日立フラッシュストレージ活用事例/ゆうちょ銀行 全国2万局以上で利用する重要システムにフラッシュを導入 オンライン処理で最大約10倍の大幅な性能向上を実現

国内金融機関大手のゆうちょ銀行では、情報系システム用ストレージの改善を実施した。急激なデータ量増加に伴う処理能力不足を解消し、システムの安定稼働と利用者への最適なサービス提供を果たしていくのが狙いだ。新ストレージには日立製作所(以下、日立)のフラッシュストレージを採用し、オンライン/バッチ性能の向上を実現。また、日立のアセスメント/PoC(Proof of Concept)サービスを活用することで、高信頼・高性能ストレージ環境を短期間で構築することに成功している。

情報系システムのデータ量増加に伴い、ストレージ性能が課題に

 日本郵政グループの中核金融機関として、個人/法人向けの多彩な金融サービスを提供するゆうちょ銀行。近年では、市場運用態勢などのさらなる強化を図るなど、国内最大級の機関投資家としても強い存在感を発揮している。

株式会社ゆうちょ銀行 システム部門 システム開発第一部 部長 高口 幸雄氏

 同行の業務を、ITの側面から下支えしているのがシステム部門だ。「我々の所属するシステム開発第一部では、主にインフラに関わる領域を担当しています。金融機関にとって、システムの安定運用は極めて重要なポイント。そのため当部門でも最適な業務環境の実現に向けたさまざまな活動を展開しています」と同行の高口氏は話す。

 そうした取り組みの一貫として今回実施されたのが、情報系システム用ストレージ基盤の性能強化だ。このシステムには個人/法人の顧客情報や取引履歴、営業情報、経営情報など、多岐にわたるデータが格納されており、本社および全国約2万4000局の社員の業務に活用されている。営業社員であれば、お客さまのニーズにあった提案を行うためのマーケティングや情報分析に活用するといった具合だ。

 一般に勘定系システムで行うことが多い取引履歴管理や残高証明書発行などの業務についても、同行ではこの情報系システムで行っている。それだけに、極めて高い性能と安定性が要求されるが、業務データ量の急増に伴って次第にシステムの処理能力が不足する場面が生じてきたのだという。

日立フラッシュストレージの導入でI/O性能の改善をめざす

 元々情報系システムの構築時には、一日あたりのデータ処理量の上限を6000万件程度と見積もっていた。「ところが最近では、ネットショッピングなどで多種多様な決済手段が利用できるようになっています。その結果、引き落とし日は特定の日に集中。これにより構築からわずか3年程度で、ピーク日のデータ処理量が上限の6000万件を超えてしまったのです」と高口氏は明かす。

株式会社ゆうちょ銀行 システム部門 システム開発第一部 グループリーダー 早乙女 俊和氏

 こうした状況は、日々のシステム運用にも大きな影響を及ぼす。「勘定系システムなどからのデータ取り込みはディレード処理で実行していますが、データ量が増えたことで次第に所定の時間に間に合わなくなってきました。取り込み処理が遅れれば、当然後続のバッチ処理や日付変更処理、さらには翌朝のオンライン開始にも関わってきます。それだけに、早急にこの問題を解決する必要に迫られていました」と同行の早乙女氏は話す。

 また、現場の利用者の情報活用にも、さまざまな問題が生じていたという。「例えば数年単位でデータ抽出や分析を行おうとすると、処理時間が長くかかることからタイムアウトになってしまう。こうした場合には1年ごとにデータを分けて実行してもらうなど、運用面でカバーしなくてはなりませんでした」と高口氏は話す。

 同行ではこのような課題を解決すべく、新たなストレージの導入に着手した。

 その主な要件は、翌朝のオンラインを確実に立ち上げられるよう、バッチ処理能力の抜本的な改善を図れること。また、1日あたりのデータ処理能力を8000万件以上に引き上げることだった。

 これらの要件を満たせるストレージとして新たに採用されたのが、高性能・高信頼フラッシュモジュール「Hitachi Accelerated Flash」(以下、HAF)を搭載した日立のハイエンド向けディスクアレイシステム「Hitachi Virtual Storage Platform G1000」(以下、VSP G1000)であった(図1)。

図1:ゆうちょ銀行のシステム概要 図1:ゆうちょ銀行のシステム概要 ゆうちょ銀行では、勘定系システムなどから送られた大量のデータを格納する情報系システムに日立のフラッシュストレージを適用。バッチ/オンライン処理の大幅な性能向上を実現した  システムの性能問題を解決する方法としては、アプリケーションに改修を加える方法もある。実際、製品選定に際してはこのアプローチも候補に挙がった。しかし、思わぬトラブルが生じるリスクがある上に、時間やコストもかかる可能性が高い。その点、今回はI/O性能がボトルネックであることが明らかだったため、高速性に優れたフラッシュストレージの導入を選択したという。

