「山手線チェックイン」と次世代アイデアのマッシュアップアプリコンテストから見えたビーコン活用の可能性とは?

2017年2月20日、JR東日本とNTTドコモが共同で「山手線ビーコンを使ったアイデア・アプリコンテスト」発表会を開催。会場となったさいたま市にある「鉄道博物館」では、一次審査を通過した5チームが熱戦を展開した。関係者の言葉とコンテストのレポートを軸に、ビーコン活用の新たなヒントを探る。

パートナーとコラボレーションしながら新しい未来を作っていく

 東京都区内を一周する山手線は、日本で最も有名な鉄道路線の1つ。その山手線の全車両に、音波ビーコンが設置されているのをご存知だろうか。現在、音波ビーコンを活用し、JR東日本とNTTドコモが共同で「山手線チェックイン」サービスを展開中だ。本サービスにはNTTドコモの位置検知ソリューション「Air Stamp」が利用されている。

 2016年11月1日、両社はこのプラットフォームを法人向けに開放した。日本一の延べ利用者数(週間で約1800万人)を誇る山手線車内の乗客に対し、コンテンツ情報やクーポンなどを直接スマートフォン(スマホ)やタブレットに配信できるメリットは大きい。これまでにコーエーテクモゲームスが「真・三國無双 for スゴ得 山手線チェックイン」のサービス名で各駅にちなんだレアアイテムの配布を行うなど、実際の活用例が出始めている。

 この動きをさらに加速させる狙いで、プラットフォーム開放と同時に発表したのが「山手線ビーコンを使ったアイデア・アプリコンテスト」だ。“山手線をもっと楽しくするアプリ”をテーマに掲げ、法人を対象として2016年11月から応募を開始。2017年1月〜2月にかけての一次審査を経て最終的に5チームが選出され、2017年2月20日の発表会に臨んだ。

会場となった鉄道博物館のデジタルサイネージ

会場となった鉄道博物館のデジタルサイネージ

 アプリコンテストに先立ち、2016年12月3日にはアイデア部門のアイデアソンを開催した。アイデアソンでは、山手線車内を仮想の図書館に見立て、車両ごとに異なるテーマのコンテンツが楽しめる「山手線 図書館アプリ」が最優秀賞、山手線に乗車すると毎朝異なる朝ドラマを楽しめる「山手線 朝ドラ」、偶然同じ車両に居合わせた知り合いとコミュニケーションが取れる「同両会」の2つが優秀賞を獲得した。

 準備段階からアイデアソンとアプリコンテストに携わってきたNTTドコモスマートライフ推進部 アライアンス推進 アライアンス担当の鈴木宏明氏は、アイデアソンをこのように振り返る。

 「アイデアソンは非常に盛り上がりました。その場で初めて出会い、即席でチームを組んだにもかかわらず、生まれたアイデアをブラッシュアップしてコンテストに応募した例もありました。アイデアソンとコンテストは別物だと考えていたのですが、非常にいい流れができたと思います」(鈴木氏)

 今回、NTTドコモはAir Stampのさらなる活用促進の目的で、NTTドコモ・ベンチャーズとタッグを組んでコンテストの運営を進めてきた。NTTドコモ・ベンチャーズはベンチャー企業やスタートアップに太いパイプを持ち、アイデアソン/ハッカソンに豊富なノウハウを持つ。主催するイノベーション創出プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」では、5G、ドローン、IoT、AI、VR、自動運転ほか、次世代を担うテクノロジーを核として日常的にイベントを開催している。NTTドコモ・ベンチャーズ ディレクターの北周一郎氏は、同社の姿勢をこう語る。

 「これまでも、オープンイノベーションに資することに積極的に関わってきました。 NTTドコモの各部署に対し、ベンチャー企業やスタートアップとの接点や、アイデア創発の機会を提供しています。今回のコンテストもその一環です。外部の知見を取り入れると、普段とは違うビジネスが生まれる可能性がありますから」(北氏)

NTTドコモスマートライフ推進部 アライアンス推進 アライアンス担当 鈴木宏明氏(左)、NTTドコモ・ベンチャーズ ディレクター 北周一郎氏(右)

NTTドコモスマートライフ推進部 アライアンス推進 アライアンス担当 鈴木宏明氏(左)、NTTドコモ・ベンチャーズ ディレクター 北周一郎氏(右)

 最優秀賞1チームには2017年度で最大半年間、商用環境における山手線チェックインサービスの無償提供及びプロモーション支援が賞品として与えられる。優秀賞2チームの賞品はそこからプロモーション支援を外したものになる。単に賞金や物品ではなく、プラットフォームの無償提供を約束したところからも、今回のコンテストに対する NTTドコモとJR東日本、両社の期待の大きさが伝わってくる。

 ビーコンの活用法としてすぐに思いつくのが、無料クーポンの配布や店舗情報のプッシュ通信だが、「これら当たり前の発想を超えるアイデアを外部から提供してもらい、我々とコラボレーションしながら新しい未来を作っていく」(北氏)ことが目指す1つのゴールだ。

 この言葉に象徴されるように、 NTTドコモでは前向きに外部パートナーとコラボレーションしていくビジョンを持っている。では一体、どのようなパートナーを求めているのか。

 鈴木氏は「“新たなドコモのイメージ”を作ってくれるようなベンチャー企業と仕事をしたいですね」と話してくれた。そして、ハブを担う北氏は次のように続けた。「今の時代、コラボレーションしながらお互いを高めていくことが必須です。 NTTドコモでは、対等な形で連携していくことを常に意識しています。ぜひ、こうした取り組みを継続していきたいと考えています」(北氏)。次ページからは、各チームのプレゼンテーションの様子を紹介する。

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