中小サービス企業に告ぐ!次世代経営者を優良企業で武者修行させよ。

2007年、安倍政権の経済成長戦略の一環として発足したサービス産業生産性協議会(SPRING)。これまで「サービス産業のイノベーションと生産性向上」を目指し活動してきたが、中でも、他社の優れた事例に学ぶことが重要と考え、優良なサービスを提供する日本企業約300社を選定し、「ハイ・サービス日本300選」として、表彰してきた。そして今回、中小サービス企業の方々に、これらの優良企業の神髄を学んでもらうため、経済産業省の補助事業として「大人の武者修行」を実施することになった。これは、優良企業に一定期間、次世代経営者を送り込み、武者修行を行っていただくというものだ。

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受入企業の良品計画 松井忠三会長からのメッセージ

「大人の武者修行」が中小企業を強くする

SPRINGでは、優れたサービスを提供する日本企業約300社を2007年から3年間にわたって選定し、「ハイ・サービス日本300選」として表彰してきた。今回は、SPRINGの副代表幹事で、300選のうちの1社でもある良品計画の松井忠三会長に、「大人の武者修行」の狙い、そして、武者修行者の受入企業として、送出企業の次世代経営者に期待することなどについて伺った。

優良企業のダイナミズムを
肌で感じてほしい

――まず、「大人の武者修行」を主催されるSPRINGの副代表幹事として、大人の武者修行の狙いを教えてください。

松井:日本におけるサービス産業は、今やGDPの7割にも達しています。サービス産業を担っているのは、98%が中小企業で、残りの2%が大企業です。2%の大企業は高い国際競争力を持っていますが、大半を占める中小企業の競争力はとても高いとは言えません。彼らの競争力を高めることで、日本全体のサービス産業の底上げを図り、国際競争力を高めようというのが狙いです。

これまでも、300選を受賞された経営者の方々には、講演などを行っていただいてきました。しかしながら、ただ講演を聞くだけでは、優良企業の神髄を、自社に根づかせることはできません。そこで、今回は、優良企業の神髄を自社に持ち帰り、定着させていただくべく、中小企業の次世代経営者の方々に、最長3カ月間、「大人の武者修行」という名の下、優良企業に研修に行っていただこうと考えたのです。

「大人の武者修行」の仕組み「大人の武者修行」では、優れた企業に一定期間勤務し、社会人インターンとして実地体験型研修を受ける中小サービス事業者に、補助が支払われます。

――中小企業の競争力が低い原因はどこにあると思われますか。

松井:米国や中国など海外のサービス産業の企業経営者は、「国内外にまずは1万店舗、展開しよう」といったように、初めから高い志と目標を持って事業を推進されています。ところが、日本の中小企業の経営者の多くは内向きで、あまり高い志や目標を抱いていないように感じています。少子高齢化が進む中、内向きのままでは、日本のサービス産業は衰退の一途をたどってしまいます。そんな中小企業の経営者層を喚起するには、先行する優良企業のダイナミズムを肌で感じていただくしかないと考えました。

創業者精神を持ち続けることが大事

――良品計画としては、送出企業の次世代経営者の方々に、「大人の武者修行」を通して、何を一番学んでほしいと思われていますか。

松井:当社には、約38億円の赤字から黒字へとV字回復したという苦しい経験があり、その中で多くのことを学び、社風や経営哲学、経営に関する様々な仕組みを確立してきました。そこには、苦難を乗り越えるためのヒントや、企業を継続させるための本質が隠れているはずです。是非、それを学んで帰ってほしいと思います。

その際、重要なことは、まず、当社で学んだ様々なことの中から、自社で実践することを決めて、自社の社風に合わせてアレンジすること。そして、PDCAサイクルを回しながら、全社を挙げて徹底的に取り組み、やり抜くことです。

