最新の調査で判明した「教育現場の無線LAN」光と影 効果的な学びを実現する環境整備のポイント

調査は、全国の小中高等学校の関係者を対象に2017年3月に実施した。有効回答数は300で、回答者の所属は、小学校が101人、中学校が114人、高等学校が83人、教育委員会が2人となっている。調査方法の概要を図1に示した。

図1 「校内無線LAN」に関する調査の概要

図1 「校内無線LAN」に関する調査の概要

校内での無線LANの整備状況をまとめたのが図2だ。普通教室や職員室での無線LANの整備が60%弱に達していて、無線LANの利用が進んでいることが分かる。「体育館・講堂」での整備も16.0%となっている(※文部科学省による「平成27年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」では、普通教室での無線LAN整備状況の全国平均は26.1%)。

図2 学校内での無線LANの整備状況

図2 学校内での無線LANの整備状況

普通教室や職員室での無線LANの整備が60%弱に達するなど、無線LANの利用が進んでいる

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導入が進む校内無線LAN、アクティブ・ラーニングにも効果

教育現場では、各教科でタブレットやパソコンを利用した学びが広がっている。普通教室や体育館などで無線LANの環境が整えば、児童・生徒はそれぞれの授業や課外活動で、ネットワークを利用できるようになる。今回の調査では、無線LANを使った学びについて、その効果を評価する声が多く集まった。

無線LANの効果についてのコメントの例

「プロジェクターやプリンターなどの配置を、授業に適したものにできる」
「体育の授業で、見本動画を見せることにより、生徒に分かりやすい説明ができた」
「調べ学習をするときに自分たちの机で調べることができる」
「自らインターネットで検索するなど、普通の座学より生き生きと授業に向かっている」
「その場で必要な情報を児童がインターネットで検索して調べることができ、児童に必要な情報を即与えることができる」
「修学旅行の事前学習で利用したところ、子どもたちが能動的に活動した」
「生徒がタブレットで作成したものを送信させることにより、他の意見などを共有できる」

小学校では2020年度から全面実施になる新しい学習指導要領では、プログラミング教育の必修化や、課題の発見や解決を意識して主体的・行動的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」の推進などをうたっている。コメントを見ると、無線LAN環境の整備は、アクティブ・ラーニングなどの新しい学びのスタイルを先取りする効果もあるといえそうだ。

授業に深刻な影響を及ぼしている無線LANトラブル

無線LANの効果を評価する一方で、教育現場で頻発しているトラブルについての厳しい声も多くあった。図3は、無線LANトラブルの経験について聞いた結果だ。

図3 無線LANに関係したトラブルの経験

図3 無線LANに関係したトラブルの経験

それぞれのトラブルを6割前後の回答者が経験している。動画を利用している学校の方が、トラブルも多く発生している

「無線LANに接続できない」「途中で途切れる」「十分な通信速度が出ない」「サポートが不十分」の各トラブルについて、6割前後の回答者が「経験あり」と答えている。最近は、ネット上の動画教材を利用して学習したり、離れた学校の児童・生徒がインターネットを利用した動画中継で交流したりなど、動画を活用した学びも広がっている。動画コンテンツは、静的なコンテンツと比べると、データ量が多く、校内ネットワークにも負荷がかかる。グラフに示したように、動画を利用している学校ほど、トラブルが多いことが分かった。

図4は、無線LANによるトラブルが、授業や校務に与える深刻さについて聞いた結果だ。教育現場では、無線LANのトラブルによって深刻な影響が生じていることが分かる。

図4 無線によるトラブルの深刻度

図4 無線によるトラブルの深刻度

無線LANによるトラブルについて、「深刻」「かなり深刻」と回答した割合。教育現場で無線LANトラブルが大きな課題になっている

無線LANのトラブルについてのコメントの例

「授業前の準備で正常であったが、本番で動かなくなった」
「接続が不安定で途切れやすい。授業での活用に不安がある」
「なぜか廊下でしか使用できない無線環境で、教室で使おうとするとほぼ使用不可能だった」
「接続トラブルがあると、それだけで授業がつぶれてしまう」
「授業が途切れるので生徒がざわついた」
「接続切れで以後の授業が成立しなくなった」
「動画を見せようとしても、通信速度が遅く途切れてしまう」
「パソコンを使って体育館の大画面に移そうとして、映像が止まってしまった」
「動画を見せている時、電波が悪くなり、動画が固まってしまった。生徒はつまらなそうにしていた」

