クラウド化がもたらすビジネス革命

~IoT/データセンターの活用が新たな価値を生む~

デジタルトランスフォーメーションの中で
日本はどう世界と戦っていくのか(後編)

原稿:元田光一

世界経済は数年前から長期停滞局面に入っていると見られている。その一方で、今まさにデジタルトランスフォーメーションによる第4次産業革命が起きようとしており、新しい投資の機会が爆発的に増えつつあると見られている。デジタルトランスフォーメーションを支える最新テクノロジーの一つがIoTであり、日本も積極的に導入を進めている。では、具体的にどうIoTを活用すれば、日本は世界と戦っていけるのだろうか。

ものづくりも量から質の時代へ

戦後、日本企業は規模の拡大を追いかけてきた。生産台数や売上高、従業員数を年々増やし、企業規模を拡大していくことが企業の成長であると長らく考えられてきた。ところが、国内外の経済が停滞局面に入ると、もはや規模を追いかけるには限界があることが分かってきた。そこで、日本でも最近は規模ではなく、質を追いかけようとする企業が徐々に目立ってきた。

一例として、ロータリーエンジンなどユニークな技術を開発してきた自動車メーカー、マツダを見てみよう。マツダはトヨタ、日産と比べると自動車産業の中では中規模の会社だ。マツダはリーマンショックによる打撃を受けると、これまでのように大手企業を追いかけて全体の販売台数増加を重視する戦略に転換を強いられた。そして、今後は高価格だけど高性能な車の販売や、顧客満足度の向上で生涯に渡って選ばれる車づくりにより一層力を入れることにした。現在、2016年から3か年計画で進めている「質的成長とブランド価値向上」を目指す現場改革の最中だ。

世界と戦ってきた自動車産業

自動車産業は、今後日本が世界でどのように戦っていけばよいのかのヒントも与えてくれる。日本では長らく、9社もある自動車メーカーが競い合って新技術を開発し成長してきた。そして、世界のマーケットでも、高性能な日本製自動車というブランドを築き上げてきた。その強みは技術力だけでなく、ガソリン自動車に使われる約2万点の部品を、下請け工場や小さな町工場までをも組織化することで一気通貫で製造できることにもある。しかし、将来EVの時代になれば部品点数が減り、自動車もパソコンのようにコンポーネント型の部品を組み合わせて製造されるようになるかもしれない。そうなると、製造の分野での優位性は失われていく。

一方、自動車産業における日本の研究開発力は依然として高い。日本企業がものづくりの分野で勝ち残ってきたのは、やはり開発力の強みがあるからだ。だからこそ、今後日本の製造業は規模ではなく質を上げることに力を入れ、研究開発立国への道を進むべきではないだろうか。

製造の負担を減らすIoT

前編で紹介したように、ものづくりの分野におけるIoTの活用として、「インダストリー4.0」や「インダストリアルインターネット」などの取り組みがある。これらによって、例えば工場の製造装置内に付けられたセンサーをネットワークに繋げることで、トラブルや部品の消耗などを検知する稼働監視が行われる。センサーからの情報はビックデータとしてリアルタイムにクラウドに吸い上げられ、マシントラブル時のアラート発信や故障予測などに使われる。

また、バーチャルとリアルの世界を融合する「デジタルツイン」という手法では、工場や製造装置、製品などに関わる物理的現象をそのままVR(バーチャルリアリティ)モデルで再現する。工場で動いている機械の動作を、遠隔のコンピュータ画面からリアルタイムに確認することもできる。このように、IoTを積極的に取り入れることで生産性が上がれば、人材をはじめとするさまざまなリソースを研究開発へシフトしていくことができる。メードインジャパンではなく、クリエイティブインジャパンに誇りを持てる国になるのだ。