徹底的な事前検証を通して課題解決の手応えをつかむ

 ただし、同社にとってフラッシュストレージの導入は今回が初の試みだった。そこで日立の「Flash Solution for Oracleサービス」を活用し、期待通りの性能が得られるか綿密な検証を実施した。

 「今回はアセスメントサービスによる机上検証と、実機を用いたPoCの2段階の検証を実施しました。前者ではDB設計レポートを元にフラッシュストレージの導入効果を推定。また、後者では本番環境を想定したテストデータを用いて、実際に処理を走らせています。現行システムより性能を引き上げることが目的ですから、システム負荷が3~4倍に増えたケースも想定して検証を実施しました」と早乙女氏は話す。

 その結果、机上検証では、フラッシュストレージ導入後のDBシステムの処理性能が最大7.1倍、PoCでは単体更新処理のレスポンスを33~46倍、繁忙期の夜間バッチを想定した多重実行処理時でも最大14倍に向上させられるとの結果が判明した(図2)。「サービスの提案書などで性能などは把握していましたが、やはり実際に動かしてみないと不安な部分も多い。しかし、しっかりとした検証を行ったことで、安心して取り組みを進めることができました」と早乙女氏は話す。

図2:実機を利用したPoCサービスの検証結果 図2:実機を利用したPoCサービスの検証結果 ベストプラクティス構成に試験データをインポートし、業務を模した処理でフラッシュ化の効果を検証。単体更新処理で33~46倍。繁忙期の夜間バッチを想定した、多重実行処理でも最大14倍になる  これに加え、日立のストレージの信頼性も大きなポイントになった。「当社では長年にわたりさまざまなベンダーのストレージを利用していますが、その中でも日立製品は最も障害発生率が低い。社内スタッフの間でも、日立のストレージに対する信頼感は抜群に高い。これも採用を後押しする要因となりました。また、導入作業では開発作業からデータ移行までスムーズに完了。2016年5月の本番稼働後も大きなトラブルは一度もなく、ストレージ製品に加え、システムインテグレーション技術の高さも実感しました」と高口氏は話す。

バッチ処理の遅延を解消。迅速な情報活用も実現

 VSP G1000を新たに導入したことで、懸案であったシステムの性能問題は完全に解消。「まずバッチ処理については、事前の検証結果の通り大幅な時間短縮が実現できました。従来は所定時間ギリギリまで処理が終わらないような状況でしたが、現在では遅延が生じるようなことは皆無。4~5時間程度の余裕も生まれており、後続処理や翌朝のオンラインへの影響を心配する必要もなくなっています」と早乙女氏は話す。

 さらに注目したいのが、オンライン処理の飛躍的な向上だ。

 「実はVSP G1000の本番稼働開始後、分析業務を行った利用者から『システムがおかしくないか』との問い合わせがありました。話を聞くと、処理結果が返ってくるのがあまりにも速いため、要求通りのデータ処理を行っていないのではと疑っていました」と高口氏は語る。アプリケーションやデータのテーブル構造にもよるが、オンライン処理は約10倍の性能が出ているという。

 システム部門では、今後も安定的な業務環境を実現する取り組みを継続していく。「フラッシュストレージの効果は十分に体感できましたが、これで終わりではありません。今後はフラッシュを軸にさまざまなシステムを見直していきたい」と先を見据える高口氏。VSP G1000とHAFが活用される場面も、さらに広がっていくことだろう。
User Profile
株式会社ゆうちょ銀行
所在地
:東京都千代田区霞が関一丁目3番2号
設 立
:2006年9月1日
資本金
:3兆5000億円
代表者
:取締役兼代表執行役社長 池田 憲人
URL
http://www.jp-bank.japanpost.jp/
事業概要
:日本郵政グループの一翼を担う金融機関。約2万4000局の郵便局を中心にした全国を網羅するネットワークを通じ、お客さま満足度No.1のサービスを提供する「最も身近で信頼される銀行」の実現に取り組んでいる。また、適切なリスク管理の下で、運用の高度化を推進し、安定的収益を確保する「本邦最大級の機関投資家」をめざし、「Super Regional & Super Global」の事業モデルを掲げている。
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株式会社 日立製作所
株式会社 日立製作所 ICT事業統括本部
ITプロダクツ統括本部
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