コメントでは、接続トラブルによって、授業が中断したという回答が目立った。こういったケースだと、ICTを利用したことでかえって授業の質を落とすことにもつながりかねない。調査結果を見ると、教育現場で無線LANを利用する際には、トラブルの発生を防ぐための取り組みが必要不可欠だといえる。

とはいえ、無線LANの設備は、一度導入すると、すぐに入れ替えることは困難だ。このため、無線LANを校内に導入する際には、事前に発生しがちなトラブルの内容やその原因を把握して、トラブルが発生しにくい環境を整備する必要がある。

また、今回の調査では、普通教室に無線LANを導入済みの学校で、授業で「十分に活用できている」とした回答者は31.0%にとどまっている。無線LANを活用できていない理由としては、「授業で使える端末の不足」(36.3%)、「無線LANで使う教材を、授業の進行にどう取り入れるかの知見や経験の不足」(31.0%)、「通信環境が不安定になることで、授業の円滑な進行を妨げるリスク」(21.0%)などが挙がった。より効果的な授業を推進するために、授業で使うための無線LANはどうあるべきか、を知っておきたい。

では、様々なトラブルを未然に防ぎ、無線LAN本来のメリットを引き出すには、どうすればよいのだろうか。教育現場のネットワーク構築に強みを持つシスコシステムズの専門家に、校内での無線LAN環境整備のポイントを聞いた。

SOLUTION

トラブルの多くは実環境に基づく事前の検討不足が原因

(聞き手:日経BPイノベーションICT研究所長 桔梗原 富夫)

シスコシステムズ合同会社 パブリックセクター事業 教育ICT推進部長 小野 裕一氏
シスコシステムズ合同会社 パブリックセクター事業 教育ICT推進部長 小野 裕一氏
シスコシステムズ合同会社 エンタープライズネットワーキング事業 シニアプロダクトセールススペシャリスト 櫻井 仁史氏
シスコシステムズ合同会社 エンタープライズネットワーキング事業 シニアプロダクトセールススペシャリスト 櫻井 仁史氏

――調査の結果、無線LANは授業の自由度を高める一方で、教育現場のトラブルの原因になっていることが分かりました。授業中にネットの接続が切れると授業の進行が滞り、児童・生徒の集中力も途切れてしまいます。

小野氏トラブルの原因としてまず考えられるのが、導入前にネットワークインフラ要件が十分に検討されていないことではないでしょうか。お客様と話していても、導入時にタブレットや教育アプリケーションは様々な評価を行うのに、無線LANについてはカタログレベルのチェックだけで、実際の利用環境に基づく検討を行っていない学校が多いと感じます。

櫻井氏無線LANの電波は周囲の環境の影響を大きく受けるため、仕様上は電波が届くエリアでも、建物の構造や設備の配置によって通信品質が変わります。つまり、カタログなどに記載された「接続可能数」と、実際の「使えるデバイス数」が一致するとは限らないわけです。これが、回線はつながっても、動画などのリッチコンテンツはカクカクした動きになったり、止まったりして、実際の授業では使い物にならないといったトラブルの原因です。


高い処理能力と電波干渉の自動回避でトラブルを防止

櫻井氏対策として、「無線LANアクセスポイントの処理能力の向上」と「電波干渉の回避」が考えられます。アクセスポイントは、端末がネットワークに接続する際や、動画など大きなデータを扱う際には、高い処理能力が必要になります。処理能力が足らないと、多くの端末が同時に接続しようとしたときにつながらなかったり、動画がスムーズに視聴できなかったりします。アクセスポイントの処理能力を高めることで、こうしたトラブルを回避できるわけです。また、近隣にある第三者のアクセスポイントや電子レンジ、様々な設備機器による電波干渉でも、無線通信に影響が出ます。このため、電波干渉をいかに回避するかも、トラブル防止のポイントです。

