IoT Business & Tech Forum 2017 Review
インダストリー4.0、エッジコンピューティング…
IoTビジネスで「本当に勝つ」処方箋

「機械学習」と「リアルタイム」
二刀流の分析でIoTを活用する
SAS Institute Japan株式会社
松園 和久氏

円滑なIoT導入のヒントは
成功した先進事例に隠されている
株式会社 日立コンサルティング
中村 雄一氏 馬場 隆夫氏

デジタル化によるビジネス変革で
傍観者にならないためには?
アクセンチュア株式会社
河野 真一郎氏

安全・快適な運行のため
IoTなど最先端技術をフル活用
WILLER EXPRESS JAPAN
平山 幸司氏

IoT決済が可能にする
スマートなキャッシュレス社会
みずほフィナンシャルグループ
大久保 光伸氏

変化を理解しイノベーションを起こす
アクセンチュア
デジタル化によるビジネス変革で
傍観者にならないためには?
アクセンチュア株式会社 製造・流通本部
インダストリアルグループ
アジア・パシフィック統括
マネジング・ディレクター
河野 真一郎氏

 急速なデジタル化によって既存のビジネスは崩壊しつつあり、これからは「常識からの転換」が必要となる。総合コンサルティング会社のアクセンチュアは、「インダストリーX.0」というコンセプトを提唱して従来のやり方の継続に警鐘を鳴らすとともに、日本の企業が進むべき道筋や取るべき戦略を提案。デジタル技術を活用した新しいビジネスのやり方を説く。

 ここ数年、デジタル化の波は飛躍的に進んでいる。この波は今後さらに加速すると見られており、東京オリンピックが開催される2020年には「2120億個のセンサーと500億個のデバイスが市場に出回り、42億人がネットワークへアクセス。1ヵ月のモバイルデータ量も、31EB(エクサバイト:1EB=10億GB)にまで増加します」とアクセンチュアの河野真一郎氏はいう。さらに、新しい技術やビジネスモデルの組み合わせは市場に大きな変化をもたらし、「これまでのやり方は通用しません」と指摘する。

 とある調査によれば、自動車業界ではカーシェアと自動運転の普及によって「現在7台の自動車で行っている仕事量を、2040年にはたったの1台でこなせるようになる」と予測する。さらに、この変化は売り上げにも波及し、従来の乗用車の売上高は2019年にピークを迎え、その後徐々に下降。2030年には実台数ベースでも減少するという。また市場利益の構成比も、Uberなどのサービス分野のシェアが2030年には40%にまで拡大すると見ている。

携帯電話で起きた変化が自動車の世界でも起きる

 にわかには信じられない予測だが、携帯電話業界で起こった変遷を思い返せば、これがあながち的外れでないことがわかる。世界の携帯電話機市場における利益シェアを見返すと、2007年はハードウエアメーカーの上位5社(ノキア、サムスン電子、モトローラ、ソニー・エリクソン、LGエレクトロニクス)で90%を占めていたが、2015年にはアップルが92%を独占するまでに激変したからだ(出典:Gartner 【2008年2月】)。

 この要因は、競争源泉の変化にある。もともと、業務の流れを「企画」→「設計・生産・組立」→「アフターサービス」とした場合、収益の源泉である「付加価値」はこれまで設計・生産・組立に偏っていた。だからこそ、モノづくりを得意とする日本企業は品質の高い製品を市場に出して成功してきた。しかし、「携帯電話業界では、スマホへの移行によってオープンプラットフォームのビジネスモデルが登場したことで、ハードウエアが一気にコモディティ化。これにより、付加価値は企画やアフターサービスへ一気にシフトしました」と河野氏は解説し(図1)、同様の変化が自動車業界にも起きると解説する。

図1:横軸に「業務の流れ」、縦軸に「付加価値」を配したグラフ

市場を大きく捉えてモノではなく成果を売る

 デジタル化は、これまでの「モノを売るビジネス」から「成果を売るビジネス」への変化を意味している。これに対して河野氏は、「デジタルによるビジネス価値を創出するためには、場当たり的ではなく、段階的な施策の計画と実行が肝要となります」と強調する。そこでアクセンチュアでは、縦軸に「各会社の顧客に向けたデジタル化の視点」を、横軸に「各会社の社内プロセスにおけるデジタル化の視点」を配した「Digital Transformationフレームワーク」を活用し、デジタル戦略上のステップを示している。デジタル化を進めるにあたっては、どちらか一方に偏っても効果が限定的となるため、「両方を組み合わせることが重要となる」(河野氏)。

 では、デジタル化を進めるとどれだけの効果が得られるのか。アクセンチュアの想定によれば、年商500億ユーロ(約6兆円)の架空自動車メーカーが存在した場合、既存のバリューチェーン全体でデジタル化施策を実行すると、14.7億ユーロ(約1600億円)の効果が見込まれるそうだ。河野氏は「デジタル技術を活用したビジネスでは、顧客視点での価値創造が根幹にある一方で、既存ビジネスにおける規模を大きく捉える傾向があります」と解説し、そのステップを「市場を大きく捉える」→「ビジネスインパクトを見極める」→「デジタル技術を活用する」という3段階で示す。

 例えば、General Electric Company(GE)の航空機用エンジン部門の場合では、「市場を大きく捉える」でその視野をエンジンだけでなく業界全体に広げ、それをベースに「ビジネスインパクトを見極める」でその市場規模を算出。エンドユーザーまで含めた業界全体での顧客課題を抽出し、「デジタル技術を活用する」で航空機全体のメンテナンスや運航計画を策定するサービス「taleris」を生み出した。

従来との違いを理解して日本流で変革を起こす

 GEのようなイノベーションを起こすには、従来のビジネスとの「違い」を理解する必要がある。もともと、日本の製造業が得意とする「モノづくり」は先発優位で、「すり合わせ」や「カイゼン(改善)」によって高機能・高性能・高品質の製品を作ってきた。一方、デジタルを駆使する新しいビジネスは「コトづくり」であり、後発優位なのが特徴。デジタルケイパビリティをテコに新たな価値観をもたらすことで、後発でも一気に追いつけるからだ。さらに、新しいビジネスの競争は「顧客起点でのビジネス変革であり、エコシテムにも貢献するといったメリットがある」(河野氏)。

 ただし、この新しいビジネスを成功させるためには、これまでとは違うアプローチが求められる。それが「シャークフィン理論」と呼ばれるやり方。徐々に市場を広げていく従来の「イノベーター理論」とは異なり、シャークフィン理論ではまず小さな規模でスタートしてTry&Learnを繰り返し、それをいかして一気に大きく立ち上げる手法を取る。さらに、上手くいかなかった場合は速やかに終息させるのが特徴だ(図2)。図2:「シャークフィン理論」と「イノベーター理論」のイメージ図

 しかし、多くの日本企業はこのようなやり方が得意ではない。そのため、河野氏は「前提条件や発想を転換しないと、これまでの“勝ちパターン”がいつの間にか“負けパターン”になっていることが増えてきます」と警鐘を鳴らす。そして、「日本流に上手くアレンジしながらイノベーションを起こしていくこと。それが、これからの日本の課題です」と結論付けた。

お問い合わせ

アクセンチュア株式会社
Email:info.tokyo@accenture.com
URL:http://www.accenture.com/jp/industryX0

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