まずはドローンの楽しさを知ってほしい――ドローンレースの先にある未来地図とは?

 2017年7月2日、仙台市で「JAPAN DRONE NATIONALS 2017 IN SENDAI」が開催された。これまでも数々のドローンに関する実証実験の場を提供してきた仙台市が、2016年から支援しているFPV※ドローンレース大会だ。そして今大会では、NTTドコモがメインスポンサーとして協賛した。なぜ仙台市とNTTドコモがドローンレースでタッグを組むのか。関係者の言葉から、その狙いを探っていく。※FPV 「First Person View」の略で一人称視点という意味。選手はドローンから送られてくるリアルタイムの飛行映像をゴーグルやモニターを見て操縦している。

未来の成長産業を支える人材をドローンレースで育てる

JAPAN DRONE NATIONALS 2017 IN SENDAIのレース風景(公式動画より)


小学生のジュニアレーサーも参加(公式動画より)


上位3人はすべて20歳以下の若者となった(右から2人目は主催者・JDRAの小寺氏)

 真夏の強い陽射しが照りつける2017年7月最初の日曜日。仙台市の「ゼビオアリーナ仙台」には大勢の観客が詰めかけていた。彼らのお目当てはドローンレース大会「JAPAN DRONE NATIONALS 2017 IN SENDAI」。昨年に続く2回目となる今回は海外からトップ選手も参戦し、優秀な成績を収めた選手は、日本代表としてドローンレースの世界大会への出場権を得ることができる。

 レース会場は、照明を落としたアリーナ内に設営された。ドローンの通過ポイントとなるゲートには派手なLED照明が施され、演出面にもこだわりを見せる。レーサーはVRヘッドマウントディスプレイを装着し、ドローンから送信されるリアルタイム映像を見ながら機体を操縦してタイムを競う。

 時速150kmを超えるとも言われるドローンの動きは、暗闇の中では目で追うのが難しい速さである。そのため、ドローンにLEDを装備してレースを行う。とはいえ、超高速かつ俊敏な動きをヘッドマウントディスプレイでモニタリングしながら制御するには、相当な空間認識能力と反射神経が必要となる。まさに“近未来のエクストリームスポーツ”を地で行く内容だ。

 驚いたのは、下は小学生からの参加者がいたこと。見事優勝した阿左美和馬選手(16歳)は高校生パイロットであり、以下3位までが20歳以下の若者だった(2位の岡聖章選手が20歳、3位の高梨智樹選手が18歳)。日本におけるドローンレース自体がほんのここ1~2年で開花したことを考えると、想像以上に若い世代にスポーツとしてのドローンが浸透していることが推測される。

 なぜ仙台市がドローンに注力するのか。それは、平成27年8月に国家戦略特区に指定されたことが大きい。仙台市ではこれまで、近未来技術実証の取り組みとしてドローンの実証実験を行ってきた。例えば仙台市の深沼海岸における津波避難広報(2016年11月5日)、仙台市・泉ヶ岳スキー場における冬山遭難者捜索支援(2017年2月25日)、龍沢橋における球殻ドローンを用いた橋梁点検(2017年5月16日)などである。

 こうした背景もあり、徐々に“ドローンと言えば仙台”のイメージが定着しつつあるが、まだ一般層にとってドローンは遠い存在だ。初期には事故ばかりがクローズアップされ、ネガティブなイメージが先行してしまった事実も否めない。そこで広くドローンの楽しさを伝えるために、昨年からドローンレース大会を支援することにした。

 今回の大会で事務局を務めた仙台市 まちづくり政策局 政策企画部 プロジェクト推進課長の中野賀枝子氏は、「ドローンレースのように皆が楽しめるエンターテインメントによって、より身近にドローンを感じてもらえるようにしたい」と話す。大会は7月1日、2日の2日間にわたって開催されたが、「かなり幅広い年齢層の方々に関心を持ってもらえた」(中野氏)という。

仙台市の中野氏


JDRAの小寺氏


NTTドコモ東北支社の山田氏

 主催者である一般社団法人日本ドローンレース協会(JDRA) 代表理事の小寺 悠氏は「今回の大会は仙台市の実行委員会をはじめ、仙台市、NTTドコモほか、さまざまなスポンサーの皆様のおかげで実現した。とにかく感謝したい」と話してくれた。小寺氏は、生でドローンレースを観戦する楽しさは、到底バーチャルでは味わえないものだと語る。今年に入りさまざまなメディアでドローンレースが取り上げられるようになったこともあり、「いい流れが来ている」(小寺氏)と手応えを感じている。

 昨年、今年と2回にわたりメインスポンサーとして関わったNTTドコモは、2016年8月に仙台市と「ICTを活用したまちづくりに関する連携協定」を締結。「防災・減災」「地域活性化」「近未来技術の実証」の3つを柱とし、先に挙げたドローンの実証実験にも全面協力してきた。NTTドコモ 東北支社 法人営業部長の山田広之氏は、ドローンレースに協賛する意味を次のように語る。

