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未来を拓くイノベーション創出を目指しアナログ×AIで社会の難題解決に取り組む

今、かつてない勢いでAI(人工知能)が進化を遂げており、クルマ、産業機器、社会インフラ、消費者サービスなど、さまざまな分野への応用が始まっている。高性能アナログ半導体のリーディング・カンパニー アナログ・デバイセズを率いる馬渡修氏と、AIプロセッサーで目覚ましい躍進を遂げるエヌビディア 日本法人代表の大崎真孝氏が、アナログとAIによって描かれる未来や両社の取り組みを語った。

―まずはじめに、それぞれが注力している分野をお聞かせください。

馬渡:アナログ・デバイセズは、コンバーター、アンプ、MEMSセンサーや高周波通信ICのほか、2017年3月に統合を完了した旧リニアテクノロジーが強みとしていたパワーマネージメントICなど、幅広いアナログ半導体製品を展開しています。ワールドワイドのお客様は13万社にのぼり、製品は4万5000品種を数えます。

 注力分野は産業機器や通信機器、ヘルスケア機器にオートモーティブで、特に産業機器は売上高の半分以上を占めています。これらの分野に引き続き注力していくのはもちろんのこと、新たなアプリケーションとして自動運転、先進的なメディカル、そしてディープラーニングなどに期待しています。

大崎:NVIDIAは最近では「AIコンピューティング・カンパニー」として認知されるようになってきました。元々はパソコンのグラフィクスボードからスタートした会社で、今でも世界中のパソコン・ゲーマーの皆さんから圧倒的な支持をいただいています。一方で、3Dグラフィクス用に開発したGPU(Graphics Processing Unit)は並列処理が得意という性質があり、数値シミュレーションなど科学技術計算への応用が2006年ころから本格化しました。さらにその延長で、ディープラーニングにおけるニューラルネットワークの重み付け計算などの高速化にも活用されるようになった結果、現在ではAIのプラットフォームとしてデファクトスタンダード的な存在になっています。

 ゲームはもちろんとして、CAEや先進メディカルのようなプロフェッショナル・グラフィクス、科学技術計算、およびディープラーニングなどが当社の注力分野になります。

―製品は違うものの、注力分野は共通している部分も多いと感じます。両社が一緒に組んだとしたら、どのような強みが出せるでしょうか。

馬渡:例えば、ディープラーニングを考えた場合に、GPUのような頭脳に対して安定した電源を供給するさまざまなパワーマネージメント・ソリューションを私たちは持っています。ディープラーニングでの学習素材となるデータを集めるところでは、人間の五感に相当する高精度な各種センサーデバイスや、センサーの出力を正確なデジタル値として取り込む高性能なシグナルプロセッシング技術を持っています。

 アナログ・デバイセズはアナログ信号処理ソリューションの会社ですから、GPUのような製品は持っていませんが、AIプロセッサーの性能を最大限に引き出すテクノロジーやソリューションを提供することで、協力できると考えています。

大崎:同感です。ディープラーニングでは2つの領域での処理が必要になります。1つは、GPUのようなAIプロセッサーや、その上に構成されるニューラルネットワークやアルゴリズムなどのデジタルの世界。もう1つは、実世界の情報を取り込んで良質なデジタルデータに変換したり、安定した電源供給や消費電力を抑えるパワーマネージメントなどのアナログの世界です。アナログの技術があってこそ正確な処理ができるわけですから、アナログとデジタルが協業しなければならない部分は、これからも増えていくと思います。

次代を担う人材の育成に注力

―馬渡社長から「頭脳」や「五感」といった人体のアナロジーでの説明がありましたが、ディープラーニングの進化はどのような変化をもたらしていくのでしょうか。

大崎:ディープラーニングがもたらす破壊的な変革の1つが、エッジ側とクラウド側の両方のシステムが賢くなっていくことだと思います。それぞれにAIが搭載され、自律的に動く何億台ものエッジと、それらエッジから集めたデータをAIで処理するクラウドとがあり、さらにクラウド側で得た英知をエッジ側に分配することで、それぞれが賢くなっていく。いわば、一人の人間だけが賢くなるのではなく、多数のスーパーヒューマンが生まれてくるようなイメージです。これは、実は既に起こり始めていることです。

馬渡:アナログ・デバイセズの研究開発部門では、3年先、5年先、10年以上先といった将来を見据えた先行研究を行っています。2045年に起きると予想されているシンギュラリティー(AIが人間の知能を超える技術的特異点)を含め、社会の変革をどう捉えるかがとても重要なテーマになります。クルマは変革が最も大きい分野ですし、先進医療も同様です。データセンターやネットワークのあり方も変わっていくことでしょう。

 人間の脳は素晴らしい構造をしていて、スーパーコンピューターと同じだけの演算をするのに、パン1つ分のエネルギーで済むのです。しかし、大崎代表が言われるように、エッジ側もクラウド側もどんどん賢くなって、脳に匹敵するほど少ないエネルギーで動く世界に向かっていくと思います。

―そうした未来を考えると、パートナー作りや人材育成がとても重要になってきます。

馬渡:いわゆるエコシステムとして、サードパーティーに協力してもらう部分があります。また、世界的な課題としてアナログの技術者がかなり減少しています。アナログ技術はとても重要なのですが、どうしてもデジタルの方に注目が集まってしまいがちです。そこで、アンプやコンバーターや電源などの基礎を学んでいただく場として、アナログ技術セミナーを開催しています。弊社のエンジニアや大学の先生方、サードパーティーの技術者など、いわばアナログ技術のプロから、信号処理上の課題や解決方法を直接学べる場として好評を博し、毎年、1,000人規模の方にご参加いただいています。さらに、3000製品ものICモデルを搭載し、回路規模制限なしの回路シミュレーター「LTspice®」を無償で提供し、当社の製品だけではなくて他社の製品も含めて、アナログ回路を設計しやすい環境を提供するなどの取り組みに力を入れています。

大崎:NVIDIAは個性的な会社の1つですが、私たちはモノを売っているのではなく市場を創り上げているというビジョンを掲げています。その一環として、並列コンピューティング用のツールソフト「CUDA(クーダ)」を無償で提供したり、大学、研究機関、スタートアップ企業などをサポートしています。また、世界中のさまざまな大学でCUDAのコースを設定していて、そこで学んだ学生さんたちが並列処理のエキスパートとして世の中に出て、AIやディープラーニングを活用した新しいサービスや技術の開発に携わっていく。そういったサイクルの継続に努めています。