フラッシュ先進テクノロジー活用事例/上田ハーロー 業界最高クラスの処理能力を叩き出した最新FX取引システムができるまで ~クラウドからオンプレへの転換が成功のカギに~

FX(外国為替証拠金取引)サービス事業を展開する上田ハーロー株式会社では、ビジネスの根幹を支えるFX取引システムの再構築を実施した。FX取引に特化した新たなアーキテクチャに刷新することで、利用者に最適な取引環境を提供するのが狙いだ。高い性能と信頼性が求められるサービス基盤には、ミッドレンジクラスのストレージHitachi Virtual Storage Platform G100をはじめとする日立ITプラットフォーム製品を採用し、安定的なサービスの実現に役立てている。

約100年の経験と実績を生かし、信頼のFXサービスを展開

上田ハーロー株式会社 執行役員 システム部長 河野 茂紀氏
上田ハーロー株式会社 執行役員 システム部長 河野 茂紀氏

貯蓄から投資への流れが加速する中、大きな関心を集めているのが、外国為替証拠金取引――いわゆる「FX」だ。

FXは、個人投資家にとっても非常に有力な資産運用手段となるが、FX事業者を選ぶ際には、慎重にそのサービス内容や企業としての信頼性を見極める必要がある。こうしたことから多くの投資家の支持を集めているのが上田ハーローだ。

「当社は、日本の金融業界に短資業の基礎を築いた上田八木短資グループ企業の一員です。100年近くにわたり日本の金融マーケットと向き合ってきた経験と実績を生かし、お客さまのニーズに応えるFXサービスを提供しています」と同社の執行役員でシステム部長を務める河野 茂紀氏は語る。

こうした姿勢は、サービスの至るところに息づいている。例えば、現在日本の法令では、個人投資家がFX取引を行う際のレバレッジ(証拠金に対して取引できる金額)は最高25倍だ。しかし、1日数回しか為替レートが動かなかった昔とは異なり、現在では「数ミリ秒に1回」ものスピードでめまぐるしくレートが変動する。取引時はこのレバレッジ上限を超えないよう管理が必要だが、精度や速度の制約から、上限のかなり手前で取引制限されるサービスも少なくない。

「この点、当社では、レート更新ごとの極めて短時間内に、取引全体に必要な証拠金を最小の1円単位まで再計算可能とし、資金効率とリスク管理性を最高レベルで両立させています。こうしたことが実現できるのも、高い精度と信頼性が要求される機関投資家向けサービスを長年にわたり手がけてきたから。個人投資家向けサービスにおいても、機関投資家向けと変わらない品質を提供しています」と河野氏は語る。


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持ち前の技術力を生かし取引システムの刷新に着手

上田ハーロー株式会社 システム部 マネージャー 土田 晃司氏
上田ハーロー株式会社 システム部 マネージャー 土田 晃司氏

こうした工夫を重ね、自社で開発・運用してきたシステムだが課題もあった。「まず既存のサーバやストレージが稼働開始から数年が経過。さらに口座数も増えてきたため、インフラのパフォーマンスを引き上げる必要がありました。それともう1つ重要なのが、システムアーキテクチャの全面的な見直しです。より高度な要求に応え続けていくには、FXに特化した新しいアーキテクチャが必要だという結論に達したのです」と同社 システム部のマネージャー土田 晃司氏は語る。

同社のビジネスの特長として、各ベンダーの協力を得ながら、主要な取引システムを自社で設計・運用している点が挙げられる。「FX取引のような金融サービスにとって、取引システムはいわば企業競争力そのもの。お客さまの厳しい要求に応えられる取引環境を提供することが、会社の成長を左右するといっても過言ではありません。運用を含め、当社独自の要件も数多く存在するため、パッケージをカスタマイズするより、新規に構築した方がコストや開発期間の短縮といった点でメリットが大きいこともあります」と河野氏はその理由を説明する。


