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国民的な関心・協力が不可欠 将来世代に負担を先送りしないため 「地層処分」への理解をどう得るか

高レベル放射性廃棄物と地層処分

日本では原子力発電所で発生する使用済み燃料を再処理し、有用成分を回収して核燃料の原料にします。その際に発生する放射能の高い廃液はガラスに溶かし込みガラス固化体にします。これが高レベル放射性廃棄物です。現在、青森県六ケ所村の再処理工場などで約2200本が管理・貯蔵されていますが、発生済みの使用済み燃料の分も加えると、約2万5000本相当になります。

この放射能は高く、減衰して天然ウラン並みになるには長期間かかります。国際的にはこれを人の管理に委ねるのではなく、安定した地下深いところに人から隔離して処分(地層処分)するのが現世代の責任として適切とされています。日本でも、2000年にこの処分のあり方を定めた「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が成立しました。それに伴い、発生者たる発電事業者を中心に、処分事業の実施主体として原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立されました。

進まない処分地選定 国が前に出て取り組む

総合資源エネルギー調査会
放射性廃棄物ワーキンググループ
委員長
増田寛也
1995~2007年の12年間、岩手県知事を3期務め、環境政策を推進した。2007~08年に総務大臣。2009年から野村総研顧問、東京大学公共政策大学院客員教授。
社会学者
福島大学うつくしまふくしま
未来支援センター特任研究員
総合資源エネルギー調査会
原子力小委員会委員
開沼 博
現在、東京大学大学院博士課程在籍。専攻は社会学。『漂白される社会』『はじめての福島学』など著書多数。第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞を受賞。

松本真由美氏 高レベル放射性廃棄物の最終処分について、今回、国が基本方針を大きく見直すことにしました。なぜなのでしょうか。

増田寛也氏 一言で言えば、処分地選定がまったく進んでいないからです。これまでNUMOは、処分地選定の調査を行う自治体を全国で公募してきましたが、残念ながらいまだに応募を得られていません。

振り返れば、そもそもこの問題の所在を、政府も電力会社もNUMOも、国民に十分に伝えてこなかったのだと思います。私はかつて岩手県知事をしていましたが、誰からもこの話を聞いたことはありませんでした。そうした状況を解消するため、国自らが前に出て、国民や自治体に問題の所在と解決の必要性を説明し、理解を求める─。これが見直しのポイントです。

松本 国民の認識や関心が薄いというお話ですが、福島の事故を契機に原子力への関心はかつてなく高まっていると思います。地層処分についてはどうですか。

開沼博氏 現時点では無関心層が大半ではないでしょうか。一部は強く賛成、一部は強く反対、しかし多くの人は遠巻きに見ているだけ。こうした無関心層が、社会的なプロセスにどうやって入ってこられる状況をつくるのか。これを欠いたままでは前に進みません。他の原子力の課題に比べて、この問題の合意形成の道筋は存在するはずです。多くの人が廃棄物を放置し次世代に負担をかけることを非倫理的だと考えるでしょう。科学的なリスクに対するスタンスに差はあっても、地層処分が必要であることは合意し、手を携えて解決に向けて取り組んでいく。その可能性は十分にあると思います。

図1 高レベル放射性廃棄物の地層処分とは?
[画像のクリックで拡大表示]

安全面での納得も必要 地上保管は解決にならず

松本 地層処分の必要性については国民の合意も比較的取りやすいかもしれませんが、安全性についてはどうでしょうか。いわゆるNIMBY問題(※)は、安全性への心配が根底にあるのではないでしょうか。

近藤駿介氏 人は、地下に何かを埋めるということにある種の後ろめたさを感じるものですし、見えないものには心理的に不安がつきまとうことは事実です。諸外国では安全に処分できるとしても、地震国・火山国の日本では難しいのではないか、という不安があることも承知しています。

しかし、そうした自然現象を避けることは可能であるという研究の成果が積み上げられてきています。例えば、日本で火山ができる位置は数百万年程度、ほとんど変わっていません。活断層の活動も数十万年にわたり、同じ場所で起こっています。これらの地域を避けることで、安全に地層処分することは十分に可能です。そうしたことを、国民が納得できるような形で、しっかり説明していかなければならないと思います。

(※)NIMBY:Not In My Back Yardの頭文字。自宅の裏庭近くに建てられるのは困るという気持ちのこと。
図2 数百万年間、火山ができる位置はほとんど変わっていないため、詳細な調査によって火山を避けることが可能
日本列島における火山の分布「第2次取りまとめ、分冊1、図2.4-4a,bを編集」
[画像のクリックで拡大表示]

