CASE STUDY VOL2 : コマツ 建設現場のICT化で顧客の生産性向上に貢献

建設機械大手のコマツが2015年から提供を開始した「スマートコンストラクション」は、建設現場の生産性を飛躍的に向上させ、日本が抱える建設労働力不足をICTで解決するソリューションだ。建機の生産・販売を主力とする同社がなぜ、このような新サービスに乗り出したのか。伊藤元重氏が、スマートコンストラクション推進本部のシステム開発部を率いる赤沼浩樹氏に、同社のイノベーション戦略やデジタルトランスフォーメーションに関する取り組みなどの話を聞いた。

CASE STUDY VOL2 : コマツ 建設現場のICT化で顧客の生産性向上に貢献

建設機械大手のコマツが2015年から提供を開始した「スマートコンストラクション」は、建設現場の生産性を飛躍的に向上させ、日本が抱える建設労働力不足をICTで解決するソリューションだ。建機の生産・販売を主力とする同社がなぜ、このような新サービスに乗り出したのか。伊藤元重氏が、スマートコンストラクション推進本部のシステム開発部を率いる赤沼浩樹氏に、同社のイノベーション戦略やデジタルトランスフォーメーションに関する取り組みなどの話を聞いた。

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> CASE STUDY Vol.2:コマツ

顧客企業の現場で稼働する建機をリアルタイムでヘルスモニタリング

東京大学 名誉教授
学習院大学 国際社会科学部 教授
伊藤 元重 氏

伊藤 日本で IoT(モノのインターネット)が注目され始めた2~3年前には、必ずといっていいほどコマツの「コムトラックス」が先進事例として取り上げられていました。まずは、これを開発した経緯をお聞かせください。

赤沼 コムトラックスは、建機に取り付けた GPS (全地球測位システム)や各種センサーから情報を当社のデータセンターに集約し、稼働状況をリアルタイムでモニタリングするシステムです。どの建機がどこにあって、エンジンが動いているか止まっているか、燃料がどれだけ残っているのかといったことが把握できるようになっています。コマツのセンターだけでなく、お客様や代理店も稼働状況を知ることができます。遠隔地からエンジンを停止することも可能です。

コムトラックスを開発したきっかけはヘルスモニタリングです。施工現場で使われる、お客様の生産財ですから“健康状態”を常に把握し不具合や故障を未然に防止すること、また故障した際に即座に原因箇所を特定して修理することが目的でした。GPS で建機が稼働している場所もわかりますのでサービスマンも即座に現場へ向かうことが出来ます。また、「お客様への様々な提案が出来るのではないか」などの付加価値が生まれると判断しました。一方で、1990年ころに建機の盗難が多発していて、盗難に遭った際に建機の場所が特定できますので盗難防止にも役立ちました。

実用化にこぎついたのは1998年です。当社にとってもお客様にとっても価値のある新しいサービスが提供できると考えて、2001年に標準装備としました。

顧客企業が建機の導入・運用する際、導入時の初期コストよりも修理・保守コストが大きな負担になるという。コムトラックスを利用すると、オイルやフィルターなどの交換時期を予測して故障に至る前に保守を行う「予防保全」が実現できる。何らかのトラブルが発生した場合でも、コマツ側で状況や場所が把握できているので、早期に回復することが可能だ。赤沼氏は「お客様の現場を止めないことが、コムトラックスが創出した新たな価値」だと語る。さらに、燃料消費量や CO2 排出量などの情報を基に、省エネ運転を提案するという新サービスの提供にも乗り出している。

「スマートコンストラクション」で顧客企業の生産性向上に貢献

伊藤 現在、コマツの顧客となる建設業界では労働者不足が深刻な問題になっています。コマツのビジネスにも影響はあるのでしょうか。

コマツ
スマートコンストラクション推進本部
システム開発部
部長
赤沼 浩樹 氏

赤沼 建設業界では、10年後に130万人の労働者が不足すると予測されています。お客様の業績が伸びなければ建機を買っていただけませんから、当社にも大きな影響があると考えています。こうした課題の解決に貢献するために、生産性を向上していただく施策を打ち出しています。その代表例が、2015年から提供を開始した「スマートコンストラクション」です。

スマートコンストラクションでは、建機からの情報だけでなく建設現場にある全ての情報を管理しています。ドローンで測量した建設現場の 3 次元情報や、設計図面や施工状況、建機の稼働履歴など、あらゆるデータをクラウド上のシステムに蓄積します。

伊藤 建設現場を仮想空間上に再現するわけですね。

赤沼 まず、完成地形を 3D データ化します。そのデータを「ICT 建機」に読み込ませて建機を使った溝堀や整地作業の際に刃先を自動制御する仕組みです。 ICT 建機は、刃先を数センチ単位でコントロールすることが可能になっています。

このほかにも、どのような機材をどれだけ投入すればよいのかといった計画も立案します。例えば、ブルドーザーで土を削っていっても、それを現場から持ち去るダンプカーが足りなければ、作業は進まなくなってしまいます。こうした計画は通常、現場監督さんが立案しているのですが、多数の現場経験を積んだ現場監督さんでないとなかなか高精度な計画を練るのは容易ではありません。スマートコンストラクションでは、建機での作業を自動化するだけでなく、ベテランの現場監督さんの思考を「見える化」することにも取り組んでいます。