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FXに特化した画期的な新アーキテクチャを導入

そこで、同社ではFXシステムの刷新を決断。「アーキテクチャの抜本的見直し」と「インフラの性能改善」という2つをポイントにした新しいサービス基盤の構築プロジェクトを始動させた。

まず1つめの「アーキテクチャの抜本的見直し」についてはFXの特性に合わせたアーキテクチャの検討が行われた。

「株式取引に比べると FX取引は流動性が高く、取引相手の存在を意識せずに済む特長があります。つまり、数ミリ秒ごとに変動する為替レートに対し、いかに速く『約定(取引成立)』できるかがポイントになるわけです」と河野氏は説明する。

単純に約定スピードを速めたいのなら、強力なデータベースサーバを大量に用意して処理能力をとことん高めればいい。しかし、この方法では莫大なコストが掛かってしまうため、現実的ではない。そこで同社では、発想を根本から転換したという。

「従来型のアーキテクチャでは、データベースなど取引の基幹部分はユーザー間である程度共有されていました。このため、もしあるお客さまから大量の注文が出された場合、他のお客さまの処理にも影響が生じる可能性があったのです。そこで考えたのが、すべてのお客さまの取引環境を完全に独立させる構成です。これなら自分の取引環境内に他のお客さまはいませんので、常に最良のスピードで取引が行えます」と河野氏は続ける。

ただし、この実現は簡単なことではない。新システムでは100万口座レベルへの対応も求められたため、実に100万並列という大規模の処理をこなさなくてはならないからだ。しかし同社では、自律分散型エージェントモデルの活用などでこの問題をクリア。自社サービスに適用する目処を付けた。


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インフラの性能と信頼性・柔軟性を追求しクラウドからオンプレミスへ転換

2つめのポイントである「インフラの性能改善」についても、さまざまな工夫が凝らされている。高い性能と信頼性を誇る日立ITプラットフォーム製品を全面的に採用し、FXに特化した新アーキテクチャにふさわしい強固なサービス基盤を実現しているのだ。

このインフラ構築に関しては、当初はクラウドサービスの活用も検討しており、IaaS上に新環境を構築する予定であった。しかし、IaaSが提供する標準的なサービスでは、同社が求める処理性能、信頼性・柔軟性、障害発生時の対応などの要件を満たしきれないことが判明。プロジェクトの半ばで、クラウドからオンプレミスへの方向転換を行ったという。

「とはいえ、サービスインをいたずらに延ばすわけにはいかない。この限られた期間内で高性能・高信頼インフラを構築するためには、ミッション・クリティカルな業務システムに精通したベンダーと手を組むのがベスト。そこで、社会・公共システムや企業の基幹システムを数多く手がけてきた日立グループに、インフラ構築の相談を持ちかけたのです」と河野氏は語る。

図:上田ハーローが構築したFXシステムの概要

図:上田ハーローが構築したFXシステムの概要

極めて高い性能・信頼性が求められるFX基盤システムを、日立ITプラットフォーム製品で構築。「active flash」などの先進機能も活用し、優れたコストパフォーマンスを実現している

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日立製作所(以下、日立)、日立ソリューションズをはじめとする日立グループでは、同社の信頼に応えるべくシステム構築に着手。ここでは日立の先進テクノロジーもフル活用されている(図)。

その1つが、日立のミッドレンジストレージ「Hitachi Virtual Storage Platform G100(VSP G100)」に搭載された「active flash」だ。この機能は、ストレージに搭載されたSSD・HDD間で自動的にデータを再配置するというもの。頻繁にアクセスされるデータは高速なSSD上に、そうでないデータはHDD上に配置されるため、最適なコストで高いパフォーマンスを確保することができる。

しかも、複雑なストレージ性能設計に時間を掛ける必要もないことから、開発期間の短縮にも大きな効果を発揮。実際に今回のプロジェクトでも、ストレージ設計工程を省くことで、約1カ月半程度でのインフラ構築に成功したのである。


