大盛況の5G Tokyo Bay SummitでVRのプロが語り尽くした5Gの可能性

2020年の本格提供を前に、日々盛り上がりを見せる次世代通信規格の5G。2017年5月の「5G Tokyo Bay Summit」では、夢の世界を先取りする5Gソリューションが数多く展示され、大きな可能性をアピールした。大容量・超高速・低遅延を実現する5Gは、果たして世の中にどんなインパクトをもたらすのか? VRとのかけ合わせから生まれる相乗効果を軸に、“ワクワクする未来”を探る。

5Gの高速性を前提としたVRコミュニケーションツールが誕生?

5G Tokyo Bay Summit に設置されたNTTドコモの5G基地局。ここから各ブースへ5G通信が提供された


NTTドコモの中村氏

 2017年5月24日〜26日にかけて開催された「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2017」。本展示会ではNTTドコモの全面協力のもと特設パビリオン「5G Tokyo Bay Summit」が設置され、多彩な5G関連のブースが並んだ。初日となる24日にはNTTドコモ5G推進室主催による「5G Tokyo Bay Summit ワークショップ」も開かれ、VRに関わるプレーヤーたちが “5G×VR”の未来について熱弁をふるった。

 ワークショップではまず、主催者を代表してNTTドコモ 5G推進室 室長の中村武宏氏が登壇。5Gの技術要素や現状の取り組み、今後のロードマップなどについて解説した。中村氏は「VR/ARコンテンツの配信では、高速大容量とともに低遅延にも配慮しなくてはならない」と、その特徴を指摘。また、5G時代が到来した暁にはより一層、コラボレーションを軸とした“協創”が重要になるとし、VR/ARを重点分野の1つとして捉えていく姿勢を示した。

 続けて出席者によるショートプレゼンが行われた。デジタルコンテンツ事業者、BtoB向けソフトウエア事業者、コンテンツ配信事業者、ディスプレイメーカー、広告事業者とそれぞれの業界からプレーヤーが参加し、自らのビジネスと5Gとの関わりについて報告した。

 トップバッターは東京・墨田区に本社を置くクレッセントが務めた。映像エンジニアリング、モーションキャプチャー、デジタルコンテンツ制作に強みを持つ企業で、かつては産業用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を独自制作。仏ルノーなどに納入していた実績を持つ。

 近年はVRコンテンツに注力しており、5G Tokyo Bay Summitでは5Gをフル活用したデモを披露した。同社のスタジオで16台のカメラを用いて撮影した人物の大容量3Dメッシュデータを転送し、会場となる東京ビッグサイトのローカルPC内のコンテンツとリアルタイム合成。VRデバイスを装着して“仮想スイカ割り”が楽しめるものだ。

クレッセントの5G×VRのデモ


クレッセントの小谷氏

 代表取締役の小谷 創氏は「我々は黒子で無名だが、先端のコンテンツを支えている自負がある」と胸を張る。誰もが知る有名ミュージシャンのデジタルコンテンツ制作を手がけ、後述するフジテレビとも関係が深い。VRの周辺動向に詳しい小谷氏は、日本・中華圏・欧米の3極におけるこれからの5G×VRの進化について考察した。日本では東京オリンピックが1つの大きなモチベーションになるとし、「まずは2020年に向かって一気に盛り上がるだろう」(小谷氏)と話した。

 台湾・中国などの中華圏では「VRのアーケードゲームが流行しつつある」(小谷氏)と語った。わざわざ大型のアーケードゲームにするのはリアリティを追求するためで、例えばシューティングゲームの銃に重量感をもたせ、振動のフィードバックも非常にリアルにした。「VR系、モバイル系、オンラインゲーム系の人たちがアーケードに集まってきているのも面白い。ゆくゆくはオンラインでリアルタイムVRゲームを目論んでいる。そこには5Gが必須となる」(小谷氏)。