科学的な観点から適地を提示 地域に検討のきっかけを提供

東京大学教養学部客員准教授
NPO法人・国際環境経済研究所(IEEI)
理事
松本真由美
テレビ朝日報道局、NHK BS1「ワールドニュース」キャスターを経て、2009年~2012年に東京大学NEDO新環境エネルギー科学創成特別部門の人材育成プロジェクトに携わる。教育と研究を行う一方、講演、シンポジウム、MC、執筆など幅広く活動。
原子力発電環境整備機構(NUMO)
理事長
近藤駿介
専攻は原子力工学。東京大学大学院工学系研究科教授を務める。1999年~2003年同大学原子力研究総合センター長。2004~2014年の10年間内閣府原子力委員会委員長を3期務め、2014年から現職。

松本 これまでの処分地選定は公募制でしたが、今後はどうなるのでしょうか。

増田 日本の中で科学的に適性が高い地域はどこかを客観的に検討し、一定の範囲を「科学的有望地」として国から示していく方針です。例えば、火山に近いところは不適地だとか、そういう選別をする。それによって、適性が高いとされたエリアの自治体やその住民に、自らの問題として考えていただくきっかけを提供することを目指しています。現在、ワーキンググループで検討中ですので、有望地の姿が見えてくるまでには、もう少し時間がかかるでしょう。

なお、有望地になったからといって、調査が直ちに始まるわけではありません。まずはNUMOや国が住民にしっかり説明し、住民同士でも話し合ってもらう。そういうステップを経て、正式な調査に進むかどうか、地域主体で考えてもらうことになります。

近藤 類似の適地選定の取り組みは、諸外国で進められてきました。適地が示されれば、NUMOとしては、地域ごとの地質環境などを丁寧に説明し、処分事業との共生を一緒に考えていただけるように努力していきたいと思います。また、こうした取り組みを契機に、この事業の公共性、そして処分地を引き受けていただける地域への感謝と利益還元の必要性を、国として示していただくことを期待しています。

図3 新たな方針では処分地選定を円滑に進めるため、国が科学的有望地を提示する予定
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国民との信頼関係構築に向けて誰もが関心を持ちやすい雰囲気に

松本 カギとなる国民の理解と支持を、今後はどのように得ていくべきでしょうか。

開沼 ポイントは“統治者意識”と“当事者意識”を丁寧につないでいくことです。福島の震災後のがれき処理や低線量被ばくの問題でも、目の前にある課題を先送りせずに解決する場ではこの点が重要でした。科学的にこうあるべきだ、と上から伝えることに固執せず、当事者として不安を抱える方々の観点からものを考え、信頼を築きながら互いの課題解決になる結果を追求する姿勢が重要です。この問題へ関心を持つ際のハードルを下げていくことも課題です。「専門家がやたら難しい話をしている」「政治的な対立が怖くて触れづらいな」といった印象を持たれる状況があるならば改善し、誰もが関心を持ちやすい雰囲気を作っていくべきです。

増田 将来、徐々に地域を絞っていく中で、その地域に対する敬意や感謝が他の地域の方々から示される、そうした環境を作っていくことが必要になります。これまでワーキンググループの場だけでも、既に20回近く議論してきました。それでも議論は尽きませんが、今後は、こうした議論の内容を、できるだけ多くの国民と共有していくことがますます重要となるでしょう。

近藤 地層処分の取り組みは、国民の理解を得て社会全体として進めることが不可欠です。NUMOは、国と一緒になって、5月から、地層処分に関するシンポジウムを全国主要都市で開催する計画です。まずはこの問題の認知度を上げて、広く国民に関心を持っていただけるように努力したいと思います。

松本 考えるべきことは多いですが、まずは多くの国民に関心を持ってもらうことが大事ですね。本日はどうもありがとうございました。

最終処分について広く国民に考えていただくためのシンポジウムを開催します。ぜひご参加ください。
開催地 開催日
東京 5月23日(土)
高松 5月30日(土)
大阪 5月31日(日)
名古屋 6月7日(日)
広島 6月13日(土)
開催地 開催日
仙台 6月14日(日)
札幌 6月20日(土)
富山 6月27日(土)
福岡 6月28日(日)
※いずれも開催時間は13:30~16:30(終了時間が延長する場合があります)

応募方法はこちらから http://www.chisou-sympo.jp/

電話でのお問い合わせ先 原子力発電環境整備機構 地域交流部 03-6371-4003

お問い合わせ先
    原子力発電環境整備機構
  • NUMO(ニューモ:Nuclear Waste Management Organization of Japan)
  • 電話 03-6371-4003 FAX 03-6371-4101
  • ホームページ http://www.numo.or.jp