ここまで来た! 農業×IT(後編)農家が目の当たりにして実感した
自動飛行ドローンのすごさ

  • Writer : MOTOKI HONMA
  • Data : 2018/1/31
  • Category : 業務改革

前編ではドローンを活用して、農薬・肥料の散布を行い、稲の育成診断などを行うナイルワークスの農業用ドローンを活用したソリューションを紹介した。露地栽培では実現が困難なスマート農業を実現するこの技術、いよいよ今年6月から試験販売が開始されるが、これまで実際の農場で実証実験が行われてきたようだ。そこで今回は実験に参加した農家にドローンの印象について話を聞いた。

自動飛行のドローンは
人間が操作するものとはまったく別物

大越農場 代表
大越一雄さん

上野駅から普通列車で約1時間半。自治医大駅は栃木県下野市に位置するJR東北本線(宇都宮線)の駅である。駅前は、ロータリーが整備され、周辺には新しい住宅も見られるなど、新興住宅地の雰囲気が漂うが、駅を降り、西へ10分ほど歩けば、のどかな田園風景が眼前に現れる。

今回、取材に伺った大越農場の大越一雄さんは、この土地で比較的大きな規模の農業を行う農家だ。作付面積は米と麦合わせて約80ha(東京ドーム約17個分)で、奥さんと息子さん夫婦の4人を中心に、安心で美味しい米作りに勤しんでいる。

そんな大越農場では、一昨年の夏から本稿の前編で紹介したナイルワークスのドローンの実証実験に協力。農場の一部でドローンによる農薬散布や稲の育成状況のモニタリングが実際に行われたという。

はじめて同社のドローンを目にした時のことを、大越さんは次のように振り返る。

「ナイルワークスさんのドローンを初めて見たのは、『全国稲作経営者会議』(大越さんが前会長を務めた組織で、現在は理事を務めている)で知り合った宇都宮大学の教授の紹介で、大学の付属農場で行われた実演会の場でした。それ以前に人が操作する農薬散布用のドローンを見る機会があったのですが、そこではドローンのエキスパートの方が操作していました。それは見事な腕前でしたけど、『こんな芸当は自分にはできないし、長時間操作するのが難しいだろう』という印象でした。でも、こちらのドローンは自動で、まるで田んぼの上に見えないレールが張り巡らされていて、その上を走っているかのように正確かつ計画的に飛んでいる――。人間が操作することのいい加減さというか、限界を思い知らされましたね」

田んぼの上をドローンが飛んでいる様子

そして「このドローンは今後農業を変えるだろう」と直観し、実証実験に参加。昨年は約16haの田んぼで実験が行われた。

「例えば、従来のようなラジコンヘリなどによる農薬散布では、場所によって散布量の多寡が出たり、折り返しの際などに重複して散布してしまったり、どうしても無駄が出てしまいます。でもドローンなら正確無比に必要なだけ均一に散布することができる。このことは農薬に関するコストを削減できるだけでなく、農薬の重複散布がなくなることを考えると、食の安全性においても大きな意味を持つと考えられます」

実験を目の当たりにして、まずドローンの無駄がなく、効率的な作業に驚かされたという。

また、大越農場では現在、噴霧器を背負って農薬を散布する作業を行うというが、この作業は夏の炎天下ではものすごい重労働になる。これをドローンが代わりに行ってくれるのなら「本当に助かりますね」と大越さん。

さらに穂先から30cmのところを飛行して、農薬を散布するため、飛散がほとんどないことも実感。「ラジコンヘリなどで農薬散布をすると散布場所から結構離れていても匂いがするものですが、ドローンだと近くにいてもほとんど匂いはしませんでした」ということだ。