クラウド化がもたらすビジネス革命

~IoT/データセンターの活用が新たな価値を生む~

これからのデータセンターに求められる課題

原稿:元田光一

IT活用の舞台がクライアント-サーバからクラウド・コンピューティングに移り、さらにIoTやAIの利活用などによって、全世界における年間のネットワーク・トラフィック量は2021年には3.2ZB(ゼタバイト)にまで到達すると見られている(*1)。これは、2005年から2021年までの間に、ネットワークのトラフィック量が127倍になるという計算だ。クラウド・コンピューティングの普及は、このようなトラフィックの急激な増加に対応するために、データセンターにさまざまな課題を突きつけている。

大規模化を迫られるデータセンター

ネットワークのトラフィック量が急激に増加する要因の一つが、トラフィックの中身の変化だ。これは、データセンターにとっても大きな負担となっている。

たとえばクライアント-サーバの時代、データセンターとユーザーを結ぶトラフィックの中身は、大部分が契約企業の社内ユーザーが利用する文書ファイルや画像ファイルだった。しかし、データセンターの利用形態が、クラウドでサーバのハウジングやホスティングなどに移行するにつれ、データセンターとユーザーを結ぶトラフィックの中身は、不特定多数の外部ユーザーが利用する音声や動画などの大容量コンテンツに変化する。

さらにスマートフォンの普及により、これまでパソコンを使用していなかったユーザーもWebサイトの閲覧、SNS、ゲーム、地図アクセスなどといったさまざまなサービスが利用できるようになり、データセンターのサーバに接続するユーザーの数が飛躍的に増大した。そして、IoT(Internet of Things)の利活用によって、さまざまな家電製品や工場で制御されるデバイスまでもがネットワークに接続されると、データセンターのクラウド・サーバに接続されるデバイスの増加はこれまでの比ではなくなってくる。

このように、ネットワーク・トラフィックの増加を招いているクラウド・サービスの拡大にデータセンターが対応するには、大量の電力供給および空調能力、大容量ネットワーク・インフラ、大容量IT機器を支えるための床構造などを備えた大規模データセンターが必要であるため、国内では新築や増築など積極的な投資が行われている。IDC Japanが2017年3月に発表した調査によれば、2016年末時点の国内にあるデータセンターの延床面積の合計は203万3540㎡で、2021年には220万319㎡に増加(年間平均成長率は1.6%)すると見ている(*2)。

AIの活用によって電力消費量の増加が拡大

大規模データセンターが増加すれば、消費される電力も膨大なものとなる。データセンターが使用している電力量は年間10%ずつ増大し、今や世界全体のエネルギー需要に対して約2%を占めているともいわれている。しかし、今後予想されるデータセンターの消費電力増加の要因は、クラウド・サービスの拡張やIoTによるネットワーク・デバイスの増加だけではない。

最近ではさまざまなWebサービスにおいて、AIが活用されるようになった。たとえば、ECサイトではユーザーの行動を学習して、AIが最適なタイミングで最適な販促を実施する接客サービスが導入され始めた。また、アプリ内に登録されている提携ブランドの服を、ユーザーが「好き」「嫌い」で分類することでAIがファッションセンスを学習し、ユーザー好みの商品を提案してくれるサービスは、今後アパレルメーカー必須となるかもしれない。このように、AIは私たちが気が付かないところで、徐々に日常生活の中に浸透し始めている。今後はチャットボットなど、AIと音声で会話するサービスも増えてきそうだ。

こういったAI活用サービスを支える上でトレンドとなっている、ディープラーニング(深層学習)といった手法は、今後もAIを実現する上で欠かせないテクノロジーである。しかし、ディープラーニングでは「学習」と「推論」がセットで行われ、学習には特徴点を抽出するために多くのデータとそれを処理する高い計算能力が求められる。その結果、HPC(High Performance Computing)と呼ばれる高性能なサーバの導入が拡大する。このHPCの導入が発熱量の増大を招き、データセンターでは冷却にかかる電力の消費がさらに増加することになる。

省エネ化が課題に

運用コストの削減という面からも、データセンターの省エネ化は以前から課題となっていたが、日本では2011年3月の東日本大震災以降、電力消費量の削減が強く求められ、データセンターでもPUE(Power Usage Eff ectiveness:電力使用効率指標)値を引き下げる取り組みが積極化した。欧米でもデータセンターの省エネ化への取り組みが推奨され、ネバタ州ラスベガスに拠点を持つ米Switchは同州に建設する世界最大級のデータセンター(約49万㎡)において、大手電力会社NV Energyが提供する「100%再生可能エネルギー」電力プランを採用する。

データセンターが省電力を実現するために取り組む手段の一つが、ラックの工夫だ。たとえば、温湿度センサーや気圧センサーを、ラックの上部、下部、中央部、ホットアイル(熱排気がたまる温かい通路)側、コールドアイル(冷気の通路)側に設置し、それぞれで取得したデータを解析する。これによって、冷却器からの冷気がラックに到達し、機器を冷却して排出されるまでの一連の気流の状況を可視化する。そこで得られた情報に基づき、ラック列の配置を工夫したり、冷却器の運転強度を緻密に制御するといった最適化の取り組みが行われている。

一方、データセンター向けのハードウェアを提供するベンダーも、低消費電力化に力を入れている。たとえば、インテルが7月に発表したHPC向けXeonスケーラブル・プロセッサーは、システムアイドル時の電力を引き下げ、80 Plus Titanium PSU(80%以上の電気変換効率を満たす電源ユニット)をオプションとして提供し、冷却サブシステムの効率と安定性を高める高度な熱冷却設計するなど、データセンターの電力消費削減に貢献する仕様を採用している。

今後、データセンターの活用を新たに検討する際には用途を明確にした上で、その用途に対応できる設備を持っている事業者を見極めることが重要になりそうだ。

*1:「Cisco Visual Networking Index:予測と方法論、2016~2021年ホワイトペーパー」

*2:「国内データセンター延床面積予測を発表」