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日経テクノロジーonline SPECIAL

第4回 次世代開発基盤のキー・テクノロジ  飽くなき広帯域の要求に応えるプログラマブル・デバイス トランシーバの高効率設計に向けて支援環境強化

システムの中核を担うデバイスとして着々と用途が広がっているプログラマブル・デバイス。その多くの機能の中で、高速シリアル・トランシーバの重要性が高まっている。通信関連を中心としたあらゆるアプリケーションにおいて広帯域化の要求が急速に高まっているからだ。これを受けてザイリンクスは、FPGAの最新製品「7シリーズ」に優れたパフォーマンスを備えた高速シリアル・トランシーバを実装。さらに多くの設計者が、その性能を最大限に引き出せるように強力な設計支援環境を提供している。

査錚氏
ザイリンクス
マーケティング部 プロダクトマーケティング スペシャリスト

人々を取り巻くあらゆる機器がネットワークにつながる環境が世界全体で着々と現実のものになろうとしている。これとともに、こうした環境を支える様々な通信ネットワークでは、より広い帯域幅に対する要求が高まっている。ネットワーク上を流れるコンテンツが日に日に高度化しているからだ。特に最近になって、こうしたトレンドに一段と拍車がかかっている。スマートフォンなど多機能な携帯機器の登場によるモバイル・ネットワークへのアクセス急増、クラウド・コンピューティングの出現、動画共有サービスの広がりなどによって、ネットワーク上を流れるデータ量が膨れあがっているからだ。しかも、新興国を中心にネットワークにアクセスする人口が急増する機運が世界全体で高まっている。このためネットワークの帯域不足が発生することを危惧する声も出てきた。「こうした状況に直面した機器設計者の要求にこたえるために、7シリーズを製品化するにあたって内蔵するトランシーバの機能を強化しました」(同社マーケティング部 プロダクトマーケティング スペシャリストの査錚氏)。

図1 「7シリーズ」に搭載されているトランシーバのポートフォリオ
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同社は、様々なシステムの要求に応じて最適化できるように、「GTP」「GTX」「GTH」「GTZ」と最大データ伝送レートが異なる4種類のトランシーバを設計(図1)。これを、7シリーズを構成する3ファミリ(5品種)のそれぞれに振り分けた。具体的には、低消費電力と低コストを重視した「Artix-7」には、低コストを重視したアプリケーションに合わせて性能をチューニングした最大伝送レート6.6GbpsのGTP。価格性能比を重視したミッドレンジの「Kintex™-7」には、汎用的に使えるように設計した最大伝送レート12.5GbpsのGTXを組み込んでいる。さらにハイエンドの「Virtex®-7」には、GTXのほかに、GTXの受信性能を高めたうえで低消費電力化を図ったGTH、最大データ伝送レート28Gbpsと高性能を追求したGTZの3種類のうち1種類または2種類を搭載した品種を用意している。「4種類のトランシーバのいずれもが優れた低出力ジッタ特性を実現しています」(同社エンジニアリング本部 システム I/Oスペシャリスト 岸本直也氏)(図2)。

高速シリアル・トランシーバ設計を広範囲で支援

広帯域化のトレンドに向けた同社の取り組みで注目すべき点は、トランシーバのパフォーマンスを高めると同時に、高速シリアル・トランシーバに関連する設計環境の強化も図っていることだ。「広帯域化が進むにつれて伝送路環境からの影響がより顕著となる為シグナルインテグリティを保つことが難しくなります。この一方で、多くの設計者は開発の効率化を迫られています。この二つの課題を同時に解決するためには、高度な設計を効率よく進めることができる開発支援環境が必要です」(岸本氏)。そこで同社はFPGAに組み込むトランシーバの設計フロー全体を網羅する形で設計環境を整え、高性能のトランシーバを効率よく設計できるようにした。

図2 優れた低ジッタ特性を備える7シリーズのトランシーバ
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図3 高速シリアル・トランシーバの開発フローとザイリンクスのサポート環境
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つまり、シリアル・トランシーバの典型的な設計フローは、大きく四つのプロセスから成る(図3)。すなわち、①システムが要求する帯域幅の「選定」。②採用するデバイス、トランシーバのプロトコルおよびIPの「選択」。③デバイスの設計(デザイン)。ここでは、ロジック設計とボード設計の二つのプロセスを平行して進める。最後は、④実際にFPGAに設計情報を実装したうえで特性を調整する「最適化」である。この四つのプロセスのうち、「選定」「設計」「最適化」の三つのプロセスのそれぞれに設計支援ツールを用意している。「より多くのユーザーがシリアル・トランシーバ向けボード設計を容易にできるように、いずれのツールにおいても直感的に操作できるような使いやすさを追求しています。さらに効率的に開発できるように、処理時間の短縮も図りました」(岸本氏)。