――松井会長ご自身も、これまで多くの優良企業を見てこられたと思いますが、優良企業の共通点がありましたら、教えてください。

松井:規模に関係なく、業績を伸ばし続けている企業に共通するのは、経営者層が常に「創業者精神」を持ち続けていることです。創業者精神とは、下の表のように、「オーナーの目線」「現場への執着」「革新的」の3つの柱からなります。例えば、「オーナー目線」の中には、「行動への衝動」がありますが、私は「経営は実行である」と考えています。実行しない組織には、何の価値もありませんからね。また、「革新的」の中の「外部志向」は、外部に目を向け続けるということです。市場は常に変化しています。その変化に適応していくためには、自社の仕組みを絶えず改善していなければなりません。しかし、純粋培養の組織では、改善するための新たな知恵を出すことが難しい。このような状況を打破するには、外部に目を向け、他社に学ぶことが肝要です。自社の常識は他社の非常識です。そのことに気付き、革新的な知恵を得るためにも、「大人の武者修行」は大変意義深いプロジェクトだと考えています。また、ここで、若手社員ではなく、次世代経営者を送り込むべきなのは、あらかじめ自社のアイデンティティをしっかりと持っている必要があるからです。いくら素晴らしい仕組みであっても、自社の社風に合わせてアレンジすることができなければ、定着させることはできません。

――最後に、送出企業への応援メッセージをお願いします。

松井:大志を持って、日本を代表する企業になっていただきたいですね。そのためには、日本を勝ち抜ける革新的なビジネスモデルを構築していただきたい。それができれば、今後大きな経済成長が見込めるアジアを勝ち抜くことはたやすいでしょう。大いに期待しています。

松井会長が経営層に求める3つの柱

松井 忠三(まつい ただみつ)

株式会社良品計画会長

1949年、静岡県生まれ。西友ストアー(現・西友)を経て、92年良品計画へ。2001年社長に就任。赤字状態の組織を“風土”から改革し、07年には過去最高売上高(当時)となる1620億円を達成した。08年より現職に就き、組織の「仕組みづくり」を継続している。著書に、ベストセラーとなった『無印良品は、仕組みが9割』や、近著『無印良品の、人の育て方』がある。

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中小企業経営のご意見番 坂本光司教授からのメッセージ

優良企業の“本質”を学ぼう

これまで7000社を超える日本の中小企業を訪ね歩き、企業経営の神髄を研究してきた法政大学大学院政策創造研究科の坂本光司教授。日本企業が学ぶべき優良企業を紹介した著書「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズは65万部を超えるベストセラーになるなど、ビジネスパーソンから圧倒的な支持を集めている。その坂本教授に、送出企業の次世代経営者が、受入企業から何を学び、自社でどのように定着させていけばよいかについて伺った。

社員とその家族を幸せに
することが経営者の使命

――坂本教授はこれまで7000社を超える中小企業を見てこられました。これらの企業の共通点を教えてください。

坂本:私は、数多くの中小企業を訪ね歩く中、好況、不況に関係なく、常に高い利益率を出し続けている企業があることに気付きました。それは、経営者が「社員第一主義」を貫いている企業だったのです。サービス業の場合、直接お客様にサービスを提供するのは社員ですよね。そのため、社員が1人の人間として大切にされ、幸せに働いていなければ、お客様を幸せにするサービスを提供することなどできません。ですから、経営者が最も大切にしなればいけないのは、社員とその家族の幸せ、次に外注先、下請企業の社員の幸せなのです。お客様を大切にするのは当然のことですが、そのためにはまず、そこで働く社員が幸せであることが重要だということです。

社員を大切にしている会社かどうかは、離職率を見れば分かります。社員が会社を辞めるというのは、命がけの行為です。そこまでしても辞めたいというのは、経営者に対して社員が、「あなたと一緒に働いても幸せにはなれない」と言っているということ。経営者はそういった社員のメッセージを重く受け止めなければなりません。

――今回、「大人の武者修行」では、「ハイ・サービス日本300選」に選ばれた優良企業などに受入企業になっていただいています。送出企業には、これらの企業から何を学んでほしいと思われますか。

