別システムを作成してみる。たった各20枚の写真という学習データを使ってカスタマイズした画像認識システムを作り、90%以上の的中率で認識できている。これは前述の10行のコードだけでできるのだ。

 また別の例では、100枚の学習データで、100個のナットの中に紛れ込んでいる不良品(割れや傷)を4個も確実に発見した。もちろん画像以外にも、テキストや音声を対象にした高度な分類や回帰解析などにも活用可能だ( 解説サイト「ディープラーニング:製造現場で使える画像による異常検知 ~キズあり「ナット」の発見~」 )。

4段階で進むシステム開発、MATLABなら一貫して対応

 これらの開発を大まかな流れで見ていこう。AIシステムの開発では、大きく4つの作業を順に行うことになる。「(1)学習データの準備」「(2)ニューラルネットワークモデルの用意」「(3)学習」「(4)システムへの実装」である。MATLABならば、これら一連の作業を同じツール上で完結できる。先に挙げた大林組や立命館大学の事例も、MATLABでシステム開発したものだ。

 「学習データの準備」は、例えば画像にみかん、レモン、グレープフルーツといった模範解答をラベリングする作業だ。画像中の判断対象となる領域を切り出し、そこに模範解答を割り付ける。MATLABでは、これらの作業をマウス操作で直感的に進められて、非常に効率的に処理できる。静止画だけではなく、動画データにも簡単にラベリングをすることができる。動画データを対象にする場合には、1フレーム目で指定した認識対象を自動追跡して全フレームにラベリングする。(図3)

図3 動画データの認識対象を自動追跡して全フレームに自動ラベリング
[画像のクリックで拡大表示]
図3 動画データの認識対象を自動追跡して全フレームに自動ラベリング

 「ニューラルネットワークモデルの用意」は、独自モデルの開発、もしくは学習済みモデルを基にしたカスタマイズのこと。近年「Caffe」「AlexNet」「VGG-16」「GoogLeNet」といった高性能な学習済みモデルが公開されている。果物の種類を判別する画像認識システムでは、AlexNetを利用した。これらを利用することで、最小限の学習データだけで、高性能なAIシステムを簡単に構成できるようになる。MATLABには、必要なアプリケーションや利用したい学習済みモデルを簡単にダウンロードして自動的に組み込む「アドオン エクスプローラー」と呼ぶ機能も用意されているので初心者にも安心だ

 「学習」は、用意したモデルに模範解答付きデータを学習させる作業である。果物の種類を判別するシステムでは、各20枚の学習データで済んだが、より複雑なモデルの学習には、莫大な学習データと計算リソースが必要。いかに速く学習させて、実用的なAIシステムに育てるかが重要になる。MATLABでは、単一のGPU、マルチGPU、CPUの中から計算リソースを選択できる。そして、学習過程で性能を確認し、性能が不足していたらモデルのパラメーターを再調整して最適な効果を目指す試行錯誤が簡単にできる。

 「システムへの実装」は、開発したAIシステムのコードを、パソコンやサーバー、組み込み機器といった様々な機器上で動作する形式に整える作業である。MATLABでは、
 ●NVIDIA社のGPUへの実装に向けたCUDA形式、
 ●MATLAB環境のないところでも利用可能にするためのWindows・Macintosh・Linuxの実行形式、
 ●サーバーに実装してWeb上からAIシステムの機能を利用するための形式
――を出力できる。このようにMATLABは、ディープラーニングのシステムを気軽に始められて、大きく育てられるツールなのだ。

小さく始めてスケーラブルな開発ができる

 MATLABを使ってディープラーニング・システムを構成するには、MATLABとオプション製品という最小限の投資から始めることができる(2017年時点で約60万円)。この構成で、ディープラーニングのトライ、システム構築の基礎からスタートし、スキルや要求に応じて複雑で高度なシステム構築まで可能である。さらに、簡単に利用できるため、AIに関する専門的な知識や熟練したプログラミングのスキルが不要な点も見逃せない。AIシステムを利用する現場の担当者が、自分でシステム開発できるからだ。

 MATLABは、ディープラーニングを活用したいと思い立ったら、「最初に触れるべきツール」といえるのではないだろうか。

<関連リンク>
●IoT最後の難関「アルゴリズム開発」、効率的に実現して製造業の自動化に貢献
●ディープラーニングソリューション

お問い合わせ
  • MathWorks Japan

    〒107-0052 東京都港区赤坂4-15-1 赤坂ガーデンシティ7階

    TEL:03-6367-6700

    URL:https://jp.mathworks.com/