経営イノベーションフォーラム RPA時代の幕開け〜AI・ロボティクスにより異次元の生産性革命が始まる〜

「働き方改革」による生産性向上が大きな経営課題になる中、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)に対する期待が高まっている。RPAとは、人事や経理などのホワイトカラーの業務領域で、人の動きを真似て各種アプリケーションを操作するソフト/サービスを指す。これに、AIを組み合わせれば、高度な知的作業も代行することが可能だ。RPAとAIによって働き方改革はどう革新するのか。その答えを探るべく開催されたのが「経営イノベーションフォーラム RPA時代の幕開け」(主催:日経BP総研 イノベーションICT研究所、共催:KPMGコンサルティング)だ。同フォーラムには、有力なRPA・AIベンダー各社(日本IBM、Blue Prism、ナイスジャパン、RPAテクノロジーズ、UiPath、ペガジャパン)が協賛社として名を連ね、企業で導入する上での注意点や先進事例を紹介した。ここではその内容を概括したい。

基調講演1

定型作業の自動化で労働生産性を向上

新たな産業構造の実現にもRPAが貢献

労働生産性向上の切り札となるRPA

 名目GDP600兆円の実現に向け、新たな成長戦略を全方位で展開する日本政府。この取り組みの重要なカギを握っているのが、GDPの約75%を占めるサービス産業の生産性向上だ。「総務省・経済産業省の調査によれば、運輸、卸売・小売業、宿泊、飲食、医療、介護・保育などのサービス産業は、製造業に比較して労働生産性が低い傾向があります。GDP600兆円を目指す上では、これら産業の労働生産性をより引き上げていかなくてはなりません」と経済産業省の佐々木 啓介氏は話す。この問題は、中小企業や個人商店などの小規模サービス事業者において特に顕著であるため、政府でも中小事業者向けの設備投資支援策を組み込むなど、様々な取り組みを行っている。

 「もちろん日本全体の労働生産性を引き上げていくためには、中小企業だけでなく大企業も含めた取り組みが必要です。RPAは、そのための大きな切り札の1つとなると考えています」と佐々木氏は続ける。

 労働生産性の改善にあたっては、しばしばビジネスプロセスを抜本的に改革することが重要と説かれる。しかし、既存の業務を大きく変えていくとなると、現場からの反発を受けて思うように進まないこともあるだろう。「その点RPAには、現状のプロセスにそのまま導入しても、飛躍的な生産性向上を図れるという特長があります。このように現場にも受け入れやすいアプローチを取ることで、生産性向上に向けた活動を着実に進められます。また、ロボットに定型的な仕事を任せることで、人はもっと付加価値の高い仕事に注力できるようになるでしょう」と佐々木氏は説明する。

 労働人口の減少が大きな社会問題となる中、日本では一人ひとりの働き手が持つ力を最大限に発揮できる環境づくりが急務だ。RPAの活用は、まさにこうした方向性とも合致する。

RPA×先端技術でイノベーションの創出へ

 さらに経済産業省では、2030年代を見据えた新しい産業構造のロードマップを描く取り組みも推進中だ。ここでは第4次産業革命を支える新技術、具体的にはAI、ロボット技術などを活用することで、国内外の社会問題解決や日本の経済成長につなげていくことがテーマとなっている。

 「一人ひとりの真のニーズに即した新たな製品やサービスが生み出される。そして、それを安く、欲しいときに、安全に、環境にも優しく入手・利用することができる。こうした産業構造を実現するための重点分野の一例として、『AI 次世代型ロボット』『スマートサプライチェーン』『スマートバイオ』の3点が挙げられると考えています」(佐々木氏)

 これらはいずれも社会問題解決に大きな効果が見込める技術である上に、日本の強みが存分に発揮できる分野でもある。ただしその一方で、国際的な競争も激しいため、日本の強み・弱み・課題の整理も行っているという。「例えばAI次世代型ロボットでいえば、手足となるアクチュエーターやセンサーは強いが、神経や脳に相当するOS、ディープラーニング技術などは一層の強化が必要といった具合です」と佐々木氏。各分野の技術にRPAを組み合わせることで、新たなイノベーション創出の可能性も拡がっていくことになるはずだ。

特別講演
「コグニティブ」が拓く次世代ビジネスとは

IBM General Manager Computer Services Industry Matthew Friedman氏

 IBMでは、AIプラットフォーム「IBM Watson(以下ワトソン)」などの技術を活用して、「コグニティブ・コンピューティング」の実現を目指す活動を展開中だ。同社のMatthew Friedman氏は「様々な振る舞いを自ら学習して意味を見出し、人の高度な知的処理を支援していくことがコグニティブ・コンピューティングの役割。膨大な構造化/非構造化データの中から有用なシグナルやパターンを発見し、新たな価値創出へとつなげていくことが可能になります。これによりビジネスのあり方も、今までとは大きく変わることになります」と説明する。

 その一例として紹介されたのが、RPAとワトソンを金融業に適用した場合の業務シナリオである。

 「例えばクレジットカード作成を望む顧客に対し、ワトソンは相手の感情に配慮した対話を行いつつ、適切なガイダンスを提供。自社のビジネスルールや顧客維持戦略も踏まえて、最善と思われる提案を行います。さらに契約手続きが開始されたら、今度はRPAが様々な業務システムを駆使しながら自動的にバックエンドの業務プロセスを遂行。その後の顧客体験の評価や、より良い提案、アクションを行うための分析なども行えます」とFriedman氏は説明する。

 もちろん、こうした環境を実際に作り上げていく上では、様々な先端技術や業務改革のノウハウが必要になる。「このためRPAやAIの活用を進めていく際には、高い専門知識を有する企業とパートナーシップを組むことが重要」とFriedman氏。IBMは企業の業務変革をグローバルで支えてきたKPMGの知見を高く評価。今後は両社の協業を深め、顧客企業の課題解決を支援していく考えだ。

事例講演
3つのステップでRPAの短期導入に成功

SMFLキャピタル クオリティ部 マスターブラックベルト 秋重 和成氏

 三井住友ファイナンス&リースグループであるSMFLキャピタルは、わずか3カ月間でRPAの実導入に成功した。同社の秋重 和成氏は「前回の本セミナーでRPAを知り、ぜひ自社でも実践してみたいと考えたことが導入のきっかけです。まだ国内事例も少なく苦労しましたが、何とか運用にまでこぎつけられました」と説明する。

 具体的な展開ステップは「導入検討」「ソフトウエア選定」「パイロット」の3フェーズ。「まず社内で簡単なプロトタイプを作り、RPAに対する理解を深めてもらいました。実際に自動化された作業を見てもらうことで、導入に向けた合意形成をスムーズに進められました。また、ソフトウエア選定では、直感的に操作が可能な製品であること、社内システムと柔軟に連携できること、拡張性にも優れていることなどを重視しました」と秋重氏は話す。

 さらにパイロットでは、その後の全社展開も見据えた上で、組織体制/運営プロセスの構築を実施。秋重氏は「RPAは一度導入すれば終わりというわけではありません。業務プロセスの変化に社内で対応できる体制が必要です。そこで営業や事務部門の担当者を推進役としてアサインすると同時に、その人たちへのサポートを提供する支援チームも設置しました」と説明する。こうした取り組みの結果、社内各所からも高い評価を得られたという。

 今回の取り組みでは「RPAで達成したいことを明確にする」「パイロットにより成功パターンを見つける」「成功パターンを素早く展開する」の3点が大きなポイントだったと語る秋重氏。今後もRPAの導入効果を拡げるべく、様々な業務への適用を進めていく考えだ。
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