坂本:たんに「優良なサービスを提供しているから、そのサービスのノウハウや方法論を学ぶ」というのではなく、なぜその企業が優良なサービスを提供できているのかという本質の部分を学んでほしいと思います。優良なサービスは、優良企業の1つの“現象”に過ぎません。その現象を発生させている“本質”を見極めることが大切です。つまり、社員全員が幸せに働いている源泉はどこにあるのかを注意深く観察することです。また、修行に行く優良企業を選ぶ際は、規模の大小を考える必要はありません。企業は人なり。人とは経営者であり、企業の本質は経営者力にあるのです。ですから、むしろ小さな企業の方が、経営者により近づけるという点で、得るものは大きいのではないかと思います。

教育とは苔むすように時間をかけて定着させること

――坂本教授は、「優良なサービスとは、お客様を感動させるサービスだ」と言われています。感動サービスを生み出す社員を育成するには、具体的にはどうしたらよいのでしょう。

坂本:教育には2通りあります。“才”を高める教育と“徳”を高める教育です。才とは才能や知識のこと、一方、徳とは誠実さや優しさ、思いやりのことです。私はまず、感動サービスを継続的に提供し続けるためには、才ではなく、徳を高める教育をすることが重要だと考えています。最初に才を高める教育をしてしまうと、人は得た才を利己のために使おうとします。しかし、徳を高める教育をすると、利他の心が養われ、世のため、人のために汗水流して働こうと考えます。そして、その過程の中で、初めて才が必要になってきます。つまり、徳を高める教育をすれば、自ずと人は必要とする才を身につけようと努力するようになるのです。

では、徳を高める教育とはどのようなものか。それは、経営者の方々が社員に対して、背中と心で示すということです。それが最高の教育です。ですから、「大人の武者修行」では、修行に行かれる次世代経営者の方々には、受入企業の経営者層の方々が社員に対して、背中や心でどのように徳を示そうとしているかを見てきてほしいですね。

――武者修行終了後、次世代経営者は、受入企業で学んだことを自社にどのように定着させていけばよいでしょうか。

坂本:次世代経営者は社員に対して、受入企業で学んだことを実践するよう強要してはいけません。まずは自分が実践し、背中と心で示すことですよね。また、風土や経営哲学が全く異なる企業から学ぶわけですから、短期間で定着させようとすると、軋轢を生む原因になってしまいます。ですから、実践できることから着手し、無理をせず、ゆっくりと着実に導入していくように心がけてはどうでしょうか。

なぜ、導入しようとしているのかをきちんと社員に説明することも大切です。「自社の業績を高めるためではなく、社員とその家族を幸せにするために行っているのだ」ということを理解してもらうのです。教育とは本来、苔むすもの。短期間で大きな成果を上げようとすると、かえって弊害が出てしまいます。送出企業の方々には、受入企業で学んだことを、苔むすように時間をかけて、ゆっくりと醸成させていってほしいと思います。

坂本 光司(さかもと こうじ)

法政大学大学院政策創造研究科教授

法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長

1947年静岡県生まれ。2008年より法政大学大学院政策創造研究科教授。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBA)兼担教授。NPO法人オールしずおかベストコミュニティ理事長。他にも、国、県、市などの公職多数。専門は中小企業経営論、地域産業論。

サービス優良企業で「武者修行」しよう!

「大人の武者修行」は、中小サービス企業の次世代経営者層を対象に、これまでSPRINGが選定してきた優良企業「ハイ・サービス日本300選」や経済産業省「おもてなし経営企業選」選定企業等が受入企業となり、最長3カ月間、武者修行を行うものです(経済産業省の補助事業として実施)。まず、受入企業リストをWebで公開し、送出企業を募集します。次に、SPRING事務局が、送出企業と受入企業とのマッチングを行います。武者修行者は、事前研修を受けた後、いよいよ武者修行に赴くという流れになります。受入企業に支払う研修費、武者修行に出向く人材の交通費、宿泊費は1/3が送出企業の負担で、残りの2/3は国が補助します。研修費は、1人月額3万円を標準としています。

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※経済産業省補助事業 平成26年度「小規模事業者等人材・支援人材育成事業」(中小サービス業中核人材の育成支援事業)

お問い合わせ

サービス産業生産性協議会 「大人の武者修行」事務局
公益財団法人 日本生産性本部内

URL:http://shugyo.jp

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