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日立の手厚い支援体制で高信頼サービス基盤を実現

サーバについても、日立アドバンストサーバ「HA8000シリーズ」を導入。「仕事柄数多くのベンダーのサーバ製品を利用しますが、その中でも日立サーバの品質の高さには全幅の信頼を置いています。品質管理に対する考え方が根本的に違うと感じさせられますね」と河野氏は話す。さらに日立のファイルストレージ「Hitachi Virtual File Platform」による遠隔データバックアップ環境も構築。重要業務データの確実な保護を実現している。

「時間が足りない中での作業でしたので、いろいろと苦労する場面もありましたが、日立が積極的な支援やサポートしてくれたので大変助かりました。本番稼働前の検証・テストなども綿密に行えたおかげで、無事期待通りのインフラ環境を実現できています」と土田氏は語る。

また、河野氏も「当社の業務をきちんと踏まえた提案を行ってもらえた点もよかったですね。例えば金融サービス業では、非常に高いセキュリティレベルが求められますので、ネットワーク1つにしても慎重な設計が求められます。日立はこうしたことをあらかじめ理解した上で提案してくれたため、プロジェクトの進捗も大変スムーズでした」と続ける。


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驚異的な処理性能を実現。同業他社へのサービス提供も視野に

今回構築された新しいサービス基盤は、同社のビジネスにも多くのメリットをもたらしている。まず注目したいのが、投資対効果の高さだ。「新システムはゼロから新アーキテクチャでの開発を行い、機能も性能も大幅にアップさせています。それにもかかわらず、開発費用的には従来のシステムを構築した時とほとんど変わりません。この点については、active flashなどの機能を活用して、費用を掛けるべき部分とそうでない部分を明確に切り分けてくれた日立の提案によるところも大きい」と河野氏は語る。

次に、業界最高レベルのFX取引環境を提供できるようになった点も重要なメリットだ。「例えば、お客さまの資産を保護するためのロスカット判定頻度は、指針の1分以内に対し、従来も平均 20秒台で処理できていました。それが今回のシステムでは、レート更新ごと、つまり数ミリ秒に1回のチェックが可能になりました。ロスカット判定が出てから実際に処理が行われるまでのタイムラグも最小限ですので、高い顧客資産保護性能を達成しています」と河野氏は胸を張る。

システム内部処理の高速化はさらに劇的だ。顧客1注文あたりの約定処理時間は、なんとOSの測定限界以下となる、1ミリ秒以下を達成。FX取引では短時間で多額の資金が動くことも珍しくないだけに、この性能は同社のサービスを利用するユーザーにとっても非常に強力な武器となる。

併せて、取引システムを支えるインフラについても、高性能・高信頼性を徹底的に追求している。「FX取引は24時間いつでも取引が行えますので、インフラの障害によってサービスに影響が生じるようなことは許されません。少しでも通常と異なる挙動が検知されれば、すぐに管理者への通報を行い、必要なリカバリも自動で行う、専用の監視・自動回復システムを自社で構築・運用しています」と土田氏は語る。

この結果、信頼性・可用性についても、稼働率99.995%以上、各障害シナリオでのサービス自動回復 180秒以内という当初から掲げていた要件を確実にクリアしている。

同社ではこの新たなFXシステムを今後のビジネスに役立てると同時に、ベンダーと共に、他のFX事業者へのソリューション提供も行っていく考えだ。

「世界に誇れる新しいアーキテクチャが実現できたのですから、これを拡げることで日本のFXサービス全体の底上げにも貢献していきたい」と河野氏は先を見据え、今後の抱負を語った。

左から日立製作所 梅井氏/上田ハーロー 土田氏/日立ソリューションズ 三角氏/上田ハーロー 河野氏/日立ソリューションズ 奥山氏/日立ソリューションズ 高橋氏

左から日立製作所 梅井氏/上田ハーロー 土田氏/日立ソリューションズ 三角氏/上田ハーロー 河野氏/日立ソリューションズ 奥山氏/日立ソリューションズ 高橋氏


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http://www.hitachi-solutions.co.jp/ http://www.uedaharlowfx.jp/

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