ICTは関西の未来をどう変えていくのか?アイデアソンで2025年のサービスを考える

2017年3月23日、大阪で「ICTを活用した関西の未来」を考えるアイデアソンが開催された。ドコモ・イノベーションビレッジとナレッジキャピタルが合同開催したもので、ファシリテーターにはアイデアプラント代表の石井力重氏が登場。一般参加者に加えてNTTドコモグループの社員やベンチャー企業の関係者などが集まり、2020年とその先の5年後を見据えた「関西2府4県を元気にするICTを活用したサービス」の創出に挑んだ。

NTTドコモやベンチャー企業、消費者をつなぐ架け橋に

ナレッジキャピタル 総合プロデューサー室 シニアディレクター 辻邦浩氏

 まずは、今回のアイデアソンが開催された経緯を紹介しよう。

 一般社団法人ナレッジキャピタルは現在、グランフロント大阪の中核施設である「ナレッジキャピタル」の運営を手がけており、感性と技術を融合した新しい価値創出拠点を目指して、さまざまな取り組みを進めている。その取り組みの1つとしてナレッジキャピタル内に設置されているのが、企業と来場者のコミュニケーションによって未来への「体験」や「ワクワク感」を提供する「フューチャーライフショールーム」。株式会社NTTドコモはここの主要テナントとして展開しており、両社の関係が築かれている。これに加えて、ナレッジキャピタルにはベンチャー企業の活動を支援する創造型コ・ワーキングスペース「COLLABO OFFICE nx(コラボオフィス ネクス)」を備えており、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズと同じ方向性の活動も進めてきた。

 このような背景から徐々に協調体制が形成され、今回のアイデアソンの開催へと至った。「NTTドコモの関西支社とNTTドコモ・ベンチャーズ、ナレッジキャピタルが一緒になって、一般の参加者やベンチャー企業の関係者、NTTドコモグループの社員などが集まるワークショップがついに実現できた」と、ナレッジキャピタル 総合プロデューサー室 シニアディレクターの辻邦浩氏はその思いを語る。

 一方NTTドコモは、多彩なサービスやIoT製品でより便利な生活を提案し、それを実際に体験できる「ウチスマ」を関西圏のドコモショップをはじめとする店舗で展開している。そこでは、ベンチャー企業と組んだり新規ビジネスの創造を目指したりする取り組みを進める。NTTドコモ関西支社 営業部 フロント支援・スマートライフ推進担当課長の鈴木猛志氏は「今回の活動が新たな出会いや発見につながることを期待している」と話す。

NTTドコモ関西支社 営業部 フロント支援・スマートライフ推進担当課長鈴木猛志氏

 ベンチャー企業にとって、製品やサービスをどのようにして消費者に届けるかは重要な問題だ。近年注目を集めているのがクラウドファンディングだが、「クラウドファンディングでは、アーリーアダプターの声しか聞けない」と鈴木氏は指摘する。その点、ドコモショップは一般的な消費者のリアルな声を聞けるのがメリット。集客の多いリアルチャネルを持つNTTドコモとしては「アーリーアダプターと一般消費者の間をつなげることに挑戦していきたい」(鈴木氏)と展望を明かす。

 辻氏も「まず、ナレッジキャピタル内のリアルショップとしてのフューチャーライフショールームを中心としたコミュニケーションによって消費者を育ていけば、アイデアソンなどにも参加する人は増えるはず。そこから、新たな発想や出会いも生まれてくる」と期待を込める。今回の取り組みは、NTTドコモやベンチャー企業、そして幅広い消費者をつなぐ架け橋となる、その第一歩と言えるだろう。

高い評価を得たアイデアは「孫型ロボット」と「変化する家」

アイデアソンの進行を務めたアイデアプラント 代表の石井力重氏

 今回のアイデアソンの発想テーマは「2025年のICTを用いたスマートライフのアイデア」である。スマートライフのイメージを参加者につかんでもらうべく、NTTドコモの鈴木氏からNTTドコモが目指すスマートライフの概要や現在展開している「ウチスマ」の詳細などが紹介された後、いよいよアイデアソンがスタートした。

 最初に博報堂生活総合研究所が提供するWebのデータベース「未来年表」をスマホで利用し、「○○年に、○○になる」といった情報からアイデアソースを抽出。そこから、ブレスト方法のひとつである「Free & 3」で各チームのアイデア出しをはかった。この「Free & 3」では、まずアイデアソースから思いついた内容をチーム内で雑談的に出し合い、次に各自がその中で気に入った内容をスケッチする。そして最後に、その素案を発表しあって1つにまとめていくやり方だ。初めから構えた議論をするのではなく、気軽な雑談の中でアイデアを熟成させるため、どのチームも和やかな雰囲気で話し合っていた。

 さらに、チーム内で最終アイデアをまとめる際に利用したのが、「Zebra Brainstorming(ゼブラブレインストーミング)」だ。これは、発想のやり方を「個人→集団→個人→集団→…」と交互に回して実施するもの。石井氏はこの手法を「常に集団で議論するよりも、アウトプットの観点から生産性が高まる」と解説する。

「Free & 3」でアイデアを出し合っている様子

「孫型ロボット」のアイデアスケッチ

「住む人によって変化する家」のアイデアスケッチ

 「Free & 3」と「Zebra Brainstorming」を経て、各チームは1つに絞ったアイデアをまとめたアイデアスケッチを作成した。その後、チームを2つのグループに分けてアイデアスケッチを発表しあい、各グループで最も評価の高いアイデアを選出。ファイナリストとして、2つのアイデアが全体向けに改めて発表された。

 ファイナリスト1組目は、超高齢化社会とロボット技術を組み合わせた「孫型ロボット」。高齢化社会における独居老人の増加や医療費の拡大といった課題解決を目的としている。

 利用イメージとしては、まず高齢者が孫型ロボットを1日1回ハグすることで、その人の体調や心理状態を記録。趣味や習い事の教室に連れて行けば、孫型ロボットが同じ内容を学習することでパーソナライズも可能になる。さらに、自分の孫型ロボットを自慢することでコミュニケーションも図れるというわけだ。

 2組目は「住む人によって変化する家」。このアイデアは、AIやIoTの利便性から人の行動が減少することによって起こる「健康の低下」を発想のベースとしている。

 とりわけ認知症の高齢者を想定しており、認知症の改善に効果があるという脳への刺激に注目。例えば、健康状態に応じて階段の段差や扉の重さを変化させることでフィジカル的に脳を刺激するほか、AIで「今日のお昼ご飯は何だった?」と自動的に話しかけ、会話でも脳をトレーニングする。さらに、トイレで自動的に健康状態をチェックできる機能やライフスタイルに応じて広さや階層などを変更できる仕組み、家ごとそのまま移動できる機能なども備えている。

 石井氏はアイデア創出ワーク・プロセスのポイントとして、「拡げる」「絞る」「強化する」以外にも「良い発想テーマを『設定する』ことがとても大事だ」と語り、「良い発想テーマを設定できていれば、人は自然と発想推進力が高まる」と補足した。そして最後のメッセージとして「可能性を感じるなら、まずはアイデアを出して進んでみよう。100歩目に宝があるのであれば、そこまで愚直に歩いていくしかない」と総括した。