ここから、未来がはじまる。~企業ITのこれからを考える~

Hewlett Packard Enterprise Day 2016 東京 Review

日本ヒューレット・パッカード(HPE)が2016年3月4日、分社後初となるフラッグシップイベント「Hewlett Packard Enterprise Day 2016 東京」を開催した。このイベントのテーマは、全世界のHPEが掲げている「Accelerating next―未来を加速する」というもの。同社や顧客企業、パートナー企業から専門家が集結し、経営環境やITの最新動向を披露した。企業は未来に備えて何に取り組めばよいのか、HPEはその未来に向けて、顧客や社会にどう貢献していくのか――イベントの中で、これらが浮き彫りになった。

SECTION 01

未来を勝ち抜くヒント
未来を加速するために企業が取るべき戦略は?

「さまざまなモノのデジタル化が進んだ結果、今やIT戦略はビジネス戦略そのものになりました」。こう評するのは日本ヒューレット・パッカード(HPE)の代表取締役 社長執行役員の吉田 仁志氏だ。

日本ヒューレット・パッカード 
代表取締役 社長執行役員
吉田 仁志氏

IoT(モノのインターネット)の進展によって、多様なモノが情報を発信するようになりつつある。東京で五輪が開催される2020年には、ネットにつながるデバイスの数は1000億個になるとの予測もある。

このような環境では、企業の競争力の源泉が大きく変わる。誰でも、身の回りにあるモノやクラウドサービスを活用して低コストかつ短期間でビジネスを立ち上げられるからだ。革新的なアイデアさえあれば、個人や中小企業でも大手企業と戦っていくことが可能になる。アイデアをいち早く価値に変えた者が勝ち残る”アイデアエコノミー”の時代が到来した。そこでは、もはやITはビジネスの前提条件となっており、ITの活用からビジネスの創造や戦略を考えることが始まっているのだ。

実際、旧来の常識を破壊するような革新的なビジネスが相次ぎ登場している。例えば、タクシー配車サービスで急成長中の米Uberはタクシー車両を1台も所有していない。宿泊斡旋サービスを提供する米AirBnBも宿泊施設を持っていない。

こうした“アイデアエコノミー”の時代に、勝ち残っていくための条件とは何か。吉田氏は「アイデアエコノミーでは、企業に4つの変革が求められる」と指摘する。

①「ハイブリッドインフラへの変革(Transformation)」
企業活動のアジリティー(俊敏性)を向上させるためにITインフラを整備すること

②「デジタルエンタープライズの保護(Protect)」
サイバー空間での企業活動において、安心・安全を担保すること

③「データ指向経営の推進(Empower)」
さまざまなモノから発信される情報の分析・活用を実践できる環境・体制を構築すること

④「ワークプレースの生産性向上(Enable)」
いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも仕事ができる環境を実現すること 

この4つの領域の変革こそが革新的なビジネスを創造するカギとなるものの、企業が自社のみでそれをやり遂げることは簡単ではない。そこでHPEではこうした変革に向けた顧客企業の取り組みを強力にサポートしていくという。

「ヒューレット・パッカードも75年の歴史の中で変革を迫られました。そして、4つの領域の変革を実践することで、機動性を高めるとともに、素早い意思決定を下せるような組織に変わりました。これからは自らの経験に基づいてお客様の変革を支援し、未来を加速していくことが我々の使命だと考えています」

SECTION 02

アイデア・エコノミーで加速する
企業の敵は企業だけでない個人と同じスピード感を

アイデアエコノミーは、身近なところまで到来している――HPEの山中 伸吾氏は、そのことを、自作の「1台650円でできるインターネットデバイス」を示しながら語った。

日本ヒューレット・パッカード 
サーバーテクノロジーエバンジェリスト 
山中 伸吾氏

山中氏が手にしていたのは100円ショップで購入した「LEDランプ」と、550円で買えるインターネットにつながるWi-Fiモジュールを搭載した「32ビットマイコン」を組み合わせたもの。単に「一つのランプを点灯させると、連動してもう一つのランプも点灯する」というシンプルな仕掛けに過ぎない。しかしインターネットを介せば、たとえパリとニューヨークに機器が分散していても通信可能だ。

