身近なIoTデバイスで生活に新たな視点をナニワの男女が知恵を絞ったアイデアソン

すでに市販されているIoTデバイスを活用して、どれだけ自分たちの生活が豊かになるのか。こうしたテーマのもと、大阪で「スモールIoTデバイスの新たな活用法を探るアイデアソン」が開催された。突飛なものから極めて実用的なものまでさまざまなアイデアが出揃い、堅苦しく考えがちなIoTの概念にフレッシュな視点をもたらしてくれた。

3種類のデバイスに触れて、可能性を引き出す

ウチスマとアイデアソンの主旨について説明するNTTドコモの鈴木氏

 製造業をはじめとしてBtoB分野での活用例が先行したため、日本における「IoT」は一般消費者にとってあまり身近な概念ではない。一方で生活に根ざすことを目的としたスモールIoTデバイスも発売されており、それらは一定の市民権を得ている。

 2017年6月28日、これら旬のスモールIoTデバイスを実際に体験し、新たな活用法を考えようというテーマのもと、ナレッジキャピタル、NTTドコモ関西支社とドコモ・イノベーションビレッジが大阪駅前の「ナレッジキャピタル CAFE Lab.」でアイデアソンを開催した。

 NTTドコモ関西支社では、さまざまなサービスやIoT製品でより便利な生活を提案し、実際に体験できる「ウチスマ」を関西圏のドコモショップで展開している。冒頭の挨拶に立ったNTTドコモスマートライフ推進部 鈴木宏明氏は、「今回のアイデアソンはウチスマと連動したもの。実際に置いてあるドコモショップでデバイスを手にとって見てほしい」と呼びかけた。

 今回の題材となったIoTデバイスは、ノバルスの「MaBeee」、ソニーの「MESH」、Stroboの「leafee mag」の3種類。クラウドファンディングで資金を調達して製品化に至った点、手のひらにすっぽりと収まるスモールサイズは共通するが、機能はそれぞれ異なる。

今回のアイデアソンで利用した3種類のデバイス。左からMaBeee、MESH、leafee mag


ファシリテーターを務めた前田氏


3つのフレームワークを用意。この手順に従ってアイデアソンが進んだ

 MaBeeeは単3乾電池型のIoTボックスで、単4電池を中にセットすることで電池駆動のおもちゃなどをスマホの専用アプリで操作できるようになる。サイトのユースケースでは子ども向けのおもちゃ、電子工作などを紹介している。

 MSEHは動き、明るさ、温度・湿度、ボタンなど合計7種類の機能を揃えたセンサータグ。それぞれの役割はタブレットやスマホのアプリ上でシンプルに可視化され、タッチ操作でタグ同士を接続することでオリジナルの機能を付加することができる。非常にわかりやすいアプリのため、子どもでも簡単に試すことが可能だ。

 leafee magは正方形と長方形の2つのセンサーから成る。ドアや窓、引き出しなどにセンサーを対で貼り付け、戸締まりの状態をスマホのアプリ上で確認できる。例えばエアコンの羽根や冷蔵庫のドアなどにも活用できる。

 この場で今回のIoTデバイスを初めて触る人たちがほとんどのため、まずは前半のタッチ&トライを経て、後半のアイデアソンに続く流れとなった。アイデアソンやワークショップの経験が豊富なファシリテーターの前田考歩氏は「3つのフレームワークを用意した。この3つを使いながら新しいアイデアを考えていく。今日は、スモールIoTを使ってスマートなおウチ生活を実現する。この3デバイスを使い、生活の中におけるスマートではない課題をスマートにしたい」とリードした。

 3つのフレームワークは「情報の脱構築」「情報の転移」「生活スキーマによる検証ワークシート」。これらについて前田氏は次のように説明した。

 「情報の脱構築では、状況に癒着している商品の情報をバラし、要素、機能、属性の観点で切り分ける。情報の転移ではバラした情報を組み合わせ、異なるアイデア、新しい表現方法を生み出す。スキーマとは人間の脳に蓄えられた知識や経験を構造化してまとめたもので、スキーマがあることで人間の生活は効率的になっているが、一度できあがったスキーマは固定概念や思い込みと表裏一体。そのため、私たちの暮らしやビジネスにおいて『これはこういうものだろう』というスキーマの順序や構造をガラリと変えることができれば、そこに新しいビジネスやイノベーションが起こる可能性がある。今回のアイデアソンでは取り扱うIoT製品が、どのように暮らしのスキーマを変えることができるか検証してほしい」(前田氏)

 前半のタッチ&トライでは、ランダムな6人ほどのグループが順番に3種類のデバイスを体験した。ここで3種類を触った上でどのデバイスのアイデアを担当するのかを決めるため、参加者たちは真剣な面持ちで体験した。しかし仕組みはどれも単純なため、限られた時間ながら理解を深めたようで、グループ分けは混乱することなく完了。それぞれのデバイスで2グループずつ、合わせて6グループがアイデアソンに臨んだ。

MaBeeeのデモでは、ノバルス代表取締役の岡部顕宏氏自らが説明(左)。leafee magのデモでは、架空のドアを用いて特徴をつかんだ(中)。7種類ものセンサーがあるカラフルなMESH(右)

シートを使ってロジカルに、でも発表は大阪風に

 考えたアイデアは最後、「ある日のスマートホームの日常」といった形で個々のグループに発表してもらう形を取った。前田氏が説明した3つのフレームワーク、配布されたワークシートに従ってグループワークは粛々と進行。どんどんアイデアが溢れて書き込んでいる人もいれば、シートを目の前にうんうん唸っている人もいる。ただしアイデアはグループの中から最良のものを精製していけばいいため、時間が経つにつれて各グループとも筆の進みが早まってきた。アイデアを膨らませるためにグループ内の会話も熱を帯びてくる。

