IT技術の発展で取り払われたテレワーク導入の障害――
それでも取り組まない企業に待ち受けている未来とは?

  • Writer : Motoki Honma
  • Data : 2017/10/23
  • Category : 業務改革

「iモード」「おサイフケータイ」の生みの親として知られ、現在はドワンゴ、セガサミーHD、クールジャパン機構など、様々な企業の取締役を務める夏野剛氏。IT経営戦略を専門に慶應義塾大学 政策・メディア研究科で教鞭を執る同氏にテレワークの現状と未来について聞いた。

テレワークが普及しない日本
その根源的な危うさとは?

テレワークについては、そのメリットが語られる一方で否定的な意見が囁かれ続けてきた。「面と向かって話さないと意味が伝わらない」「チームワークが高まらない」等々――。

しかし、夏野氏は「この20年間のIT技術の進化によって、そのような課題はすべて取り払われ、テレワークを導入しない理由はなくなった」と強調する。

「例えば、現在提供されているテレカンファレンスツールの音声や画像のクオリティは一昔前に比べると非常に高くなっています。このようなツールを使えば、遠隔地間でも対面と同様のコミュニケーションが実現できます」

とはいえ、テレワークを導入している企業はまだ少数派。総務省の「平成28年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入していると回答した日本企業は13.3%。やはり導入が進んでいるとは言いがたい。夏野氏はこのような状況こそ、日本という国を象徴していると考える。

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授
夏野 剛氏

「1996年から2016年の20年間で日本のGDPは2%しか伸びていない。それに対し、同期間の米国のGDPの伸び率は129%。なぜ日本がこのような状況に陥っているかというと、世の中にこれだけ優れたテクノロジーがあって、様々なことを実現できる環境が整っているにもかかわらず、仕事のルールやビジネスの慣習など、会社の経営システムを一切変えず、テクノロジーを生かすことができなかった結果なのです。現在、日本企業で導入が進まないテレワークもまさにこれと同じ構図で、テクノロジーを活用して、通勤をなくせば、生産性が上がるのにそれをやらない――」

さらに夏野氏の経験上、日本のGDPが20年間でほとんど成長していない事実を知ると「本当に?」と驚く日本人が多いのだという。20年間で世界経済から取り残されてきたことに当の日本人が気付いていないから厄介なのだ。

しかし、その一方で「働き方を変革しよう」という機運が高まっているからこそ、いまがこの状況を打破するチャンスだとも強調する。

「『働き方改革』と言いますが、これは『改革』でなく『進化』と捉えた方がよい。進化を拒否したら戦うことはできません。新しい武器が手に入ったら、戦い方を変えなくてはいけないのです。現時点でテクノロジーを活用せずにビジネスを行うことは、相手が銃で攻めてきているのに竹やりで応戦しているようなもの。現在、様々なテクノロジーが開発され、日本にも入ってきています。それに合わせて企業は今まで常識だと思っていた社内ルールや経営手法を全面的に見直す必要があるのです。そして、その取っ掛かりとして取り組むべきことが、働き方改革であり、テレワークだと思っています。なぜなら、世の中的にも、技術的にも、実現しやすい状況にあるからです」

働き方や経営システム、ビジネスの慣習、仕事のルール等々――。いまあるテクノロジーを最大限に活用するため、日本企業は、こういったものを見直していかなくてはいけない。これをやらないと、今後の成長が望めないばかりか、気がつかないうちに危機的状況に陥ってしまうということだ。