650円なら誰でも手が出せる価格なので、単に「光るだけ」といえど、いろいろな使い方が考えられる。例えば、重量センサーと組み合わせれば、個人経営の米屋が得意先の米びつの重さを機器で計測し、米がなくなりそうになったらLEDランプの点滅による知らせを受け、配達に向かうといったこともできるだろう。

 

この例が示すように、IoTが進展した現在、「資金」や「専門スキル」よりも「アイデア」が勝負を決める時代になったわけだ。

これは、企業の敵は「企業」だけではなく、「個人」とも対抗しなければならなくなったという現実を意味する。個人と同じスピード感でさまざまなアイデアを生み出せる仕組みを作り、企業のような組織にしかできない強みを強化すること――この2つの要素を同時に満たすことが求められるのだ。

しかし、HPEでは企業がこの課題を乗り越えるための多彩なソリューションやプラットフォームをすでに用意しているという。「HPEは、アイデアエコノミーの到来をいち早く予測して、ソリューションの準備を進めてきました。それらのソリューションを通して、お客様の変革をお手伝いしていきたい」と山中氏は語った。

SECTION 03

オープンソース・テクノロジーで加速する
競争力を高めるために先進技術を活用せよ

「ビジネスのスピードを飛躍的に高めるには、属人的な作業を自動化・省力化し、『知能化』することが求められます」。HPEの古賀 政純氏は、アイデア・エコノミーにおけるIT活用方法のあるべき姿を、このように評する。現在、企業は市場や顧客ニーズに合わせた製品やサービスの素早い提供が求められている。それを実現するためには、「知能化」が不可欠となるわけだ。

日本ヒューレット・パッカード
オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト
RHCE/RHCVA/Novell CLP/OpenStack/CCAH(Hadoop)認定技術者
古賀 政純氏

それに呼応するように、IT業界では技術開発が加速している。データをハードディスクに置かずに全てを主記憶上で処理する「インメモリー技術」、クラウドサービスとオンプレミスをシームレスに連携させる「ハイブリッドクラウド」、システムの開発担当者と運用担当者が連携・協力しながらソフトウエアを開発する「DevOps」――などである。

いつの時代でも技術開発は続けられているが、例えば、ここ数年は、あまり学習コストをかけずに簡単に使える人工知能のソフトウェアが増えてきている。また、IT基盤におけるOSやアプリケーションの配備、使い勝手、開発のスピードも大きく向上した。こうした動きを支えているのが、「オープンソース・ソフトウエア(OSS)」である。

 

OSSとは、ソフトウエアプログラムの設計図に相当するソースコードを外部に公開したソフトウエアのこと。誰でも改修できることに加え、ソフトウエアごとに開発者のコミュニティーがあり、協力しながら開発を進めていることが大きな特徴だ。インメモリー技術やハイブリッドクラウド、DevOpsに関する技術開発でも、OSSのコミュニティーが中心的な役割を果たしている。HPEも、オープンソースのコンテナ管理ソフトウェアDockerや、インメモリ型のビッグデータ処理基盤ソフトウェアApache Spark、さらに、クラウド基盤ソフトウェアOpenStackを使った研究開発に多大な投資を行い、自社のソリューションに結びつけている。

古賀氏は、「OSSは急速に進化しています。これを利用しない企業は新潮流から取り残され、競争力を失うといっても過言ではありません」と強調。HPEは、2020年の東京オリンピックに向けて、OSSの技術者に積極的に投資していくという。古賀氏は「OSSを活用したいと考えている企業にとっても、HPEは良きパートナーとしての役割を果たしたい」と語った。

インダストリーを加速する
「データ」や「データを取り扱う仕掛け」の見方を変えることでイノベーションを生み出す