博多祇園山笠と最先端技術のVRが融合!福岡市・テレビ局・NTTドコモによるVRプロジェクトの全貌

毎年7月1日から15日にかけ執り行われる福岡市の代表的行事「博多祇園山笠」。“壮大な祭りの様子をVRで生配信したい”――その熱い思いを持った福岡市は、RKB毎日放送、NTTドコモとともに一大プロジェクトを成功させた。
 三者それぞれのアプローチとVR配信の舞台裏、クライマックスとなった最終日の「追い山笠」のドキュメントを交えながら、画期的な取り組みの全貌を振り返る。

新たな切り口で伝統行事を国内外に発信する

福岡市経済観光文化局 観光コンベンション部長 吉田宏幸氏

 770年以上の歴史と伝統を持つ「博多祇園山笠」(以下、山笠)。福岡市博多地区を舞台に約2週間にわたって繰り広げられるこの壮大な祭りは2016年12月にユネスコ無形文化遺産に登録され、世界中からさらなる注目を集めている。

 福岡を、そして日本を代表する伝統行事の魅力を新たな切り口で国内外に発信できないものか――この思いを実現するために、福岡市は、RKB毎日放送、NTTドコモとともに、「山笠のVR生配信」という斬新なプロジェクトに取り組んだ。

 VR配信のきっかけとなったのは、先述した無形文化遺産への登録だ。福岡市経済観光文化局 観光コンベンション部長の吉田宏幸氏は「無形文化遺産の登録によって、山笠がいつも以上に盛り上がることが想定された。これをVRで配信して見せたかった」と語る。

 福岡市はNTTドコモとともに、2016年9月の「ツーリズムEXPOジャパン2016」でVRを活用したまちの魅力配信を行った。このときは福岡市のシーサイドももち海浜公園の様子を遠く離れた東京ビッグサイトの展示ブースへVRで生配信。ここでの実証が、観光へのVR活用を事業化する契機になったという。

 今回の取り組みは、山笠のクライマックスである最終日早朝の「追い山笠」の様子を、東京プリンスホテルに集った関係者に生で配信するというもの。吉田氏自身も東京に足を運んで自ら体験した。吉田氏は「VRは今後も福岡の良さをアピールする方法として考えている。臨場感のある映像に没入して福岡の良さを知ってもらい、来訪のきっかけにつなげていく」とVRの持つポテンシャルに期待を寄せる。

RKB毎日放送 執行役員 編成戦略局長 プロデューサー 岩熊正道氏

 配信にコンテンツ制作のプロとして携わったRKB毎日放送 執行役員 編成戦略局長 プロデューサーの岩熊正道氏はプロジェクト参画の意味をこう話す。

 「我々には、2D映像で祭りを中継するだけで若者たちが興味を持つのかといった危機感がある。若者たちに祭りが継承されなくなったら“伝統”ではなく、“遺産”になってしまうからだ。

 そこで祭りを継承していく切り口の1つとして、VRという新しいツールで見せることを考えた。しかもスマホのアプリで見ることができるとなれば、より面白さが増す。そのために、新しいデバイスで新しい見せ方を提案していきたい」(岩熊氏)

 さらに岩熊氏は、コンテンツの作り手として「最先端のVRをテレビと融合させることにワクワクしている。番組制作者の気持ちが高揚すれば、見ている人たちもワクワクする」という。ワクワク感を伝えることで人々が元気になり、場所を問わずにその感覚を共有できる。そんなところにもVRの可能性を見出している。

 NTTドコモはネットワーク技術やVR視聴システムで全面協力した。NTTドコモ 九州支社 法人営業部 ICTビジネスデザイン担当部長の入江哲史氏は、「RKB毎日放送とパートナーシップを結び、我々の持っていない技術やコンテンツを提供していただく。そこに弊社のアセットを融合して、通信ネットワークの上に新たな付加価値を提供していきたい」と語る。これはまさにNTTドコモが掲げる協創のビジョン「+d」に基づくものだ。

NTTドコモ 九州支社 法人営業部 ICTビジネスデザイン担当部長 入江哲史氏

 福岡市では今後、インバウンドビジネスを含む観光をテーマにVRビジネスを拡大していきたいとする。吉田氏は山笠での取り組みを、インバウンドの客を誘致するためのツールとして考えている。

 「“福岡はどんな街?”と問われても、言葉だけではなかなか伝わりにくい。しかしVRの観光映像をHMD(ヘッドマウントディスプレイ)で見てもらえば、活気のある街をリアルに体感してもらうことができる。観光案内所などにVR体験スポットを設置し、そこで今回の山笠VR映像を体験してもらうほか、観光・MICE分野におけるBtoBの商談に使ってもらったり、インターネットで配信するとなれば世界中の人が見る可能性が出てくる」(吉田氏)

 2020年には超高速・高精細・超低遅延の次世代高速通信、5Gの商用化もスタートすることから、これまで実現不可能だった配信が可能になる。このため福岡市では、今後開催を控えている大型のスポーツイベントなどでもVRの活用を見込んでいる。

 岩熊氏は「5Gは通信と放送の関係をより一段上のレイヤーに上げる。HMDとスマホを皆が持っていれば、誰しもにVRコンテンツを届けることができるようになる。だからこそ我々のようなコンテンツのプロが必要になってくる。おもてなしや日本らしさをVRで配信していきたい」と力強く話す。画期的な山笠VRプロジェクトを契機に、福岡市はこれから“VR先進都市”として全国に名を轟かせることだろう。

   次へ>