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空前の好景気に沸く半導体・電子部品その栄華を継続するために必要なこととは

半導体や電子部品の業界は、紛うことなき好景気の中にある。応用製品は、産業機器も民生機器も、全方位で絶好調だ。2017年、半導体や電子部品は、作れば作るほど売れる状態が続き、生産能力の増強に追われることとなった。まさにうれしい悲鳴である。ただし、この好調さを継続的なものにするためには、新たな視点からの戦略と施策が求められている。

 電子機器市場は、分野を問わず堅調に伸びている(図)。スマートフォンの販売台数は、さすがに以前のような急成長はないものの、その市場規模は依然として堅調に拡大し続けている。また、任天堂の「Nintendo Switch」やソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation 4」の販売が好調で、部品を供給するメーカーに特需をもたらしている。そこでは、半導体だけではなく、センサーや触覚フィードバックを与えるアクチュエーターなど、IoT機器でも活用されるデバイスの需要が高まった。

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図 日本の自動車業界にとって、降ってわいたような自動化と電動化の動き(出典:写真は、Apple社、任天堂、SUBARU、Dell EMC社、東芝、ソニーセミコンダクタソリューションズ、アルプス電気)

 さらには、クルマの新車販売も堅調に推移しており、電子化も同時進行で進んでいるため、マイコンや各種メモリー、BluetoothやWi-Fiなどコネクティビティー系のチップの需要が増大している。加えて、IoTの領域でも、「Industry 4.0」に付随したファクトリー・オートメーション(FA)などへの設備投資増が、高性能・高精度の半導体消費を後押ししている。オールフラッシュ旋風が半導体に吹き荒れる

 2017年の半導体と電子部品の市場に最大のインパクトを与えたのが、データセンターなどに置くストレージ装置のオールフラッシュ化である。データの蓄積媒体を、従来のハードディスク装置からNAND型フラッシュメモリーで構成するSSD(Solid State Drive)に置き換える動きだ。巨大市場が突然立ち上がり、需要が供給をはるかに上回った。

 これまでSSDの活用は、ノート型パソコンなどでは一般的だった。これがデータセンターのサーバーなどにまで波及した理由は、NANDフラッシュの低価格化と大容量化が進み、高速・低消費電力・小型な特長が際立ってきたためである。これによって、ただでさえスマホの堅調な需要で不足傾向のNANDフラッシュの需要が急増。品不足の状態になり、出荷個数が増えただけではなく、価格も高水準で推移した。また、DRAMの生産ラインがNANDフラッシュの生産に回された例もあり、DRAMにも品不足と価格高騰が波及した。

 この傾向は、2018年以降も継続する可能性が高い。現在、中国の半導体メーカーが、NANDフラッシュの生産の参入・増強を計画している。こうした工場が立ち上がるまでは、需要先行の状態が続くとみられる。

ユーザーによる半導体開発
ASIC事業復活の兆し

 好調な応用市場からの要請に応えて、設備投資の積み増しや生産効率の改善などによって、生産能力の増強を図る半導体・電子部品メーカーが相次いでいる。ただしその一方で、単純な生産増だけでは、現在の好調さを継続的なものにできないことも分かってきた。新たな視点からの、開発・生産体制の確立が求められている。ここでは、2017年に顕在化してきた、2018年以降に何らかの対応が求められることがはっきりとしてきた新たな視点を、3つ紹介したい。

 1番目に注目したい視点は、機器メーカーやITベンダー、さらには自動車メーカーといった半導体ユーザー企業の中で、独自の半導体を開発する動きが広がっていることだ。

 特に顕著な動きが見えているのが人工知能(AI)関連処理を高速、低消費電力で実行するためのAIチップである。Google社やIBM社、日本では富士通やNECなど、AIで何らかのサービスを提供しようとしている巨大企業は、おしなべて開発に着手していると言える状態だ。機器メーカーは、汎用的なマイクロプロセッサーやGPU(Graphics Processing Unit)よりも、AI関連処理に適した半導体チップを設計するために、もはや半導体ビジネスとしては終わっていたかに見えていたASICを使っている。

 かつてASICは、さまざまな機器に搭載する多様なチップを最小限の開発・製造期間で実現する、半導体の多様化のための技術だった。数多くの日本の半導体メーカーもビジネスをしていたが、労多く稼ぎが少ないため、事業をやめたところが相次いだ。

 しかし、現在のASICは汎用プロセッサーに代わる高速化の手段として再注目されている。そして、10nmや7nmといった最先端のプロセスで製造するASICが盛んに開発されるようになった。顧客は巨大企業ばかりであり、社運を掛けて開発を進めていることから、投じる開発費も、想定される生産数量も大きい。今後は、自動車メーカーによる自動運転用のチップ、金融機関によるブロックチェーン向けのチップなども次々と開発される可能性が出てきている。実際、日本のネットベンチャー企業であるGMOインターネットは、仮想通貨の採掘事業に乗り出すために、最先端の7nmプロセスで生産する独自ASICを開発している。

他社の供給不足の影響が
自社の製品販売に及ぶ

 2番目に注目したい視点は、機器のサプライチェーンを半導体・電子部品メーカーも注視すべき状況になってきていることである。

 足元の消費者の需要は旺盛だ。しかし、求められる機器の生産が滞れば、市場に冷や水を浴びせる結果になる可能性がある。特に、機器メーカーや半導体・電子部品メーカーが警戒しているのが、サプライチェーンの停止である。機器には数多くの部品が搭載されており、中には特定メーカーでなければ作れない部品もある。そうした部品の供給が途絶えると、機器の生産が止まるだけではなく、同じ機器に搭載する他の部品の売り上げもなくなる。逆に余剰在庫を抱える可能性さえある。

 実際、スマホやゲーム機で、こうしたサプライチェーン上の問題から、需要に見合った供給がタイムリーにできなかった例が2017年にいくつか発生した。そして、代替部品がある場合には、シェアの勢力図が塗り変えられる事態に発展している。機器メーカーや機器を生産するEMSだけではなく、部品メーカーにも高度で視野の広いサプライチェーンが求められている。

日本が強いB2B領域に
部品供給を最適化

 3番目に注目したい視点は、日本で生産される付加価値の高いB2B機器の開発・生産を支援するための、新たな部品供給体制が求められていること。

 スマホやテレビ、パソコンなど民生機器の生産は、既に海外に移転し、国内には一部を除いて残っていない。そもそも、かつての民生機器メーカー自体が、民生機器ビジネスを縮小している傾向がある。ただし、このことが、日本のものづくりの空洞化を意味しているわけではない。FA機器や産業用ロボット、半導体製造装置、検査用医療機器などB2Bの領域の機器の開発・生産は、日本国内に依然として数多く存在しているからだ。しかも、こうした機器を扱っている企業の国際競争力は、おしなべて高い。

 ただし、これらの機器向けでは、民生機器に搭載する半導体・電子部品のような低価格の量産部品が大量消費されるわけではない。機器1台当たりの半導体搭載量は多く、高性能・高精度の付加価値の高い多様な部品を、少量ずつ消費する。こうした、日本固有の消費パターンに適した、供給体制の確立が求められている。