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日経テクノロジーonline SPECIAL

第1回 次世代開発基板のキーテクノロジ

高い市場競争力を備えた製品の開発に挑む多くの設計者が注目するザイリンクスの新世代プログラマブル・デバイス「7シリーズ」。同シリーズを構成する3つのファミリの製品が市場に出揃い、同社が推進する新しいシステム・プラットフォームを活用できる環境がいよいよ整ってきた。先進技術を取り込んだ新しい設計環境や、同社独自のコンセプトに基づく開発支援キットが揃う7シリーズは、付加価値の高い製品開発に取り組む設計者に効果的なソリューションをもたらす可能性を秘めている

図1 新しい概念、All Programmable FPGA 「7シリーズ」を構成する3つのファミリ
図中にある「All Programmable SoC Zynq シリーズ」はハードウエア CPU コアと 7シリーズと同じ 28nm プログラマブル ロジックをしたデバイス。
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図2 従来の PLD の概念を超える「All Programmable デバイス」を実現
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ザイリンクスが、最先端の 28nm プロセスを採用した FPGA「7シリーズ」の概要を発表したのは 2010年 6月のことだ。 7シリーズには、「Artix™-7」「Kintex™-7」「Virtex®-7」の大きく3つのファミリがある(図1)。Artix-7FPGA は、低価格と低電力を重視するアプリケーションをターゲットにしたファミリ。Kintex-7 FPGA は、価格、性能、電力バランスに優れたファミリである。ハイエンドなシステム性能と大容量を提供する Virtex-7 FPGA は、高性能を追求するシステム向けのファミリだ。

最新のプロセス技術を駆使して低電力と高性能を両立させただけでなく、独自開発の新技術を積極的に導入し、従来の FPGA とは異なる新しいコンセプトを打ち出したことから、7シリーズはエレクトロニクス業界で大きな注目を集めている。つまり、同社が「All Programmable FPGA」と呼ぶ7シリーズには、システム・プラットフォームの中心に位置することを意識した機能が随所に盛り込まれており、「グルーロジック」と呼ばれる周辺回路の構築に使われていたかつての FPGA の概念とは一線を画する特長を備える(図2)。

査 錚氏
ザイリンクス
マーケティング部
プロダクトマーケティング
スペシャリスト

例えば、同社が「アジャイル・ミックスド・シグナル (AMS) テクノロジ」と呼ぶアナログ・デジタル混載技術を駆使して、すべての品種に分解能 12ビットで変換速度が 1Mサンプル/秒の A-D 変換器を搭載。高速のトランシーバ回路も内蔵した。さらにハイエンドの Virtex-7ファミリでは、大規模なシステムを実装するユーザーに向けて 200万ロジックセルと業界随一の回路規模を誇る品種も用意した。Si インターポーザの上に複数の FPGAスライスを並べて一つのパッケージに実装する同社独自の新技術「スタックド・シリコン・インターコネクト(SSI)テクノロジ)」を使って実現したデバイスだ。こうしたデバイスを展開するに当たってザインリンクスでは、「All Programmable」という新たなカンパニー・ポジショニングを掲げ、新世代のプログラマブル・デバイスを軸にしたソリューションを展開する姿勢を明確に打ち出している。

製品開発に革新的な変化

図3 28nm プロセスを使った 7シリーズが設計者にもたらす利点
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新しいコンセプトに基づく 7シリーズは、製品開発に携わる技術者に多くの利点をもたらす(図3)。しかも、その利点は製品開発に革新的な変化をもたらす可能性を秘めている。例えば 7シリーズがもたらす大きな利点の一つは、多くの機能を統合した SoC を、ASIC や ASSP に比べて短い開発期間で実現できるうえに、開発コストも大幅に抑えられることだ。ソフトウエアで回路を柔軟に変更できるので、品種展開に合わせた設計変更にも迅速に対応できるという利点もある。つまり、このデバイスを活用することで、市場の動きに柔軟かつ迅速に対応できるシステム・プラットフォームを構築できる。

必要な機能に合わせてハードウエアを徹底的に最適化することでシステムのパフォーマンスを一段と高めることができるというのも大きな利点だ。また大規模な回路を一つのデバイスに統合することは、BOM (Bill of Materials)を抑えるうえでも有利である。プリント基板に実装するデバイスの数を減らせば、部品の実装面積を小さくしたり、デバイス間の配線を減らすことで多層基板の層数を削減できたりするなど、様々な合理化を進めることができる。また回路の統合は、消費電力の削減にもつながるはずだ。

新機軸の開発基盤がいよいよ実用に

立平靖氏
ザイリンクス
マーケティング本部
ビデオアーキテクト

こうした多くの利点をもたらす 7シリーズが実現する新機軸のシステム・プラットフォームを多くの設計者が活用できる環境が、ここにきて整ってきた。ハイエンドからローエンドまで幅広いニーズに対応できるデバイスが市場に出揃ったからだ。ザイリンクスは 7シリーズ製品の発表後、 2011年3月から3 つのファミリを構成する様々な品種のデバイスのサンプル出荷を順次始めた。

