食の未来を変える5Gサービスを探せ!発想力に満ちた実りあるアイデアソンを開催

 次世代通信規格としてNTTドコモが開発を進める「5G(第5世代移動通信システム)」。今まで以上の高速・大容量通信、多端末同時接続など可能になるが、一体どんなサービスに利用すればよいのだろうか。この課題に対して、NTTドコモ・ベンチャーズのオープンイノベーション促進プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」は、その活動の柱であるコミュニティ活動で定期的に開催している農業ビジネス勉強会(座長:菊地護氏〈儲かる農業勉強会代表〉)を拡大して、アイデアプラント代表の石井力重氏を招いたアイデアソンを実施。農業や流通、ITの専門家・従事者、ドコモグループの社員などが集まり「5Gと食品流通」をテーマとした新たなアイデアの創出にチャレンジした。

光るアイデアは、平凡なアイデアを出し切った先にある

NTTドコモ法人ビジネス本部 法人ビジネス戦略部 2020・地方創生営業推進担当課長の望月 謙氏

アイデアプラント 代表 石井力重氏

 アイデアソンの開催に先立ち、石井氏は導入として「発想の特性」を解説した。石井氏は「たくさんの人がいれば多様な考えが出ると思いがち。しかし、実際は多くの人が初めに思いつく考えはよく似ている」と指摘する。このように、誰もが思いつきやすい初期のアイデアを、現代の創造専門家の1人であるフレドリック・ヘレーンは「アイデアメーション」と呼ぶ。これは「アイデア」+「インフォメーション」の造語で、「すでに頭の中にある情報に、アイデアの体をまとわせただけの発想」と石井氏は解説する。

 アイデアメーションは知識や経験を得るほど起きやすくなる。そのため、初めに思いつくものは平凡であっても、とにかく限界まで出し尽くすことが重要となる。なぜなら、思いつくものは何でも出さないとアイデアの出口を塞いでしまうからだ。石井氏は「アイデアを出し尽くしたという感覚は、『もう少しで独創的なアイデアに手が届く』というシグナルだ」と諭す。

 その後NTTドコモ・ベンチャーズ 大前浩司氏による5Gの特徴説明を挟み、いよいよアイデアソンがスタートした。まずは、アイデアを醸成させる「三人ブレスト」を実施。今回は、近くにいる3人でお互いのアイデアを6分間議論し合い、メンバーを変えたらまた議論するという行程を3回実施した。短い時間ながら、それぞれが濃密かつ活発な議論に花を咲かしているのが印象的だった。

 ブレストの最中、石井氏は「プレイズファースト」という考え方を提案した。プレイズは「褒める」ことで、「アイデアを聞いたときにボジティブな意見とネガティブな意見が思いついたら、褒める=ポジティブな意見を話そう」というものだ。

NTTドコモ法人ビジネス本部 法人ビジネス戦略部 2020・地方創生営業推進担当課長の望月 謙氏

三人ブレストの様子

 この考え方は、アイデアソンのようにゼロからアイデアを育てる際にはとくに大事で、これにより2つのメリットが生まれる。1つは「話しやすい場の雰囲気が作れる」こと、もう1つは「人のアイデアの良いところを探すと、本人にも利得がある」こと。肯定的な心理を繰り返すと自分自身のクリエイティビティも刺激されるため、自分のアイデアが出ないときは「人のアイデアの良いところを探していると、自分も良いアイデアが出るようになる」(石井氏)とアドバイスした。

多くの支持を集めた魅力的な5つのアイデア

NTTドコモ法人ビジネス本部 法人ビジネス戦略部 2020・地方創生営業推進担当課長の望月 謙氏

ハイライト法で選ばれた上位5つのアイデアレビューの様子

 三人ブレスト終了後、話し合った中から生まれたアイデアをA4サイズの紙にまとめたアイデアスケッチを作成。このアイデアスケッチを参加者全員が検討し、「面白い」または「広がる可能性がある」と感じるものすべてに星を1つ付ける「ハイライト法」でアイデアの絞り込みを行った。

