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現場重視のシステム構築と活用でIoT/AIの利用シーンが着実に拡大

2017年は、電気・電子業界だけではなく、あらゆる産業の企業が、IoTと人工知能(AI)を活用して創出するイノベーションについて考えた1年だった。そして、具体的な情報システムが、ビジネスや生活の現場の中に実装され始めた。IoTやAIに関連した技術は、着実にこなれてきている。2018年以降のさらなる応用拡大に向けて、素地は出来上がった。

 IoTやAIを駆使した情報システムの活用が、ビジネスや生活に新しい価値を生み出し始めている。

 産業用システムの分野では、具体的な設備投資を伴うシステム構築の動きが活発化。いよいよ構想段階からビジネス段階へと動き始めた。工場の設備や社会インフラの予知保全を中心とした応用に、IoTとAIを活用した情報システムの導入を検討する企業が相次いだ。ITベンダーなどが主催する関連セミナーは、おしなべて大入り満員の状態になっている。

 また、民生用システムの分野では、米Amazon社や米Google社などIT業界の巨人企業が、次々とスマートスピーカーを市場投入。人々が生活していく中で日々生まれ続ける情報を収集し、それを分析して、さまざまな高付加価値サービスの提供に活用しようとしている。

 加えて、2016年に市場拡大の起爆剤として期待されたスマートウオッチ「Apple Watch」が、不発に終わったかと思いきや息を吹き返し、米Fitbit社や中国Xaomi社のフィットネス用活動量計も着実に売り上げを伸ばしている。ウエアラブル端末は、確実に市民権を得てきた感がある。

技術がこなれ、
デバイスレベルから最適化

 IoTとAIは、2017年に入ってその活用に注目が集まったわけではない。IoTの威力は、航空機エンジンなどの保守で実績がある米General Electric(GE)社の「Predix」、建設機械などの保守で実績があるコマツの「KOMTRAX」による予知保全でよく知られていた。一方、AIの威力もクイズ王を破ったIBM社の「Watson」、囲碁のトッププロを破ったGoogle DeepMind社の「AlphaGo」を通じて、十分知られていた。

 IoTとAIにおける2018年最大の注目点は、こうした先進的技術の利用シーンをさらに拡大し、コモディティー化していくために欠かせない要素技術の開発が急加速することだ(図)。

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 一般に情報システムは、半導体・電子部品を組み合わせてサーバーやスマートフォンなど機器を作り、さらにそれら機器を組み合わせて、構成されている。これまでのIoTやAIに関連したシステムは、既存のデバイス、既存の機器を組み合わせて高度な情報システムを作っていた。IoTとAIの情報システムは、従来の情報システム向けに最適化されたデバイスと機器を活用して構成されていたため、“無理”と“無駄”がたくさん残ったままだった。この“無理”と“無駄”が、IoTとAIの利用シーンを限定してしまう要因になっていたのだ。

 これが2017年以降、IoT向けセンサーや、AI向けプロセッサーが次々と開発されるようになり、IoTやAIに活用するうえで合理的な特徴を備えた情報システムに変わりつつある。

 こうした動きが最も顕著に出ている分野がAI関連処理を実行するプロセッサーの分野である。これまでAI関連処理では、処理で多用する積和演算を高速実行できるGPU(Graphics Processing Unit)の活用が進んでいた。ただし、GPU自体は、3次元グラフィックス処理や科学計算などに最適化されたチップであるため、消費電力や性能から見れば、“better”な解ではあるが“best”な解ではなかった。そこで、Google社やIBM社は、AI処理に特化した構造のAIチップの独自開発に走った。現在では、ITベンダーや半導体メーカーの多くが、独自仕様のチップ開発を進めるようになった。

 機器レベルでも、IoTやAIへの応用を前提とした最適化が進んでいる。2018年は、エッジコンピューティング関連の機器が続々と市場投入されることだろう。これまでのIoTやAIに関連した情報システムは、高度な情報処理は、クラウド上のデータセンターなどで実行していた。ビッグデータ解析やAI関連処理には膨大な演算能力が求められるからである。

 ところが、IoTやAIの応用には、すべての情報をデータセンターに集めて処理することができない応用が多くある。工場のライン上を流れる製品の画像を解析し、製造装置の制御条件にフィードバックするといったことがその代表例だ。処理のリアルタイム性とデータの秘匿性が求められるため、遠方にあるデータセンターへのデータ転送ができない。このため、高度な処理を工場内で実行するエッジコンピューティングが必要になる。先に挙げた、AIチップは、エッジでの高精度で低消費電力な推論処理には欠かせない。こうしたクラウドからエッジへの処理の再配分の動きは、産業用だけではなく、医療用や金融機関、さらには民生用でも進むだろう。

現場ファーストこそが
IoTとAI成功の鍵

 2017年以降、IoTやAIを効果的に活用するための条件として、まず現場を熟知することの重要性を訴える企業が急増してきた。先に、IoTの威力を知らしめた企業として、GE社とコマツを挙げた。これらの企業の本業は、いずれもITベンダーではない。活用目的に応じたデータを、現場の状況に即した技術を使って取得し、分析結果を現場が求める形で生かす力がないと、IoTシステムの効果は得られないということにシステムのユーザー企業が気付き始めている。

 AIも同様である。現在のAIは特定用途向けの処理しかできない。AlphaGoがあれほど神懸かった強さを発揮できるのは、質の高い学習データがあるからだ。現場で、質の高いデータを集めることができなければ、AIは正しい学習ができない。実際2017年には、SNSで話し相手として公開していたAIが、ヘイトスピーチを学習してしまい、その運用を停止するという事件が起きた。

 IoTやAIの活用に関連した処理の強さを訴求するクラウドサービスがいくつか出てきている。そして同時に、IoTやAIを業務システムの中に組み込んで活用するには、エッジコンピューティングを実践できるオンプレミスのサーバーを置いた環境を整える必要があることもはっきりしてきた。IoTやAIを活用するユーザー企業は、ハイブリッド・クラウドやマルチクラウドを前提とした情報システム戦略を取ることになる。

 高品質なものづくりをする工場、正確無比な運用をしている交通インフラ、世界に先駆けて直面している高齢化社会など、日本にはIoTやAIを活用すべき現場がたくさんある。しかも、IoTやAIを最適化する際に欠かせない、現場を熟知した人材もたくさんいる。世界に誇る現場の知恵を情報システムとして形式知化することこそが、世界が求める日本の役割なのかもしれない。