──サイバーエージェントをはじめ、国内企業が次々採用

法人ビジネス領域で躍進するファーウェイ強さを支える「日本式」とは

スマホメーカーの顔は一面にすぎない

 1987年の創業以来、急成長を遂げている中国の華為技術(以下、ファーウェイ)。同社が2017年3月31日に発表した2016年度(2016年1月~12月)の監査後業績を見ると、グループ売上高は前年比32%増となる約8兆7,316億円、純利益は同0.4%増となる約6,211億円に達するという。世界的にも、今最も勢いのあるICTベンダーの1社であることに疑いはないだろう。

図1:ファーウェイの2016年度事業別売上構成比(2017年3月31日発表) 図1:ファーウェイの2016年度事業別売上構成比(2017年3月31日発表)  日本国内ではこれまで、「ファーウェイ=スマートフォンメーカー」という印象が強かった。しかし、グローバルの事業別売上構成比を見ると、祖業である「通信事業者向けネットワーク事業」が55.7%を占め、スマートフォンの製造・販売などを行う「コンシューマー向け端末事業」の34.5%を大きく上回る。また注目すべきは、サーバー、ストレージなどの開発・製造・販売を手がける「法人向けICTソリューション事業」だ。「売上構成比では7.8%にとどまるものの、売上高の対前年成長率は47.3%増。コンシューマー向け端末事業の43.6%を上回る率で伸びている」とファーウェイ・ジャパン 法人ビジネス事業本部 ソリューションマーケティングマネージャーの南保 邦亮氏は説明する(図1)。

 このことからは、むしろ日本国内における印象が誤りだったことがうかがえる。通信をはじめとするBtoB、そしてBtoC領域まで、幅広い事業を世界規模で展開する巨大ICTベンダー──。それがファーウェイの実像である。
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下地にあるのは「日本のものづくり」

 一方、同社に対しては、中国メーカーというレッテル貼りをして、風当たりを強める向きもある。多くの中国製品に対する先入観から、「安かろう・悪かろう」といった言葉を持ち出し、価格訴求で市場シェアを伸ばしていると揶揄する声もあるかもしれない。

 だが、ことファーウェイに関しては、こうした指摘は的外れだ。実際、同社のサーバー製品は、他メーカーの製品と比べて必ずしも価格面の大きな差があるわけではない。「コスト優先の製品開発は行わず、あくまで品質や信頼性を重視し、相対的なコストパフォーマンスの高さを追求してきたことが、現在の結果につながった」と南保氏は分析する。

 自信には裏付けもある。1つが、創業当初から一貫して技術にこだわり、「研究開発(R&D)」に対し積極的かつ継続的に投資するという同社の方針だ。

 具体的には、2016年度の研究開発への年間投資額は1兆2,789億円。これは全事業領域に対するものではあるが、グループ売上高の14.6%に達し、研究開発に携わるエンジニアは社員の実に45%以上、約8万人に及ぶ。また2010年からは日本にもR&D拠点を置き、現在も100人規模で研究開発を継続している。

 もう1つが、「品質向上」への取り組みである。

 ファーウェイの生産工場では、材料の入荷から商品の発送までサプライチェーンにおける徹底した品質管理を実施。「ISO9001」といった品質マネジメントシステムをはじめ、電気通信製品の供給者に対する品質マネジメントシステム規格「TL9000」、さらには自動車産業の国際的な品質マネジメント規格「ISO/TS 16949」といった認証も受けている。「これらを満たす品質システムを生産現場に実装し根付かせるため、トヨタ生産方式に関するコンサルタントを招き、日本式の“KAIZEN”を製造現場に取り入れている」と南保氏は言う。

 同社の創業者である任正非(レン・ジェンフェイ)CEOは、京セラグループの名誉会長である稲盛 和夫氏と親交があると聞く。品質管理をはじめとする経営マネジメントに国際的なベストプラクティスを活用しつつも、その背景にある哲学をトップ同士の親交を通じて学び、グローバルな経営戦略と融合した結果が、今日の躍進につながっている。
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高い品質と信頼性は「基板」でわかる

 「R&D」と「品質向上」――。この2つを軸としたファーウェイの強みは、製品を目の当たりにするとよりわかりやすい。

写真 ファーウェイ製のサーバー内部 写真 ファーウェイ製のサーバー内部 ファンの振動を抑える構造のほか、パーツのサイズや配置の向きなどを計算することで内部のエアフローを最適化。熱が滞留しないようにして障害発生を抑制している  例えば、法人向け製品の中核を担うサーバーは、高密度でありながらも品質と信頼性を高レベルで両立している。その基板を見ると、設計者でなくてもシンプルかつ整然とした配線や、部品配列で構成されていることがわかる(写真)。

