クラウド化がもたらすビジネス革命

~IoT/データセンターの活用が新たな価値を生む~

CDOの役割と必要性(後編)

原稿:元田光一

海外ではCDO(Chief Digital Officer)を置く企業や組織がここ数年で増えてきた。日本国内でも、大企業やスタートアップなどでCDOを置く企業が徐々に表れている。とはいえ、グローバルな視点で見ると日本はCDOの設置に対してまだまだ遅れている。そんな中、ここではすでにCDOを設置している日本企業の先行事例を参考に、日本企業におけるCDOの役割と今後CDOが目指すべき姿について見てみよう。

なかなか進まない日本企業のデジタル対応

2016年に全世界の時価総額トップ2,500社に対して行われた調査によると、グローバルでは19%の企業がCDOを設置しているのに対し、日本企業は7%とまだまだ少ない*1。とはいえ、2015年は0%だったということなので、デジタルへの対応の意識は確実に上がってきているようだ。

そもそも、日本はIT化への対応は早かった。その理由の1つには、日本がIT産業自体を引っ張ってきたということも考えられる。このようにIT産業を牽引し、企業や組織のIT化へ素早く対応できた日本がデジタルへの対応について遅れている理由としては、日本企業の組織体質に課題がありそうだ。

日本企業のCEOも、デジタルへの対応の遅れについては危機感を持っている。しかし、すぐにアクションに移れない理由としては、不確実性が高い段階で意思決定を行うことに慣れていないからではないか。従来の日本企業における経営スタイルは、あらかじめ結果を予測しリスクを減らしてからアクションを起こしてきた。このプロセスは、IT化においては分かりやすい。システムを導入することでどの程度コスト削減になるのかが、あらかじめ計算できるからだ。

デジタル対応を加速するためのCDO

デジタル化における一番の目的は、新しいビジネスモデルを構築することである。そのため、事前に予測できるのは、どのくらいのコストをかければどのくらいの売上が見込めるだろうという、不確実なデータだ。

こういったデータを予測するのはマーケッターの役割であり、最近では組織内にCMO(Chief Marketing Officer)を設置するケースも増えてきた。CDOの役割にはCMOとしての仕事も含まれ、古い考えを持つ経営者にデジタルによってどのようなビジネスモデルが構築でき、どのくらのコストメリットが得られるのかを説明しなければならない。

ある外資系製造業の例を見てみよう。この会社はもともと開発力が高いため、いいものを作れば売れるというマーケティングを行ってきた。しかし、デジタルの時代においては開発力だけでは通用しないという危機感を持ち、外部からCDOを雇い入れた。そこで、CDOはまず経営層を始め全社員にデジタルについての教育やトレーニングを行い、いいものができたから売るのではなく、顧客の声を拾って商品開発に活せる企業に変革していくことに注力している。

もう1つ、銀行の例を見てみよう。日本のメガバンクは、ATMやオンラインシステムの構築など、古くから顧客にサービスを提供するためのIT化を進めてきた。しかし、世の中にFintech(フィンテック)が広まりブロックチェーンが普及していく中で、デジタルへの対応を進めていかなければ10年後にはなくなっているかもしれないという不安を感じている。そこである銀行では、AIが簡単な質問に応える顧客向けサービスを導入したり、人型ロボットを店頭に置いて多国語で接客させるなど、これまでのIT化とは別のアプローチでのIT化を進めるための人材として、新たにCDOを設置することにした。

組織運営でも重要な枠割を持つCDO

このように、日本企業におけるCDOの役割は、従来からのITの責任者であるCIO(Chierf Information Officer)、CTO(Chief Technology Officer)では務まらず、CMOが引き継ぐにしてもITの力を十分に生かすデータセンターやクラウド活用に関する知見を深めなければならない。

とはいえ、社外からCDOの人材を確保する際にも課題がある。現在デジタルを支えているのは若い世代が多く、そういった人材を受け入れる場合には、若くてもきちんと権限を持たせるといった柔軟な対応も必要になってくるだろう。

*1:「2016年、グローバルでCDO(Chief Digital Officer)を設置している企業は19%」(PwC)