被災地だからこそ見えたリアルなドローン活用仙台市がドコモと連携協定を結んだ理由

2017年3月4日、仙台市において「ドローン×エンタメ」アイデアソンが開催された。仙台市とNTTドコモが結んだ「ICTを活用したまちづくりに関する連携協定」に基づく共催イベントで、土曜にもかかわらず会場は満員の盛況となった。仙台市/NTTドコモ担当者のインタビューを交えながら、自治体とともに育むドローンの可能性をお伝えしよう。

仙台市との協創で社会課題解決と新規ビジネス創出に挑む

 2016年8月29日、仙台市とNTTドコモは「ICTを活用したまちづくりに関する連携協定」を締結した。本協定は「防災・減災」「地域活性化」「近未来技術の実証」の3つを柱とした協定である。

 まずはここに至るまでの仙台市とNTTドコモの関係を整理しておきたい。6年前の東日本大震災によって仙台市をはじめとする周辺一帯は甚大な被害を受けたが、震災直後からNTTドコモおよびNTTドコモ 東北支社は通信インフラの整備や避難所へのタブレット無料配布などを通じて被災地の復興支援に注力。その後も支援体制を継続する中で双方の信頼関係が高まり、今回の協定締結へとつながった。仙台市 経済局 産業政策部 産業振興課長の白岩靖史氏は、その背景をこう語る。

 「あれから6年が経過しましたが、とくにICTの分野ではモノとモノをつないで、今まで不可能だったことを実現しようとの方向に進んでいます。これから本格的に自立して復興を進めるときに、世の中のトレンドをきちんとキャッチアップしていかないと地場産業も活性化していきません。加えて若者の流出も歯止めがかからない中、この地に残って活躍してほしいとの課題もあります。

 NTTドコモには協定を結ぶ前から、ICTやドローンのような最新技術の分野で“仙台市をフィールドにして何かできないか”と関心を持っていただきました。そこで課題解決のために、包括的な協定を結んでしっかりと取り組むべきではないかと考えたのです」(白岩氏)

NTTドコモ 東北支社 法人営業部長 東北復興新生支援室 兼務 防災士の山田広之氏(左)、仙台市 経済局 産業政策部 産業振興課長の白岩靖史氏(右)

NTTドコモ 東北支社 法人営業部長 東北復興新生支援室 兼務 防災士の山田広之氏(左)、仙台市 経済局 産業政策部 産業振興課長の白岩靖史氏(右)

 NTTドコモ 東北支社 法人営業部長の山田広之氏は「弊社のさまざまなアセットを組み合わせることによって、被災地の課題を解決できるのではないかとの思いがありました」と話す。そのほか仙台市には国家戦略特区、東北大学の知見、産官学が一体となったITコンソーシアム「GLOBAL Lab SENDAI」の存在といった特徴があり、新たなビジネスモデルを醸成できる素地があったことも大きな要因の1つだ。

 すでに両者はドローンを活用した具体的な取り組みを進めている。これまでに仙台市の深沼海岸における津波避難広報(2016年11月5日)、仙台市・泉ヶ岳スキー場における冬山遭難者捜索支援(2017年2月25日)と2回の実証実験を実施した。

 津波避難広報ではドローンに拡声器を装着し、録音した音声で上空から避難を呼びかけた。東日本大震災では車から避難を呼びかけても限界があり、避難指示を出していた市職員が津波に飲み込まれる二次災害も発生。しかしドローンならば津波や車の渋滞に巻き込まれるリスクや、ヘリコプターのように風音で声が消えてしまうこともなく、よく声が通ったという。カメラによるリアルタイム映像中継にも成功し、災害状況の把握に役立つことも証明された。

 第1回の実験はWi-FiとLTEを中継したが、第2回の冬山ではすべてをLTEで接続した。これにより、遠隔地でも映像が非常に鮮明に確認できたという。さらに冬山の実証では録音済みの音声ではなく、映像を確認しながら直接避難を呼びかけるステップへと進んだ。「直接呼びかけることで、コミュニケーションが取れるのは非常に大きな進歩です」と白岩氏は言う。

 2つの実証実験に関しては消防担当者、危機管理担当者も同行し、プロの目から見ても着実に進化しているとのお墨付きをもらった。「“この方法があれば助けられたのに”といった強烈な動機が課題をクリアする原動力となります。我々としては一歩ずつ実用化に近づいている実感があります」(白岩氏)。また、NTTドコモでは3月8日に東北大学災害科学国際研究所と防災・減災に向けた連携協定を締結し、行政のみならず大学とも協力体制を深めていく。

 並行して仙台市では、一般社団法人「ドローンテックラボ仙台」を立ち上げた。ここではドローンに関する技術的課題の解決や、サービスの事業化・協業の推進などを図ることを目的に地元企業や大手企業から広く会員を募っている。本団体にはもちろん仙台市とNTTドコモも参加し、ドローンの可能性を探る。

 これを受け山田氏は「地に足の着いた実証を継続し、パートナーと一緒になって新しいイノベーションを創造したい。その結果、地域に喜んでもらえるソリューションやビジネスモデルを作り上げることが最大の望みです」と、“協創”の意義を語った。そして白岩氏は、次のような言葉で未来を見つめる。

 「ドローンやIoTに関しては、通信事業者とタッグを組まないと社会実装につながりません。今回の取り組みが実証され、安全かつ安定的に運用できるソリューションが確立されれば国の支援も大きくなりますし、ビジネスチャンスも広がります。今後も、NTTドコモと連携を取りながら新しいことにチャレンジしていきたいですね」(白岩氏)

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