クラウド化がもたらすビジネス革命

~IoT/データセンターの活用が新たな価値を生む~

CDOの役割と必要性(前編)

原稿:元田光一

デジタルトランスフォーメーションの導入で企業に必要なことは、新たなビジネスモデルの創造だけではない。社員の働き方もデジタルに適応する必要があり、幹部にはデジタルに対応した経営の在り方を理解してもらわなければならない。

そこで重要になるのがCDO(Chief Digital Officer)と呼ばれる、組織におけるデジタルの最高責任者の存在である。ITに関わる最高責任者としてはすでにCIO(Chierf Information Officer)、CTO(Chief Technology Officer)が存在しているが、これらとCDOの違いはなにか、デジタルトランスフォーメーションにおいてCDOはどのような役割を持っていくのかについて見てみる。

システム構築の視点から見たITとデジタルの違い

ここ数年、意識的にITのテクノロジーとデジタルのテクノロジーを区別して使う傾向が増えてきた。ITは業務効率化を目的として進化してきたテクノロジーだ。そして、ITを支えるプラットフォームは「メインフレーム」から始まり、導入コストや管理コストの削減を目的とした「クライアント-サーバ・システム」といったプラットフォームへと遷移していった。ITのテクノロジーで構築されるシステムは、組織が無駄なく効率的に管理・運用できるように、設計者や管理者の視点で設計されてきた。その一方で、システムの構築途中や構築後に仕様を大きく変更するとなると余分な時間や手間がかかり、場合によっては新たに設計し直す必要も出てくる。

これに対して、デジタルのテクノロジーで構築されるシステムもITを活用するが、UberやAirbnbのように、これまで存在しなかったビジネスモデルに対応するシステムの創造を目的としている。そこでは、利用するユーザーや顧客の視点でシステムが構築されるため、初めから世の中の動きに合わせて変更されることを前提に設計される。

企業はこれまで、ITシステムの構築や設計、管理、運用に関わる責任者としてCIOやCTOを育ててきた。しかし、システム構築の視点から見ると、ITとデジタルでは必要とされる人材のスキルやノウハウが異なるため、CIOやCTOではデジタルを統括することが難しい。デジタルの最高責任者となるCDOは、こういった背景から誕生した。

組織運営の変革でも必要になってくるCDOの役割

日本で早い段階でデジタルトランスフォーメーションを取り入れてきた外資系企業においても、当初はデジタルへの対応をCIOやCTOが兼務していた。ところが、デジタルに対応した事業やサービスが増えていくにつれ、社員のワークスタイルなど働き方にも変革が求められるようになってきた。

たとえば、従来のオフィスのように全員が決まった時間に出社してそれぞれが決められた机の前に座り、一斉に休憩をとるというスタイルでは新しい発想が生まれにくく、24時間365日顧客への対応が必要となるサービスの提供にも適さない。そのため、初期段階ではホットデスキング(特定の机を持たずに作業スペースを共有する働き方)やモバイルワーク、バーチャルワークによる柔軟な働き方が取り入れられてきた。

しかし、最近になって毎日出社した方が従業員間の連携が強化され、創造性が高まるとの理由から、逆にモバイルワークやバーチャルワークなどの在宅勤務制の廃止を決断する企業も増えてきた。そこには、デジタルによって組織がどのように変わっていくのかを想像できるCDOの判断も必要になる。

経営的視点の素養が求められるCDO

CDOの役割は、デジタルに対応したシステム構築や設計に関わるだけなく、組織の判断を統括的に行うことだ。さらに、外部企業とパートナーシップを結んでデジタルへの対応を促進したり、新ビジネスに取り組むためのエコシステムを構築するといったことも求められる。海外ではCDOは企業や政府、自治体などの組織において、デジタルのテクノロジーのみならず、デジタルに適応する組織の体質改善の責任者として重要な役割を果たしている。

これまでのビジネスプロセスでは、まずビジネス戦略を決めてからIT戦略を決めていた。しかし、デジタルの場合はビジネスと一体でITを活用した戦略を考えなければならない。こういったことから、欧米ではCDOに経営的視点の素養が求められ、最近の事例を見るとCDOからCEOになるケースも多いようだ。