CASE STUDY VOL1 : セブン銀行 ビジネスを支えるシステム基盤をクラウドへ移行

ATM (現金自動預払機)の手数料収入を収益の柱にするという、過去に類を見ないビジネスモデルで急成長したセブン銀行。同社が、さらなる成長を求めてデジタルトランスフォーメーションに乗り出している。この戦略を支えているのが、最新のクラウドサービスだ。新たなアイデアを早期に事業化するために、ビジネスを支えるシステム基盤をクラウド上に移行しはじめているのだ。伊藤元重氏が、同社で執行役員システム部長を務め、IT戦略を統率する小山敬氏に話を聞いた。

CASE STUDY VOL1 : セブン銀行 ビジネスを支えるシステム基盤を
クラウドへ移行

ATM (現金自動預払機)の手数料収入を収益の柱にするという、過去に類を見ないビジネスモデルで急成長したセブン銀行。同社が、さらなる成長を求めてデジタルトランスフォーメーションに乗り出している。この戦略を支えているのが、最新のクラウドサービスだ。新たなアイデアを早期に事業化するために、ビジネスを支えるシステム基盤をクラウド上に移行しはじめているのだ。伊藤元重氏が、同社で執行役員システム部長を務め、IT戦略を統率する小山敬氏に話を聞いた。

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ATM 事業以外の新たな柱を創出することが経営課題

東京大学 名誉教授
学習院大学 国際社会科学部 教授
伊藤 元重 氏

伊藤 セブン銀行は、ATM (現金自動預払機)の手数料収入を収益の柱にするという新しいビジネスモデルで大きな成功を収めています。小山さんの目から見て、成功の鍵は何だと思ってらっしゃいますか。

小山 ビジネスに技術革新をいち早く取り入れるという風土が成功の源泉になっていると考えています。セブン銀行には3つの経営理念があるのですが、その2番目には「社員一人一人が、技術革新の成果をスピーディーに取り入れ、自己変革に取り組んでいきます。」と記されています。当社では、全社員に経営理念が記述されたカードを配布しています。常に経営理念を意識した行動をとってもらうためです。

主にセブン-イレブンの店舗に設置している ATM もお客様のニーズに基づいて、新しい技術を活用した独自の開発を続けています。現在は3代目の ATM が稼働しています。

伊藤 経営環境の変化が激しい現在、どのような企業も何らかの課題を抱えているのが現実です。セブン銀行でも、何か経営課題になっているようなことはあるのでしょうか。

小山 2017~2019年度の中期経営計画にも掲げていますが、ビジネスの多角化を課題だと位置付けています。

これまではセブン-イレブンの店舗数の拡大に伴って収益が伸びてきましたが、ATMの利用件数の伸びは徐々に鈍化しています。セブン銀行の成長のサステナビリティー(持続可能性)を担保していくためには、新たに事業の柱を創出することが必要だと考えています。

セブン銀行が2017年5月に公表した中期経営計画では、「本業を伸ばしつつ事業の多角化を実現」することを基本方針として掲げている。ここでいう本業とは、日本全国に設置している2万3000台以上の ATM を通じた ATM プラットフォーム事業だ。現状、全体に占める決済口座事業および海外事業の収益は合わせて14%程度であり、8割以上が ATM プラットフォーム事業からの収益となっている。今後3年間で決済口座事業と海外事業を合わせて、25%程度にまで拡大することを目標としている。

新たなアイデアをいち早く事業化することが勝利の鍵に

伊藤 現在、金融業界では最新のデジタルテクノロジーを活用して新たなサービスやビジネスモデルを立ち上げる FinTech が大きな注目を浴びています。セブン銀行の新事業でも、デジタルテクノロジーの活用が競争力の源泉となるのでしょうか。

セブン銀行
執行役員 システム部長
小山 敬 氏

小山 フルバンキングサービスを提供している銀行と違い、セブン銀行には一般の銀行のようなお客様と接する支店がありません。当社では、ATM やインターネットが主要なお客様接点となります。それだけに、一般的な銀行に比べてデジタルテクノロジーの活用が重要なテーマだと考えています。当社でも現在、AI (人工知能)やブロックチェーンなどの最新テクノロジーには注視しています。

ただし、最新テクノロジーを活用する上では、これまでにはない留意点があると感じています。それは、新しいサービスやビジネスモデルを立ち上げられたとしても、競合他社が追随するのが容易だということです。

当社に限りませんが金融業界では、これまでお客様へのサービスを支えるシステムをオンプレミス(社内運用)の形で開発・運用してきました。ソフトウエアも、ほとんどが自前で組み上げたものです。こうした形態であれば、他社が同じようなサービスを立ち上げるまでに、大きな時間とコストが必要なので、先行者利益を得られる期間が長かったのです。

しかし、現在は AI をはじめとする最新テクノロジーがクラウドサービスとして提供されるようになりました。これを利用すれば、新しいサービスを短期間で立ち上げることが可能です。しかも、オンプレミスに比べて初期費用が圧倒的に安い。新しいサービスの起点となるアイデアを創出できるか否か、さらにそれをどれだけ早く事業化できるかが勝利の鍵を握るようになってきたと思っています。