 「冷却ファンの振動による影響を減らすため、逆回転のファンを交互に配置して振動を打ち消す構造など、当社がもともと通信キャリア向け製品を設計・開発してきた時代から培ったノウハウを注ぎ込んでいる」と同 法人ビジネス事業本部 ソリューション&マーケティング部 ソリューションセールスマネージャーの水戸部 章生氏は語る。故障の原因となりやすいコンデンサーなどにも耐久性に優れた日本製のハイグレードなパーツを多数搭載。開発・製造コストはかさむが、そこに投資を惜しまないことで、通信キャリア品質の製品を一般企業向けに提供することに成功している。

 また、もう1つの主力であるストレージの領域における例として、SSDの性能・信頼性を左右するコントローラーにも独自ノウハウを投入。性能や耐久性を強化したり消費電力を抑制しているほか、内部RAIDによりNANDフラッシュにアクセスし、SSD単体での信頼性を高める仕組みなどを持ったコントローラーチップを自社開発し実装している。

 「加えて、製品開発にあたっては、標準的な技術を核にする『オープン戦略』が当社のポリシー。オープンで標準化された技術をベースとすることで、ユーザー企業にとってもマルチベンダー環境で扱いやすい製品に仕上げることができる」と南保氏。ここにも、ファーウェイが市場で衆目を集める理由が見て取れる。
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人気ゲームの大規模ユーザーを支える

 もちろん、いち早くファーウェイのこうした側面に気付き、製品採用を進める国内企業も多くある。その1社が、インターネットテレビ局「AbemaTV」やブログサービスを中心とした「Ameba」などを展開するサイバーエージェント(以下、CA)だ。

左から、株式会社サイバーエージェント 技術本部 Service Facility Group DC Solution 平野 智洋氏、同 古積 広一氏

 同社では、「アメブロ」やスマートフォン向けソーシャルゲーム『ガールフレンド(仮)』といったサービスのコンテンツを置いたデータセンターで、ファーウェイのサーバーやSSDを多数活用している。

 CAとファーウェイの出合いは、2013年に導入したSSDカード「ES3000シリーズ」がきっかけだった。当初は既存SSDのリプレースが目的だったため、小規模導入にとどまったが、その後ラックサーバー「RH1288」を約500ノード、高密度サーバー「FusionServer X6000」を約200ノード、データセンターサーバー「FusionServer X6800」を約200ノード導入し、現在はサービスの根幹を支えるシステムとして利用している。

 ファーウェイ製品を積極採用する理由として、技術本部 Service Facility Group DC Solutionの平野 智洋氏は「信頼性」を挙げる。

 「独自テストでサーバーメーカーごとの故障率を調べたところ、ファーウェイのサーバーの故障率は『0.3%』。極めて故障が少ない上、高密度なためラックスペースや配線コスト、消費電力も抑えることができる。保守・運用を含めた大きなTCO削減につながっている」(平野氏)

図2:「FusionServer X6800」とSSD「ES3000V3」で構成した自社クラウド環境とパブリッククラウドのパフォーマンス比較 図2:「FusionServer X6800」とSSD「ES3000V3」で構成した自社クラウド環境とパブリッククラウドのパフォーマンス比較 リード/ライトいずれもファーウェイ製品で構成した自社クラウド環境が大きく上回る結果となった(サイバーエージェント エンジニアブログにて検証結果を公開中)  また同じく技術本部 Service Facility Group DC Solutionの古積 広一氏は、「パフォーマンス」を評価する。例えばSSDカードに関しては、CAが既に利用中だった他の製品との比較テストを行ったところ、2倍以上のパフォーマンスを記録。さらに、ファーウェイのサーバー・SSDカードで構成した環境と、同等スペック・コストの大手パブリッククラウドのサービスとを独自のベンチマークテストにかけた結果、リード/ライトのIOPS(単位時間あたりに処理できるI/Oアクセス数)および帯域幅の両方で、自社環境が大きく上回る結果が得られたという(図2)。

 「小さなデータを頻繁に動かすシステムなどは、従量課金のクラウドより自社保有が向くケースも多い。ファーウェイ製品は、そうした使い方でパフォーマンスを引き出したい際に威力を発揮する」と古積氏は語る。

 さらにCAは、ファーウェイ・ジャパンのサポート対応も高く評価している。この点はファーウェイも迅速なサポートを強みとしており、その理由は中国本社が物理的に近いということが大きく関わっているという。「導入検討時の納期回答も、欧米のサーバーメーカーでは考えられないほど迅速。特に当社のような業態では、ユーザー増などに伴う急なシステム拡張も頻繁に起こる。サービスレベルを落とさずシステムを展開できるのは、非常にありがたい」と平野氏は述べる。

 2016年度、日本国内におけるサーバー出荷台数が1万台を超えたファーウェイ。ここ日本でも、グローバル同様に法人ビジネス領域での存在感を着実に増しつつある。そのポテンシャルが、果たしてどれほどのメリットをもたらしてくれるのか――。今、多くの企業が動向を注視している。
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