旬のVRサービスが一挙集結 マッチングイベントから見えた明るい未来

次世代のVRデバイスが出揃い、「VR元年」と評された2016年。そして2017年は新たなVRサービスが一気に花開く年と目されている。今回、NTTドコモ・ベンチャーズでは大手企業とベンチャー企業のVR事業者が一堂に会したマッチングイベントを開催。各プレイヤーたちの言葉からは、VR業界の明るい未来が見えてきた。

放送業界も参入、VRに壁はない

VR事業者ピッチ・マッチングイベントの様子

 2017年3月29日、ハードウエア制作、ソフトウエア制作、コンテンツ制作、企画プロデュースなど多方面からVRに関わる企業が集い、自社のピッチを披露するマッチングイベントが開催された。会場となったNTTドコモ・ベンチャーズのラウンジスペースは、VRビジネスを手がける事業者・関係者たちの期待と興奮で活気に溢れていた。

 Gear VRなどのモバイル型、HTC Viveなどのハイスペック型、そしてPS VRなどのゲーム機連動型――2016年はさまざまな形式のVRデバイスが登場し、身近に高精細なVR体験を楽しめる環境が整った。次に重要になってくるのが、最適なVRサービス/コンテンツである。こうした意味からも、今回のようなマッチングイベントは非常に意義深いものと言える。

 NTTドコモでVR事業に携わる同社移動機開発部 第二イノベ―ション推進担当課長の的場直人氏は「新しい分野に挑むためには、先行して取り組んでいる事業者と一緒にやるべき。そもそもVR事業は“協創”を前提としてスタートしている」と語る。まずはコンテンツを充実させ、その後に高速・多接続・低遅延の5Gを盤石なネットワークとして提供していく考えだ。「パートナーの強力なコンテンツやソリューションを、いかに次世代の通信技術を使って開花させるか。縁の下の力持ちのような存在でドコモのネットワークを活用してほしい」(的場氏)。

 静岡県浜松市に拠点を置くベンチャー企業のクロスデバイスは、すでにNTTドコモと協創を始めている。約6年前からVRコンテンツを手がけ、その開発力を生かして地方創生向けの観光VRをNTTドコモとともに提供。地元・浜松市が舞台のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』ゆかりの地を360度VR映像で楽しめるコンテンツを制作するなど、実績を重ねてきた。同社代表取締役社長の早川達典氏は「ここにきてVR事業が非常に大きな比重を占めるようになってきた。地方観光目的のほか、アトラクション用途でも引き合いがある」と、市場の成長ぶりを肌で感じている。

左から順にNTTドコモ の的場氏、フジテレビの種田氏、クロスデバイスの早川氏

 事業者の中にはフジテレビもいる。VRビジネスはまさにこれから発展する業界であり、確固たる地位を築く放送事業者とは相反するイメージもある。しかし、同社コンテンツ事業局次長兼VR事業部長の種田義彦氏は「もはや抱え込みの時代ではない。フラットに聖域をなくして各社と協力関係を結びながら進めていきたい」と話す。

 VRは映像とは切っても切れない関係にあるだけに、高品質かつ豊富な映像コンテンツを保持するフジテレビにとっても大きなチャンスとなる。また、先述したNTTドコモとクロスデバイスによる観光VRを横展開する上で、フジテレビが張り巡らす全国地方局のネットワークを活用するプランも浮上。これにより、早い段階で地方創生×VRのトレンドが浸透していく可能性は大きい。

グローバル規模でVR課金プラットフォームを制してほしい

早稲田大学の河合隆史教授

 各企業のピッチに先立ち、基調講演とVRビジネスにまつわる識者のトークセッションが行われた。基調講演では早稲田大学基幹理工学部表現工学科の河合隆史教授が登壇し、実証データを通して得た“VR酔い”に関する考察を解説。VRコンテンツ制作にあたっては「映像表現や環境要因にも左右される。対策を施しながら知見を蓄積していくことが重要」とアドバイスした。

 続くトークセッションは河合氏に加え、ブリリアントサービス顧問の杉本礼彦氏、電通 デジタルアクセラレーションチーム プロデューサーの金林真氏が参加。モデレーターを日経BPイノベーションICT研究所の菊池隆裕氏が務め、「未来のVRビジネス」をテーマに進行した。

 2004年にブリリアントサービスを創業し、代表取締役を約12年にわたって務めてきた杉本氏は2017年3月に米コグニザント・テクノロジー・ソリューションズに事業を譲渡。しかし、ブリリアントサービス時代に手がけた独自HMD(ヘッドマウントディスプレイ)「mirama」の特許は手放さなかった。杉本氏はその理由を「将来的に、携帯電話がメガネの形になると予想しているから」とする。

トークセッションの参加者。左から早稲田大学の河合氏、ブリリアントサービスの杉本氏、電通の金林氏、日経BPの菊池氏

自らの体験談を交えながらVRビジネスの展望を語った杉本氏

 さらに杉本氏は自らの体験を通じて、「日本ではVR、AR(拡張現実)、MR(複合現実)は落ち着いた感じがあるが、シリコンバレーに行くと大きな資金が流入している。日本は2~3周遅れのイメージ。もっと日本企業は本腰を入れなくてはならない」と会場の参加者を鼓舞した。

 金林氏は「VRコンテンツを作りたいプレイヤーは多いが、マネタイズの仕組みが確立されていないためコンテンツ市場が成熟しない」と指摘する。この打開策として、電通がパートナー企業と取り組んでいるのが全国のネットカフェやカラオケボックスなどで楽しめる「VR THEATER」である。VR THEATERでは人気漫画をVR化して有料コンテンツとして提供。「少しでもいい資金の循環が生まれれば、コンテンツも技術も一層進化するはず」(金林氏)とマネタイズの方向性を探る。

 加えて金林氏は「人びとの生活のあらゆる場面にVRを投入すると新しいイノベーションが生まれる」とも話し、例として長期入院の小児患者に対するVR映像を活用したメンタルケアを紹介。北海道旭川市・旭山動物園の様子を収めた内容で「外に出られない子どもたちが本当に喜んでくれる。活用方法をどんどん広げていきたい」(金林氏)と今後の抱負を述べた。

 河合氏によれば、「エンターテインメント以外では教育分野が面白い。VRでしか再現できない、高度な訓練用シミュレーション映像もニーズがある」という。そして3人が同調したのが公的な認証機関の必要性と、VRコンテンツプラットフォームの確立だ。杉本氏は「日本企業には、VR、AR、MRにおけるグローバルの課金プラットフォームを制してほしい。このままではアマゾンやグーグルなど、既存の巨大プレイヤーが勝ってしまう。しかし今ならまだ、やり方によっては勝てるのではないか」と結んだ。

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