 欧米はフェイスブック、グーグル、マイクロソフトなどのIT巨人がVRプラットフォーム確立に躍起になっている。「彼らが最終的に目指しているのは、人間そのものを3D化してVR世界に入れ込んでしまうことではないか。そうなると非常にデータが重いため、5Gはなくてはならないものになる。もしかしたら5Gをベースにした、人間と人間をよりダイレクトにつなぐコミュニケーションツールとしてのVRが出てくるかもしれない」(小谷氏)。このようにして、VRは5Gとさまざまな形でつながってくると予測した。

遅延なし、5Gが快適に“人の動き”を運ぶ

新日鉄住金ソリューションズの笹尾氏


新日鉄住金ソリューションズによるデモ。人がはめたグローブの動きを離れた場所のロボットハンドがトレースする

 続いて登壇したのは新日鉄住金ソリューションズ システム研究開発センター イノベーティブアプリケーション研究部の笹尾和宏氏。新日鉄住金ソリューションズはBtoBのSIer(システムインテグレーター)で、新日鉄グループを始め、鉄道、製造業など幅広い顧客を抱える。

 新日鉄住金ソリューションズは、5G回線を用いた産業用のテレイグジスタンス(遠隔臨場感)のデモを展示した。工場内の危険地帯など人が入れないような場所に人型のロボットを置き、遠隔地から人間が操作する。体の動きそのものをトレースするのが肝で、実際の展示では人間がはめたセンサー付きのグローブの動きに合わせて離れた場所にあるロボットハンドが遅延なく動く姿が印象的だった。笹尾氏は「一言で言えば、現場作業員のIT武装。ウエアラブルデバイスを用いてコンピューター解析することで、技術によって作業員を上手くフォローするのが狙いだ」と語る。

 センサーやデバイスから収集したビッグデータを活用し、より作業を円滑にしていくサイクルを作っていきたいとも話す。10年ほど前に研究を始めた当初から描いていたプランだが、テクノロジーの進歩がようやくアイデアに追いついてきた。「ロボットアームと5Gによって、遠隔からの操作が可能になる。VRを利用してロボットの周辺情報をすべて3Dスキャンし、あたかもその場所にいるかのような体験ができることも現実として見えてきている。ただし大量データの送受信や遠隔リアルタイム操作は、5Gでないと非現実的だ」(笹尾氏)。

 グーグルのTango、マイクロソフトのHoloLensと最先端のテクノロジーによるデモを行ったのがフジテレビである。2016年のフジサンケイレディスクラシック、17番ホールにおける原江里菜選手のニアピンショットをジオラマ上にARで再現。将来的には5G回線を使用することで中継映像と遅延なく連動させ「スポーツ観戦の新しい形」として提供していく予定だという。 「ジオスタ」と名づけたブースには見物人が押し寄せた。

 フジテレビ コンテンツ事業局の冨士川祐輔氏は「デジタルテクノロジーを使い、コンテンツの拡張ができないかと考えている」と切り出した。同社では2016年にVR事業部を設立。総合デジタルプロデュースの名の下、VRを筆頭に、AR、インタラクティブ、CG、デジタルアニメ、プロジェクションマッピングなどの制作を手がけている。

 スポーツ観戦、ドラマ、ニュースなどにVRやAR手法を投入して「まったく新しい体験を提供できないだろうか」(冨士川氏)と考えている。さらにNTTドコモとの5Gにおける取り組みでは、2017年8月の「TOKYO IDOL FESTIVAL 2017」で公開予定のコンテンツ開発を進める。

 これは5GとARを使ってアイドルのコンサート体験を拡張させるもの。事前に観客の3Dスキャンデータを採取し、コンサート中に観客が専用アプリを起動すると自分の3Dデータがステージ上に現れ、アイドルと一緒になって踊ったり、写真や映像を撮れたりする画期的な試みだ。「ある種のテレイグジスタンスを5Gによって実現したい」(冨士川氏)。また、フジテレビのあるお台場はNTTドコモの5Gトライアルサイトとなっていることから、今後も2020年に向けてさまざまな実証実験を行っていきたいとした。

フジテレビの冨士川氏

フジテレビのブース「ジオスタ」。多くの人たちが足を止めて見入っていた

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