小野氏シスコシステムズでは、「Cisco Start 文教セレクション」のブランドの下で、こうした対策ができるソリューションを用意しています。主力製品の1つが、無線LANアクセスポイント「Cisco Aironet 2800シリーズ」(以下、Aironet)です(図5)。特長は、接続の速度と安定性。最新の無線LAN規格である802.11ac Wave 2に準拠しており、高速化が進むネットワーク環境にも対応することができます。

図5 Cisco Aironet 2800 シリーズ

図5 Cisco Aironet 2800 シリーズ

高密度ネットワークの負荷を軽減する「Cisco High Density Experience(HDX)テクノロジー」を搭載しており、多くの端末・アプリケーションを使う学校のような環境に強い。また1台で2セットのアンテナをアクティブ化できるため、少ない台数で広いエリアをカバーできる

櫻井氏このクラスの他社のアクセスポイント製品の多くは1台につき1つのCPUで動いています。AironetはデュアルコアCPUを3つ搭載しています。これで並列処理することで、 同時に多くのデバイスが接続される学校のような環境でも素早くつながり、動画などもスムーズに視聴できます。

さらに、電波干渉を自動的に回避する機能も備えています。これにより、「人が手を加えなくても安定的につながり続ける」状態を維持します。市場にはこの機能をソフトウエアレベルで提供するものはありますが、シスコの製品では専用チップを搭載し、ハードウエアで処理しています。そのため、通信側の処理に影響を与えることはありません。

小野氏最近行った約2クラス分・計100台のパソコンへの動画教材一斉配信のテストでは、開始から約4秒で全パソコンへの動画配信を開始できました。一方、同時にテストした他社の製品では、1分経っても数台程度しか動画配信が開始できていない状況でした。これでは、その間に児童・生徒がざわつきだしたり、遊び始めたりする可能性があります。学校にとって、どちらが使いやすい製品かは明白だと思います。

学校向け無線LANパフォーマンス検証(Aironet 2800編)

――調査では、校内の場所によって無線LANの速度が異なることへの不満の声もありました。学校にとっては、校内の無線LAN環境がどうなっているかが気になります。

小野氏シスコのソリューションは、電波のカバー範囲や干渉源を、ヒートマップ形式で管理画面に表示することができます。これにより、校内の複数のアクセスポイントを一元的に見える化して運用することが可能です。電波は、「目に見えない」というのが常識なので、不具合が起こっても、理由を探ることは諦めてしまいがちです。実際、「なぜかつながらない」「理由は分からないけれど切れてしまった」とサポートに電話した経験がある方も少なくないはず。ですが、それではサポート側も対処のしようがありません。状況を可視化しておけば、サポート側も適切なアドバイスが行えますし、それ以前に自ら対処できる可能性が高まります。

――セキュリティや困ったときのサポート体制も関心事です。

小野氏シスコの無線LANソリューションは、教育現場で必要なセキュリティ対策として、最先端の暗号化と認証システムを備えています。また、より高度な対策として、ネットワーク全体のセキュリティソリューションもお選びいただくことが可能です。

櫻井氏第一には、前述の通り、サポート窓口に問い合わせをする状況を作らないよう、ネットワークインフラを検討することが重要ですが、それでもサポートが必要な際には、全国各地で地域に密着した「Cisco Start 文教セレクション」販売パートナーが保守サポートを提供します。

小野氏安全・快適な無線LAN環境を整備することは、児童・生徒の学びの場を広げ、教育の質の向上を実現する大事な取り組みではないでしょうか。それなのに、充実した学びを支える役割のネットワークインフラがボトルネックになり、本来の便利さや使いやすさを感じていない教育関係者が多い現状は、とても残念です。今回ご紹介したポイントを参考に、学校で本当に使える無線LANの環境を整えていただければと思います。

■Cisco Start 文教セレクション

「安全性の高いネットワーク機器を教育機関向けに最適化し、手頃な価格でお届けする」というコンセプトの下、シスコシステムズが提供する学校・教育機関向けソリューション。Cisco Aironetアクセスポイントは、市場想定価格49300円からラインアップを揃えている。

また、2017年5月17日(水)~19日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催される「第8回教育ITソリューションEXPO(EDIX)」では、このCisco Start 文教セレクションをはじめとした、シスコの教育機関向けソリューションを直接体感することが可能だ。ぜひ、参加を検討してみてほしい。

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