 「ドローンの可能性を広げるためにさまざまなことに取り組んできたが、やはり防災・減災の観点だけではなく、日頃から使えるドローンを目指したい。そのためにもまずは、ドローンを使う裾野を広げなくてはならない。

 その意味で、ドローンの楽しさ、可能性、未来に向けての夢などを見せられるドローンレースは非常に重要な機会。昨年からのわずか1年の間に、仲間がどんどん広がってきている。今後はもっと加速するに違いない」(東北支社・山田氏)

 小寺氏は続けて「正直なところ、若者たちはドローンの実証実験と聞いても反応が薄い。ただしレース、スポーツとなれば、若者たちは興味を持つ。ソーシャルメディアでの拡散力も高く、日本でドローンの裾野を広げるためにも、ドローンレースは大きな起爆剤になる」と胸を張る。今回の大会にも小学生が参加したが、かつてのゲーム業界がそうだったように、小寺氏はレースを通してドローンに精通した人材を育成することも可能だとする。

 「彼らが成人した頃にはドローンビジネスが成熟している。そのビジネスを背負って立つ人材になってほしい。だからこそドローンレースは、人材教育の面でこれからのドローンの発展にとって重要なイベントだと捉えている」(小寺氏)

 さらに超高速、超低遅延、多数同時接続などが特徴の5Gが開始されれば、遅延がなく、より鮮明な映像転送が可能となり、ストレスのないドローンの制御が実現する。新しい技術が次世代スポーツの新たな扉をひらく日は、そう遠くない。

圧巻! 浮遊球体ドローンディスプレイのデモ

NTTドコモブースのVR体験。子ども向けにはタブレットが用意された

 会場ではNTTドコモによるドローン目線のVR映像体験ブースも設置され、子どもから大人までが集まって視聴を楽しんでいた。

 本ブースの一角には、球体の枠で囲まれた一見ものものしいドローンが飾られていた。この球体ドローンこそ、NTTドコモによる「浮遊球体ドローンディスプレイ」である。

 2017年4月に報道発表された浮遊球体ドローンディスプレイは、全方位に映像を表示しながら飛行することができる、文字通りの「ドローン+ディスプレイ」。用途としては、コンサートやイベントにおける舞台演出や、会場を飛び回りながら広告を表示する媒体活用などを視野に入れている。現在のところ、2018年度の商用化を目指す。

ブースに飾られた浮遊球体ドローンディスプレイ


先進技術研究所の山田氏(左)、イノベーション統括部の山田氏(右)

 開発を手がけたNTTドコモ 先進技術研究所の山田渉氏は「浮遊球体ドローンディスプレイは、ドローンの新しい可能性を切り拓くデバイス。モバイルネットワークと連携して空間上の好きな場所に好きなタイミングで広告を流すことできるようになる。つまり、視聴用デバイスが不要な、よりダイレクトな情報伝達手段。だからこそドコモが取り組む価値がある」と語る。

 ともに活動しているNTTドコモ イノベーション統括部 企業連携担当 担当部長の山田和宏氏は、「この技術の特許が取れれば、弊社のアセットになる。そうすればいろんなビジネスの展開が見えてくる」と話す。報道発表後は多くの問い合わせがあり、実際にビジネスが動き出す気配もある。

 浮遊球体ドローンディスプレイは2017年4月の「ニコニコ超会議」で一度デモ飛行を行ったが、今回のドローンレースにおいてもデモを敢行した。わざわざ仙台市で飛ばしたのには、きちんとした理由がある。イノベーション統括部の山田氏によれば、それは「恩返し」なのだという。

 「仙台市からドローンに関する提案の話をもらって足を運んだ際、自治体の立場で浮遊球体ドローンディスプレイを活用する意味があるかどうかを尋ねてみた。そこで市からは、民間が日常的にステージ演出などに利用しているドローンを、非常時になったら市が借り上げる。そんなモデルが作れたら、民間・行政の両方で活用できるのではないかとのアイデアをもらい、目からウロコが落ちた。このモデルが成功すれば、NTTドコモとしても地方創生に役立つソリューションを作ることにつながるからだ」(イノベーション統括部・山田氏)

 デモは白熱したレースの休憩時間に実施された。回転するLEDの光の残像でできた球体ディスプレイを、内部のドローンで任意の場所に動かして見せる仕掛けだが、そうした理屈を抜きにしても、斬新な表現に目を奪われる。映像を投影するドローンの美しさに、大勢の観客もしばし見とれていた。もしかしたら、イベント会場の広告がこのドローンディスプレイに置き換わるときが、やがて来るのかもしれない。

飛び立つ前の浮遊球体ドローンディスプレイ(左)。回転する花火のように舞い上がり、美しく映像を投影する(右)


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