テレワークはなぜ必要なのか?真のテレワーク時代到来の今、考えるべきこと~テレワークマネジメント代表取締役 田澤 由利氏(前編)

  • Writer : 野本 幹彦
  • Data : 2017/09/06
  • Category : テレワーク

時間当たりの生産性を評価基準とした給与体系

「これからは、長時間働く社員がいい社員ではなく、時間あたりの生産性の高い社員がいい社員である、と考え方を転換する必要があります」と話す田澤氏は、「最も生産性が高いのは、バリバリ残業する社員ではなく、保育園のお迎えに行く30分前のお母さん社員です。時間に制限がある人や切羽詰まった人ほど、効率よく仕事するように努力し、生産性が高くなります」と説明する。では、意図的に仕事時間を制限して残業禁止にすれば、生産性は上がるのだろうか。

「残業禁止だけを決めても、社員の給料が減り、逆に生産性が下がって、仕事が終わらない結果となるでしょう」と話す田澤氏は、「限られた時間で仕事をすること」を働き手のメリットにするため、「時間あたりの生産性」を評価基準とすることを提案する。残業すると評価が下がり、定時までに成果をあげれば評価が上がって給料も増えるようにすることで、生産性が向上するというのだ。実際に、ノー残業手当を実施したり、減った分の残業代をボーナスで還元する企業も増えてきているという。

しかし、ノー残業手当などの企業の対応は、テレワークや働き方改革を始める過渡期的な対応であり、企業は1~3年かけても給与体系や評価基準を変えていく必要があるという。現在、多くの企業では、成果+時間+人物像で評価を行っているが、これでは同じ成果を短時間で出している社員のほうが報酬が低くなる。田澤氏は、これを成果÷時間+人物像で評価し、時間管理を行って適切な評価を行う必要があると訴える。

時間当たりの生産性を評価基準としたときの企業のメリット

「企業にとっては、時間当たりの生産性を向上させるだけでなく、優秀な人材を確保することが重要です。そのためにも、テレワークを使って、子育てや介護の問題を抱えた制約社員や外部の人材を活用し、地域に限らず優秀な人材を確保する必要があります。しかし、しっかりと時間管理して適切な評価を行わないと、せっかくの人材が辞めてしまう結果にもなりかねません。社員がモチベーション高く働ける環境とすることが重要です」と田澤氏は話す。

また、日本の労働環境に合わせたテレワーク導入を行うことも重要だと田澤氏は話を続ける。「米国は個人主義が進んでいますが、日本ではチームで働き、労働基準法という労働者を守る法律もあります。アウトプットや成果だけを求めて、成果が出ない社員は辞めさせるといったことは日本では許されません。また、成果ばかり求められたら、たとえば在宅でこっそりと夜中まで仕事をしてつぶれてしまう人も出てくると私は考えています。今後は、米国のテレワークのやり方を踏襲するだけではなく、日本型のテレワークを確立していく必要があるでしょう。長時間労働を是正するなら、やはり時間管理をすることが重要で、そのためにはICTを使ってどのような体制を整えていくかが重要となってきます」。

第2回では、引き続き田澤先生に、テレワークを実践する方法やICTの活用についてお話をうかがう。テレワークマネジメントでは、東京、北海道北見市、奈良の3つのオフィスをTV会議で常時接続したり、ネットオフィスを活用しながら、多くの社員が在宅でテレワークを実践しているが、その様子もうかがった。

第2回「先駆者に学ぶ 実践!テレワーク術」に続く

profile

テレワークマネジメント代表取締役 (兼 ワイズスタッフ代表取締役)
田澤 由利 氏

奈良県生まれ、北海道在住。上智大学卒業後、シャープでパソコンの商品企画を担当していたが、出産と夫の転勤でやむなく退職。子育て中でも地方在住でも仕事をしたいと、3人の子育てと夫の転勤による5回の転居を経つつ、パソコン関連のフリーライターとして自宅で働き続けた。
1998年、夫の転勤先であった北海道北見市で「在宅でもしっかり働ける会社をつくりたい」とワイズスタッフを設立。さまざまな業務を受託し全国各地に在住する110人のスタッフ(業務委託)とチーム体制で業務を行っている。
2008年には、柔軟な働き方を社会に広めるために、テレワークマネジメントを設立。東京にオフィスを置き、企業等へのテレワーク導入支援や、国や自治体のテレワーク普及事業等を広く実施している。同年、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2009」リーダー部門7位に選出。
2015年 総務省「平成27年度情報化促進貢献個人等表彰」を受賞。
2016年「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」個人賞受賞。また自らも、場所や時間に縛られない柔軟な働き方である「テレワーク」に関する講演や講義をするほか、ブログやFacebook等で広く情報発信・普及活動を行っている。内閣府政策コメンテーター、総務省地域情報化アドバイザーなど。