アイデアソンの様子。次世代のデバイスを前に、各チームがアイデアをひねり出す


 ほぼ1時間のアイデアソンを終え、各グループがポスターサイズの模造紙に“スマートな一日”を書き込んで発表した。トップバッターを飾ったleafee magのグループ1は、家庭に常備しているトイレットペーパーやペットボトルにleafee magを貼り付けることで、いち早く常備品の不足がタブレットで把握できるシステムを披露。前田氏を「素晴らしい」と感心させた。

 MESHのグループ2は、「20代半ばの引きこもりの男子が、いかに家族と顔を合わせずに過ごせるか」をテーマに、7種類のMESHすべてに加え、leafee magをも連携させたアイデアを紹介。「妹が天敵なので人感センサーで感知」「温度・湿度タグで他の家人の入浴状況がわかる」など、実用的というよりはほとんどゲームに近いのだが、説明のノリが大阪風のため場内の爆笑を誘った。

 MaBeeeのグループ1は、「Ride on de Light on!!」のタイトルで、田舎の暗い駐輪場で自転車をすぐに見つけるためのアイデアを発表した。「スイッチON/OFFの機能で、テールランプなど電池が使える部分が光る」というもので、応用として災害時に懐中電灯をすぐ見つけるためにも活用できるとした。

 残りのアイデアも、自動車のバックモニター代わりにleafee magを使う、聴覚障害者にわかりやすいようにMESHの明るさで家電の状態を知らせる、金魚にMaBeeeを搭載するとユニークなものとなり、短時間とは思えない充実ぶりを見せた。

家庭の常備品に目をつけたleafee magのアイデア

すべてのMESHをフル活用するアイデアも生まれた

現実的なアイデアと絶賛されたMaBeeeチームのアイデア

IoT製品は「これまでの価値を再定義するもの」

NTTドコモの中澤氏

 アイデアソン発表後、デバイス提供者であるノバルス(株)代表取締役 岡部顕宏氏、今回のIoTデバイスを取り扱うドコモショップ 光明池店 店長 (株)スマートバリュー モバイルDivision 松永康樹氏、ウチスマを担当するNTTドコモ 関西支社 営業部 フロント支援担当 スマートライフ推進担当主査 中澤 覚氏に話を聞いた。

――ウチスマの狙いを改めて教えてほしい。

中澤氏:NTTドコモとしては、お客様にいろんなサービス、IoTデバイスを用いて、いかに生活が便利で楽しくなるかを提案する取り組みとして「ウチスマ」を推進している。今回のアイデアソンで取り上げたような魅力的なIoTデバイスも増えてきた。そこでいろんなバリエーションを増やしながら、お客様に体験してもらいたいと考えている。

松永氏:まずIoTデバイスを身近に感じてもらうために、デバイスの存在を知らない人たちに向けて、“安心、楽しい、便利”をドコモショップとして発信していく。「あのショップに行けば教えてくれる」といった思いを、地域の方々に根付かせることが理想。そこからその先へと広がる機会もいろいろと増えるはずだ。

中澤氏:確かにお客様の重要なタッチポイントであるドコモショップで、お客様に伝わらなければ何の意味もない。ドコモショップで体験してもらえる環境をしっかりと連携しながら作っていきたい。

松永氏:新しいデバイスを扱っている誇りもある。モノ売りではなく、コト売りのイメージに近い。そういう意味でもやりがいがあるし、自分たちの発想が生かされる機会なので楽しい。

(株)スマートバリュー モバイルDivisionの松永氏

――ドコモショップにデバイスを提供する側の心境は。リアルなタッチポイントが増えることが重要なのか、大企業とコラボすることが重要なのか。

岡部氏:そもそもIoT自体が何かをお客様はまだまだ知らない。我々のようなベンチャー企業がそれぞれ単一のIoT製品をアピールしているが、IoTが形成する社会の全体像までは伝えるのが難しい。

 そこでドコモショップの力を借りて、IoTの素晴らしさをアピールできるのは素晴らしいことだと感じている。IoTが何たるかを広めてもらって、その中にこんな製品が存在するという案内ができる図式ができればありがたい。

――では、この先にベンチャーとして何を期待するか。

ノバルスの岡部氏

岡部氏:タッチポイントの増加とともに、深さも求めていきたい。単純に置いてあるだけでは何ができるのかわからない。多くのIoT製品はこれまでの製品の価値を再定義するものがほとんど。ぱっと見ではその価値が伝わらないため、どのように店頭でわかりやすくお客様に伝えるかが課題だ。それは今日のようなアイデアソンなのかもしれないし、新しい販促のツールなのかもしれない。我々としては、新しい見せ方なども一緒になって提案できるようになれば面白い。

松永氏:スマホの中だけで完結することはできるが、スマホを連携させて違うことができることを知ると、驚きや購入意志を示されるお客様が多いのは事実。今後、お客様からのフィードバックがどんどん出てくる可能性はある。

岡部氏:だからこそ今日のアイデアソンはいい機会だった。自分たちで考えているだけではアイデアが限られてしまう。着眼点が違えばアイデア発展の経路も異なってくる。

――NTTドコモはベンチャーとのコラボにも意欲的。どのようなスタンスで活動していきたいか。

中澤氏:通信事業者が手がけているからこそ、メーカーの垣根を超えてどんな製品でもピックアップできる。こうした機会で、いろんな企業同士の接点を作っていきたい。それが結果的に、NTTドコモの利益に還元されるはずだ。

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ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
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