その道のプロが集結、アイデアがどんどん転がる!白熱した「5G×モビリティ」のアイデアソン

2017年3月8日、東京・代官山のバーベキューレストランに数名の男女が集まってきた。その面持ちは食事を楽しむというものではなく、真剣そのもの。それもそのはず、参集したのはNTTドコモ・ベンチャーズが主催したアイデアソン「未来協創Lab――アイデア会議」の参加メンバーだったのだ。テーマは「5G」(第5世代移動通信方式)。2020年の商用化が計画されている最新の通信方式を使って、どのような新サービスが考えられるかの企画を作成することが狙いだ。

「5G×モビリティ」で何が生み出せるか

アイデアソンの様子

 アイデアソンに参加したのは6人。電通でVRビジネスを企画する金林 真氏、路面状況などを計測するスマホアプリを提供するバンプレコーダー 代表取締役社長の八木浩一氏、訪日外国人旅行者向けのサービスを提供するWAmazing代表取締役の加藤史子氏が中核メンバーとして名を連ねる。モデレーターはプラグガジェット「PlugAir」を提供するBeatrobo CEOの浅枝大志氏が務め、外部有識者の役割を東京大学都市交通研究室助教のトロンコソ パラディ ジアンカルロス氏が、産業界からのサポーターをNTTドコモ 先進技術研究所 5G推進室 主幹研究員奥村 幸彦氏がそれぞれ務めた。

 この夜のアイデアソンでは、次世代の無線通信方式である「5G」と、人間や機器が移動する「モビリティ」をかけ合わせて、新しいサービスを生み出すことをゴールに据えた。短時間のアイデアソンだが、アイデアとして発散させたままではなく、ソリューションやビジネスモデルへの落とし込みを目指す。

モデレーターの浅枝氏

 テーマを絞り込むキーワードとしては「混雑の緩和」「最適経路選択」「バリアフリー」「安全性」「公害」「夜景、風景」「小旅行」の7つが掲げられ、キーワードに沿った形でのアイデア出しが始まった。

 例えば、2020年の東京オリンピック、パラリンピックの訪日客に向けた「観光プラン自動生成サービス」、交差点の衝突回避を目指す「電子カーブミラー」、災害時に瓦礫の中の人を探す「災害救助端末」、3Dで音声が必要な方角から聞こえてくる観光案内やエンターテインメント向けの「ヒアラブルサービス」、留守番中のペットの精神安定に役立つ「リモート主人」などといったアイデアがポンポンと飛び出してくる。

 5Gという次世代の無線通信が持つ性能や機能を見据えながら、これまでになかったような新しいサービスを生み出そうというエネルギーが渦巻く空間だ。それも、誰かが言いだしたアイデアに参加メンバーが次々にコメントをしていくことで、アイデアが広がったり現実的なイメージに絞り込まれたりしていく。

電通の金林氏

バンプレコーダーの八木氏

 20以上のアイデアがメンバーから発表されたところで、今回のアイデアソンで深掘りするアイデアを3つ選出することにした。アイデアソンのメンバーとオブザーバーとしての同席者の投票で選ばれたのは、以下の3つのアイデアだった。

 最高得票は、眼鏡型端末やコンタクトレンズ型の端末を使ってパーティーで出会った人の顔を認識して情報を表示してくれる「パーティーピーポー用グラス」。名刺情報や前回に出会ったときの情報を眼鏡やコンタクトレンズに表示することで、パーティーにおけるスムーズな立ち居振る舞いが実現できるというものだ。

 同得票の2位が、5G基地局を使った「屋内測位サービス」と、トンネル内を走行する列車などの車内に設けたディスプレイにトンネルの外のリアルタイムの景色を高精細で表示する「列車車窓サービス」。選ばれたこれらの3つのアイデアを、どのように料理するのか。実際にビジネスを立ち上げた経験を豊富に持つメンバーの力の見せ所だ。

当初のアイデアに囚われずソリューションへと発展

WAmazingの加藤氏

東京大学のトロンコソ パラディ ジアンカルロス氏

 最高得票を得た「パーティーピーポー用グラス」は、加藤氏のアイデア。パーティーで挨拶している相手が「誰だっけ?」といったことをなくして、スムーズにパーティーの場を乗り切れるようにするサービスのアイデアだ。このアイデアには、参加メンバーが軒並み共感の声を上げた。

 視野に情報を提供する「パーティーピーポー用グラス」の基本の考え方はそのままに、さらに幅を広げた使い方はないかと議論を繰り広げた。「モビリティとの関連で、ARを活用して目的地までの案内ができないか」「交通事故のヒートマップを表示できれば交通安全につながらないか」「GIS(地理情報システム)的な利用の仕方で、観光地や古い町並みなどから看板をなくしてグラスに表示したらどういか」「お店のメニューを多言語で表示できたらインバウンド需要に応えられるのでは」――

 当初のアイデアからの転換が検討されたのは、「眼鏡型」である必要があるかどうかだった。パーティーピーポー用グラスという意味では、「相手に気づかれずに情報を表示する」必要性があり、眼鏡型やコンタクトレンズ型が求められた。一方、アイデアが広がり情報表示のビジネスモデルを検討する段階での議論では、必ずしも眼鏡型であることはない。スマートフォンなどの画面に、「カメラの画像をリアルタイムで分析して、低遅延で情報を表示」できればサービスの提供ができるのではないかと論調が変化してきた。

 店舗の看板やレストランのメニューを「漢字・かな」から外国語に翻訳して表示するサービスや、イスラム教徒に向けて戒律で許された食品を表す「ハラルマーク」をレストランのメニュー画面に示すサービス、禁煙のバーや居酒屋を知らせるサービスなども実用性があると議論が高まる。

 技術面からコメントを求められたNTTドコモの奥村氏も、「店の門構えを画像認識して、情報を解析した結果をディスプレイにリアルタイムで表示させるようなサービスは、5Gらしいサービスだと思います」と語る。さらに3Dの音声も組み合わせて、音でも案内ができるとより高度なサービスができる可能性があると話が膨らんだ。

NTTドコモの奥村氏

 次点の2つのアイデアについても議論が深まった。例えば「屋内測位」では、5Gがさらに進化していけば屋内で50cm程度の精度で測位が可能になるのではといった技術的な指摘を受けて、地下街の案内からトンネル内の自動運転、室内やオフィスの環境コントロールなどへとターゲットが拡大。「列車車窓サービス」からは、自動車を運転している際に前を走るトラックの前方の映像を自動的に表示させるような「視野の拡大」が「as a Service」として提供できるのではといった発想の広がりも得られた。

 2017年5月からフィールドトライアルが始まる5Gでは、この夜のアイデアソンのアイデアやビジネスモデルが具体的な形として見えてくる可能性も十分にありそうだ。

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