具体的には、 3月にKintex-7ファミリ。10月には Virtex-7ファミリでそれぞれ 1品種のサンプル出荷を開始。2012年に入り、Virtex-7 ファミリで4品種のサンプル出荷に加え、1 品種が量産出荷を開始。Kintex-7 ファミリで 2品種がサンプル出荷、3品種が量産出荷を開始した。さらに、7月から Artix-7ファミリの2品種のサンプル出荷が始まり、いよいよ7 シリーズ全ファミリのすべてのラインナップが市場に出揃った。

開発ツールを刷新、支援環境も強化

7シリーズに関して注目すべきはデバイスの特長だけではない。新世代の FPGA を効果的に使いこなすための設計環境が整っていることや、開発の効率化に貢献する同社独自のコンセプトに基づく開発支援環境が整っている点も見逃せない。 

設計環境については、7シリーズの製品化に合わせて新たな開発環境「Vivado Design Suite」をリリースした。大規模な回路を効率よく設計できるようにすることを前提に新たに開発した最新鋭の設計環境だ。「Design Edition」と「System Edition」の 2 種類が用意されており、このうち Design Edition は、配置配線ツールや論理合成ツール、論理シミュレータなどからなる RTL 設計向け。System Edition は、業界でいち早く最新の高位合成技術を取り入れた C 言語設計に対応する環境だ。

図4 開発の効率化を支援する「ターゲット・デザイン・プラットフォーム(TDP)」のコンセプト
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開発支援環境については、「ターゲット・デザイン・プラットフォーム(TDP)」と呼ぶ独自のコンセプトに基づく開発プラットフォームを提供する(図4)。具体的には、評価用ボード、開発ツール、各種 IP、リファレンス・デザイン、ケーブルや各種マニュアルなどを一つのパッケージにし、これをキットとして設計者に提供する。設計者は、これを利用して製品開発を効率よく進めることができる。技術ドメインや市場に合わせた様々なキットを複数揃えて、その中からユーザーが、必要に応じて選べるようになっているのが TDP の大きな特長だ。具体的には、大きく 3 つの階層のプラットフォームに分けてキットを展開する。

3 つの階層の一番下を支える「基本プラットフォーム」では、標準的な評価ボードと開発ツール、リファレンス・デザインなどで構成されたキットを用意する。デバイスの機能やパフォーマンスを評価するためのキットである。その上位に位置づけられている「ドメイン特化プラットフォーム」では、「組み込み(エンベデット)」「DSP」「コネクティビティ」の技術ドメインに合わせたキットを揃える。このキットには、各技術ドメインに合わせて機能を拡張した評価ボードや、ドメインに特化したリファレンス・デザイン、ソースコード、IP などが含まれる。

システムアーキテクトが市場のニーズを把握

図5 TDP のコンセプトに基づく開発キットの構成
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さらに上位の「市場特化プラットフォーム」では、映像機器や通信機器など特定のアプリケーションに特化したキットを提供する。このキットは、アプリケーションに合わせた専用ボードや専用ツール、評価済みのターゲット・リファレンス・デザインなどで構成されている(図5)。「このキットを利用することで、システムの基本的な設計にまつわる作業を大幅に効率化できます。これによって設計者の皆さんは、製品の差異化のための技術開発に専念できるわけです」(同社マーケティング本部プロダクトマーケティングスペシャリストの査錚氏)。同社は、こうしたユーザーの領域に踏み込んだキットを提供するために、「システムアーキテクト」と呼ばれているアプリケーションを熟知した技術者をマーケットセグメントごとに置いている。このシステムアーキテクトが、市場の動きや技術のトレンドをいち早く把握したうえで、それに対応したキットを企画する。こうして設計者のニーズに先回りする形で開発プラットフォームを提供することで、高い市場競争力を備えた製品の開発に取り組む設計者に有力なソリューションを提供する考えだ。

すでに 7シリーズについては、基本プラットフォームとして「Kintex-7 FPGA KC705 評価キット」、ドメイン特化プラットフォームとして高帯域、高性能なアプリケーション向けシステムの評価開発用「Kintex-7 FPGA コネクティビティ キット」や高性能組み込みシステム向けの「Kintex-7 FPGA エンベデッド キット」が揃っている。さらに次世代の画像フォーマット「4K2K」に対応した画像信号処理回路を設計するための「Kintex-7 FPGA ディスプレイキット」もある。画像フォーマットやフレームレートの変換機能、ズーミング機能、従来のHDTV画像を 4 つ貼り合わせて 4K2K フォーマットの画像データを作成するモザイク機能など高度な機能が数多く組み込まれている。「4K2K に対応した開発環境は、まだ十分に整っていないのが現状ですが、Kintex-7 FPGA ディスプレイキットを利用することで、 4K2K に対応したシステムの開発を競合他社に先駆けて進めることができるでしょう」(同社マーケティング本部ビデオアーキテクトの立平靖氏)。

従来の延長にはない新しい付加価値を生み出すことは、いま多くの設計者にとって重要な課題となっている。「7シリーズ FPGA」をはじめ、先進的な設計環境や斬新なコンセプトに基づくキット群がもたらす新機軸の開発プラットフォームは、こうした課題に挑む設計者に有力なソリューションをもたらす可能性を秘めている。新たな技術革新を模索する動きが活発化するエレクトロニクス業界において、注目すべき動きの一つと言えよう。

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