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日経テクノロジーonline SPECIAL

素材の力を生かした価値ある電子部品で、世界のイノベーターを支援する新生トーキン

ノイズ対策部品など素材特性を生かした電子部品で業界をリードするトーキンは、2017 年4 月、NECグループを出て、米国の電子部品メーカーKEMET社の傘下に入った。同社の足元の業績は好調そのもの。資本の組み替えは、さらなる飛躍を見据えた体制変更の一環である。新生トーキン 代表取締役 執行役員社長の小山茂典氏に、KEMETグループ入りの狙いと今後の展望を聞いた。

―2017年4月に資本を組み替え、社名をトーキンに変えました。

小山:NECグループから米国の電子部品会社であるKEMETグループへと母体が変わったことは、長年暮らしていた大きな日本の実家を離れ、国際結婚したようなこと。私たちにとって、とても大きな変化です。ただし、これは電子部品メーカーとして自立し、グローバルなマーケットに打って出るために欠かせない体制変更だと考えています。

―2017年の事業状況は。

小山:トーキンでは、フェライトなど磁性材料を基にしたEMC(Electro-Magnetic Components)、タンタル材料などを基にしたキャパシター、そして圧電体や焦電体を基にしたセンサー・アクチュエーター、の3つの事業を営んでいます。2018 年3月期が約半分過ぎた時点で、私たちの主要顧客の好調さを受け、当社業績も順調に伸びています。上半期の売上高は前年同期比で20%成長、営業利益も伸長し、2 桁%の営業利益率を実現しました。

 特に、スマートフォンとゲーム機向けが大きく伸びています。さらに、近年、市場開拓に注力してきた産業機器、特に半導体製造装置向けが急成長しました。環境インフラ用や自動車用部品も堅調に伸びています。新体制への移行に際して、良いスタートが切れました。

素材革新は競争力の源泉

―新生トーキンでは、何を変え、何を継承していくのでしょうか。

小山:私が社長に就任した2012 年に、トーキンのあるべき姿を議論し、新たな社是を掲げました。「素材革新を基に人と地球の豊かな調和と発展に貢献するグローバル企業」がそれです。この中の「素材革新」の部分が継承すべきトーキンの強み、そして社是に明記した「グローバル企業」が目指す姿です。

―素材革新では、どのような強みを押し出すのでしょうか。

小山:他社がまねをしたくても、まねできない技術を強みにしていきます。

 例えば、スマートフォンを無線で充電するための給電機器の電源コードに当社のノイズ抑制シート「バスタレイド」が巻かれています。これがないと、発生するノイズの影響で給電できなかったり、充電中スマートフォンが正しく動作しない可能性があります。

 こうしたノイズ対策部品は高付加価値製品であり、当然多くの競合が出てきます。それでも、トーキンはノイズ抑制シートのシェア約4割を占めています。これは、部品の原料となる合金の溶解から、シート状の部品への加工まで、一貫生産しているからです。製品を構成する材料の組成は分析すれば分かりますが、素材の製造方法や加工法をブラックボックス化しているため、簡単にはまねできません。

―素材特性で機能や性能が決まる部品はまねしにくいわけですね。

小山:しかも、優れた特性を持つ素材の潜在能力を引き出せば、新しい価値を持った部品を作ることができます。

 例えば、デザイン性を重視した製品では、ノイズ対策のような機能向上に直結しない補助部品を筐体内に搭載する余裕がない傾向があります。先に紹介したバスタレイドのように、素材特性を生かした部品ならば、部品形状の自由度が高まり、デザイン性を損なうことなくノイズ対策できます。

 また、100層以上に薄膜を重ねて作るNAND型フラッシュメモリーの製造装置では、成膜時のガスの流量や速度を精密に制御する必要があります。ここでは、高品質な圧電素子で作ったアクチュエーターの強みが生きます。

 さらに、クルマの電動化にも、トーキンの素材技術が貢献します。バッテリーの電圧をモーター駆動する電圧に上げるインバーターには、リアクトルと呼ぶ磁性部品を使います。ここを小型・軽量化するためには、優れた特性の磁性材料が欠かせません。自動運転車やコネクテッドカーにも、新たなノイズ対策ソリューションが求められます。

[画像のクリックで拡大表示]
図 トーキンの強み トーキンは、材料技術で支え、最先端製品に応用し、世界市場へ展開

未来のイノベーターを顧客に

―資本の母体がKEMETに変わったことで、事業のかたちは変わりますか。

小山:トーキンは、KEMETとの間で大きなシナジーを生み出せます。KEMETは欧米市場、トーキンはアジア、日本市場に地盤があります。また、応用市場でいえば、KEMETは産業機器向けや自動車向け、トーキンは民生機器向けの製品に強みがあります。

―市場と製品が補完的ですね。

小山:現時点のトーキンは、売り上げの5 割近くを海外で上げていますが、いまだに製品によっては日系のお客様が多くの割合を占めています。

 KEMETは、ネット経由での販売流通手法を効果的に活用し、広範な顧客を獲得することにたけています。ネット上で製品の仕様や価格、在庫などの情報、製品活用に必要なシミュレーションツールなどを公開し、極端に言えば、一度も会ったことのない企業も、どんどん顧客として取り込んでいきます。そして現在10万社以上の顧客ベースを持ち、一つひとつの商談は小さいのですが、売り上げや利益の過半をそうした方法で上げています。

―まさにロングテールの威力ですね。

小山:これまで、ロングテールの重要性を頭では分かっていても、そこを開拓する手段を持っていなかったのです。私たちが持っていないKEMETのこうした強みを活用していきます。

 特に、次世代を切り開くイノベーションを起こす、スタートアップの掘り起こしに期待しています。例えば、電気自動車大手のTesla社は、今は大メーカーで専門の営業部隊で当たらないと取引できません。しかし、同社も少し前まではネットで部品を買い集めていたスタートアップでした。時代を切り開くイノベーターは、ロングテールの中にいる可能性があります。グローバル企業として生きていくため、こうした未来の大木の芽をきっちりと取り込んでいきます。

―新生トーキンから目が離せません。

小山:2011年の東日本大震災では、当社も被災しました。その際、当社製品の供給が滞ることで、いかに大きな影響が世界中に及ぶのか、改めて実感しました。当社だけではなく東北には、社会の中で重要な役割を担う企業が多くあります。当社が率先して、この地で培った誇るべき技術の価値を、世界に知らしめていくことは、経営課題であると考えています。KEMETの力を活用して、トーキンの真価を世界に訴求していきます。KEMETの傘下に入り、価値あるトーキンの製品を世界に向けて訴求していくための入り口に立てたと思っています。

お問い合わせ
  • 株式会社トーキン
    株式会社トーキン

    〒989-0223 宮城県白石市旭町7-1-1

    TEL:0224-24-4111

    URL:https://www.tokin.com/