走り始めたVRビジネスパートナーと描く理想の未来とは?

「VR元年」とうたわれた2016年。ゲームや娯楽映像が主導のためか、B2BにおけるVR活用は縁が薄いものと思われがちだが、ビジネス創出につなげる動きも出てきた。NTTドコモは2016年度第3四半期決算説明会(2017年1月27日)で新たなサービスの1つとしてVRの可能性に言及。次世代通信技術の5Gと連動しながら、積極的にVR活用を推進する姿勢を明らかにした。ここで鍵を握るのが、パートナー企業との

5Gとの連動でこそ生まれる未来のVR体験

――NTTドコモの法人ビジネス部門として、現在のVRに対する取り組みを教えていただけますか。

望月氏 まずは夏に開催された「ツーリズムEXPOジャパン2016」という世界最大級の観光イベントでの活用が挙げられます。福岡ブースにて、市内を周遊するオープントップバスや那珂川のリバークルーズ、柳川の川下りや久留米のワイナリーなど、福岡周辺の観光スポットの雰囲気をヘッドマウントディスプレイ(HMD)で体感してもらう、というものです。

 このようなイベントは高齢者や子ども、外国人も多く、なかなかHMDは操作しにくい面があります。そこでVRに強いベンチャー企業のクロスデバイス(静岡県浜松市)と弊社のR&D部門が協業して開発した、タブレットを使ってHMDを操作することが可能なアプリケーションや、HMDを覗き込んで画像を見つめるだけでVR動画が再生されるアプリケーションを試験的に活用していただきました。これはVRをより使いやすく、誰でも使えるようなVRシステムを開発した事例になります。

 続く秋の「ジャパンウォーク in Tokyo/2016秋」では、サブ会場となっている体育館でのイベントの様子を弊社のLTE通信網を使ってHMDにリアルタイム配信するトライアルを実施しました。ここでの狙いは「実際にその場にはいないのに、あたかもその体育館で観客としてスポーツを観戦しているかのような」体験提供です。まさにNTTドコモらしい実証と言えるでしょう。また2020年の東京オリンピックの新種目となるスケートボードやクライミングの選手目線のVR動画が視聴できるHMDも展示され、そこでも弊社のR&D部門とクロスデバイスが協業して開発したアプリケーションが活用されています。

NTTドコモ法人ビジネス本部 法人ビジネス戦略部 2020・地方創生営業推進担当課長の望月 謙氏

NTTドコモ法人ビジネス本部 法人ビジネス戦略部 2020・地方創生営業推進担当課長の望月 謙氏

――2016年度は、全国的に自治体でも観光用途でVRを使われ始めたそうですね。

望月氏 はい。たとえば山形県大石田町様では、来訪してきた観光客向けに観光スポットのVR動画が視聴できるHMDを観光案内所に設置したり、VR動画をインターネットに配信したりして世界中の人々に大石田町の魅力を発信しています。

 また、かつての城をCGで再現するなどの手段としてVRをプロモーションに活用する自治体が増えてきています。我々法人ビジネス本部もまずは自治体向けにこれまでイベントなどで活用されたVRシステムを、弊社とクロスデバイスとの技術連携によってパッケージ化して提案する活動を始めており、自治体もVRの可能性に注目されて、現在は非常に多くの問い合わせをいただいています。

――NTTドコモでは2020年の実用化を目指して5Gに注力していますが、次世代通信技術とVR活用の連携はどのように考えているのでしょうか。

望月氏 スマートフォンの性能もやがては行き着くところまで行き、いずれは分散してクラウドで処理できる仕組みがないと、VRをはじめとする高精細コンテンツの再生ができなくなると考えられます。しかし現在の4G回線では、クラウドとスマートフォンをつなぐ道路としては全然細い。今は手の込んだVRコンテンツは大掛かりなパソコンとHMDのセットが必要ですが、そこから脱却してワイヤレスで手軽に高品質なVRを体験するためには、大容量・超低遅延・高速レスポンスの5Gが必須となるのです。

加藤氏 「なぜドコモがVRを手がけるのか」と聞かれることがありますが、5Gこそがバーチャル空間を生かすエンジンとなって、これまでにない体験や価値をもたらしてくれるからです。5Gが持つ特徴によって膨大な数のデバイスを距離に依存することなく低遅延で同時に利用することができるため、例えばWeb会議システムで地球の裏側を結んでも、よりリアルなコミュニケーションが可能になるはずです。そこにVRをかけ合わせることで、まさに5Gでしか成し得ないVRの価値が生まれます。

NTTドコモ法人ビジネス本部 法人ビジネス戦略部 2020・地方創生営業推進担当課長の望月 謙氏

NTTドコモ法人ビジネス本部 ソリューションサービス部 ソリューションデザイン 第二担当課長の加藤文彦氏

 現実的にはVRデバイスが進化してメガネほどの大きさになり、スマートフォンやクラウドからのVRデータを表示するデバイスとして機能する可能性もあると思います。これはVRデバイスのディスプレイ化を意味します。今後はIoTが発達し、至るところにアクセスポイントが存在するようになることで、デバイス同士で短距離通信さえできれば、5GによってリアルタイムにVRを利用することができます。いつでも好きなときに仮想空間に入れる、まさにSF映画の世界が現実のものとなるのもそう遠い未来ではないでしょう。だからこそ、NTTドコモがVRを手がける価値があるのです。

望月氏 今はコンテンツを一方的に体験するだけですが、相手がいて双方向でコミュニケーションしたり、作業をしたりするような仕組みを作る構想もあります。この春以降、法人部門以外からもさまざまな企画が予定されており、NTTドコモグループで連動してVRに注力していきます。今後もワクワクするようなプランが出てくると期待してください。

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