シミュレーション時間を大幅に短縮

具体的には「選定」のプロセスのためには「CORE Generator™」を用意している。同ツールは、ユーザーが選択したIPのインタフェース回路をデバイスに合わせて自動的に最適化する機能を提供する。「一からシリアル・トランシーバを組み込んだ開発をするのは開発者にとって大きな負担になります。このため多くの開発者がIPを利用するでしょう。ただし、IPを実装する際には、IPのインタフェース回路をデバイスに合わせて最適化する必要があります。CORE Generatorを利用すれば、この作業に要する時間を短縮できます」(岸本氏)。CORE Generatorは、プルダウン・メニューなど利用したグラフィカルなインタフェースを使って簡単に作業が進めることができるのが特長だ。

「設計(デザイン)」のうちロジック設計をサポートするのが「Vivado™ Design Suite」である。Vivado Design Suiteは、7シリーズに合わせて新たに開発した最新のツールである。システム・レベル設計(インテグレーション)とインプリメンテーションの大きく二つの環境が組み込まれている。いずれも、同社が従来から提供している開発環境「ISE™ Design Suite」に比べて作業効率を高めた。例えば、システム・レベル設計は最大4倍の速さで進めることができる。インプリメンテーションの環境に含まれる論理合成ツールの処理速度は従来の3倍~15倍とかなりの高速化が図られている。

表1 「HSPICEモデル」と「IBIS-AMIモデル」を使ったシミュレーションの比較
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「設計」のプロセスのうち効率的なボード設計に欠かせないシミュレーションについては、高速シミュレーション・モデル「IBIS-AMI(IBIS Algorithmic Modeling Interface)」を用意した(表1)。これによってシミュレーションに要する時間を大幅に短縮している。「従来のHSPICEモデルを使うと高精度の結果が得られますが、シミュレーション対象回路が限定的になりますし、シミュレーションを開始してから結果が得られるまでに数日間はかかる事もあります。これに対して、IBIS-AMIモデルを使ったシミュレーションならば、わずか数分で済みます。ただし、モデルですので精度は若干下がります。そこでザイリンクスでは、シリコン成熟度とともに、モデルをシリコンに相関させることで精度を高める仕組みを用意しました。AMIモデルには既に多くのEDAベンダーが対応しており、もはやAMIが業界標準となりつつある事がわかります」(岸本氏)。

これまで多くの時間を要していたシミュレーション時間を短縮することは、高速シリアル・トランシーバを組み込んだ開発をするうえで極めて重要だという。「高速化が進むにつれて20数dBもの損失が発生する伝送路もあり実機評価での最適化が肝心となりますが、最先端のシミュレーション手法を使用し回路最適化を事前に行う事で、実機検証を大幅に圧縮する事が出来ます」(岸本氏)。

“非破壊”で内部回路の特性を可視化

図4 オンチップ解析ツール「EyeScan」でチップ内部の特性解析が可能に
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FPGA上に回路を実現したうえで特性を調整する「最適化」のプロセスには、オンチップ解析ツール「Eye Scan」と、可視化ツール「IBERT(アイバート、Integrated Bit Error Radio Tester)」を用意している。Eye Scanは、同社のFPGAにあらかじめ組み込まれているもので、トランシーバ内部(Rx CDRとRx AFEの間)で検出したジッタおよび電圧の変動に関するデータをチップの外部に出力する機能を提供する(図4)。一方、同社が提供するデバックツール「ChipScope™」上に組み込む事が出来るIBERTは、Eye Scanが出力したデータを受けてアイパターンなどを作成するツールである。「これらを利用することで、今後必須となるチップ内部での特性マージン観察がリアルタイムでできるようになりました。デバッグ時だけではなく通常運用時にも邪魔することなく使用可能ですし入力パターン依存性も有りません。」(岸本氏)。

以上の開発支援ツールのほかに同社は、開発者がシリアル・トランシーバを使用した開発や評価に速やかに着手できるようにするための開発ボードも用意している。現在提供しているのは、Kintex-7ファミリのデバイス「XC7K325T」を搭載し、10Gbpsのプラットフォームに向けた「Kintex-7 FPGA コネクティビティ キット」、Virtex-7ファミリのデバイス「XC7VX485T」を搭載した「Virtex-7 FPGA VC707 評価キット」などで、いずれもGTXトランシーバを搭載している。

市場にあるプログラマブル・デバイスに中には、7シリーズと同様にシリアル・トランシーバを内蔵している製品も少なくない。だが、設計フロー全体を網羅する充実した開発環境も併せて提供しているベンダーはなかなか見当たらない。ザイリンクスの7シリーズおよびその開発環境は、広帯域化のトレンドに追従しながら機器設計に携わる設計者に多くの利点をもたらすに違いない。

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