 石井氏によれば、ハイライト法の傾向として上位4%に星が集中し、45%には星が1つもつかないそうだ。しかし、非常にユニークなのは「星が1~2個のアイデアの中にイノベーションの芽が多い」(石井氏)ということ。星の多いアイデアは高確率でヒットを打つアベレージ打者だが、ダークホース的にホームランを打つアイデアはここに多いそうだ。そのため、多くの人が賛同しなかったアイデアであっても、石井氏は「悪いアイデアだからと簡単に捨ててはいけない。イノベーションの芽だと思って突き進んでほしい」と話した。

 ただし、今回は時間の関係から、ハイライト法で星の多かった上位5つでアイデアレビューを実施した。トップの星17個を集めたのは「ドローンを用いたジビエ(野生鳥獣)のトレーサビリティシステム」だ。このアイデアは、ドローンを山や鳥獣の生息地に飛ばすことで、シカやイノシシなどの位置を特定。さらに、個体の動きなどもカメラやセンサーでデータ化して管理する。そのデータをハンターなどに提供することで、効率のよい捕獲に役立てる。なお、通常のカメラでは木や草むらに隠れている動物を見つけにくいため、温度で居場所を確認できるサーモグラフィカメラの採用も踏まえていた。

 このアイデアに石井氏は、「シカやイノシシが食べるものまでわかれば、食の安全にもつながりそう。ジビエの安定供給にも役立つ」と高評価。また、クマなどはドローンの飛行によってリアルタイムに危険を知らせることができるので、「住民の安心・安全にもつながる」とした。

 2つ目は「情報を発信する青果物たち」。自分の食べたものをデータで蓄積することで、スーパーで買い物をする際に食品売り場から「その人が食べるべき食材」を提案しようという仕組みだ。例えば、「ビタミンが足りないのでこれを食べよう。逆に、これは食べない方がいい」という情報を発信してくれるほか、「手に持っている食材から作れる料理を提案してもいい」と発案者は語った。

「ドローンを使ったジビエ(野生鳥獣)のトレーサビリティシステム」のアイデアスケッチ

「ドローンを用いたジビエ(野生鳥獣)のトレーサビリティシステム」のアイデアスケッチ

「カロリーバンク」のアイデアスケッチ

「カロリーバンク」のアイデアスケッチ

 3つ目は「カロリーバンク」。食べる量を制限するのではなく、「あとどれだけカロリーを取っていいか」を知らせる逆転の発想だ。発案者は「会社でお弁当を残す人もいるので、データに基づいて食べられれば、みんな気持ちよく健康になれて、ダイエットも安心してできる」と考えたという。実際、運動量や消費カロリーなどはすでにウエアラブルデバイスで蓄積できるほか、皿にセンサーを搭載すれば摂取カロリーも自動で取得可能になる。さらに、この仕組みを使えば廃棄ロスにも役立つと語った。

 4つ目は「捨てていたものを流通させる」システム。イチゴ農家を営む発案者のいとこが、出荷する際に形の悪いイチゴをかなり捨てているため、「もったいない」と感じて思いついたそうだ。形が悪くても切って利用するスムージーやケーキであれば問題なく利用できるため、それ用の流通システムがあれば"もったいない"課題を解決できる。廃棄ロスの削減に加えて、食品メーカーの仕入れ原価が下がるのもメリットだ。

 5つ目は「時間と距離を縮める」と題して、ロボットによる遠隔収穫を提案した。現在の農家は、作業をするために田んぼや畑に行くことが負担になっている。そこで「ロボットとリンクすれば、家の中で農作業ができるようになる」と発案者は解説した。これは農作業だけでなく流通でも利用できるほか、「オンライン〇〇狩りなどにも活用できる」と語った。

 アイデアレビューの終了後、石井氏は隠された大事なフェーズとして「"良い発想テーマ"を設定する」ことの重要性を挙げた。石井氏によれば、「アイデアが出ないときは、良い発想テーマを設定できていないケースが多い。良いテーマが設定できれば、ブレストの7~8割は成功する」という。そして最後に、可能性を感じたら、まずは目の前の二歩を進んでみることの重要性を強調。「1人でアイデアを出し続けるのは難しいが、アイデアを反射してくれる人と話し合えば、イマジネーションが広がってくる」と話し、実りあるアイデアソンを締めくくった。

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