失敗するテレワークには理由がある
働き方改革が企業の重要課題になって久しい。中でもテレワークを実現するためのIT活用は、改革プロジェクトの中核を担う施策として多くの企業が取り組んでいる。
しかし、そうした中では、いくつかの課題も浮上してきている。場所や時間に縛られない働き方を実現することで、業務の非効率を減らし、社員一人ひとりの生産性を高める狙いだったはずのテレワークが、ふたを開けてみれば、想定していたほどの効果を生まないケースが多いのだ。

「いつ・どこでも仕事ができる環境が実現できれば、業務の自由度は高まります。ただ同時に、社員はやるべき仕事=タスクに優先順位を付け、『いつ、どこで、どんな仕事を、どのくらいの時間やるか』を自ら適切にコントロールする必要性が生じます。仕事はオフィスでやるものという感覚に慣れている社員の場合、その優先順位付けがうまくできなかったり、手間取ったりしてしまうケースが多い。それが、想定していたほどテレワークの生産性が伸びない要因になっています」とソリトンシステムズの松本 吉且氏は指摘する。
そこで同社は、テレワークの生産性向上を図るため、「タスク管理」に着目したアプローチを提唱。ワークスペースプラットフォーム「ClearDeck」を新たにリリースした。
ClearDeckは、ビジネスの現場で広く活用されているマイクロソフトの「Office 365 」をはじめ、多様な外部サービスやソフトウエアと連携することで、業務上のタスク管理を支援するクラウドサービスである(図1)。

図1 ワークスペースプラットフォーム「ClearDeck」
Office 365 のメールやスケジューラー、連絡先機能などのほか、テキストメモや外部サービスとも連携することで、一元的なタスク管理を可能にする

「ビジネスの現場では、メールでの依頼を基に仕事が生まれ、それに付随して、『事前の資料作成』『社内打ち合わせ』といったタスクが発生するといったことが日常的に起こっています。ClearDeckでは、それらの一連の状況をアプリケーション内のデータから直接取得し、『To-Doリスト』化することで、やるべきこと/やらなくてよいことを適切に仕分けられるようにするサービスです」と同社の正木 淳雄氏は説明する。
「今やるべきこと」に集中して生産性を向上
それでは、ここからは具体的な使い方を追いながらClearDeckの活用メリットを検証したい。
まず、ユーザーがClearDeckのアプリにログインすると、最初に表示されるダッシュボード上の「インボックス」に、Office 365 で受信したメールなどの件数が表示される(図2)。「ポイントは、メールだけでなく、ユーザーがローカルに作成したテキストメモなどもまとめてインボックスに入る点です。これによりユーザーは、複数のアプリケーションを立ち上げることなく、やるべき仕事がどのくらいあるかを一元的に把握することが可能です」と松本氏は説明する。

図2 ClearDeckの画面イメージ(iPhone、Android)
分かりやすい画面構成で情報をスムーズに確認できる。PCやタブレットでも基本的なインターフェースは統一されているため、作業効率に影響することもない
次にユーザーは、インボックス内の情報を確認し、対応が必要なものをTo-Doリストに登録する。その際、「どこで行う作業か」を「自宅」「職場」「パソコン(職場以外でPCが使える環境)」「電話(の前)」という選択肢から選ぶことができる。もちろん、その変更や追加はユーザーの好みに応じて設定できる。
「例えば、顧客から『○月×日に会って打ち合わせできないか』という連絡をOffice 365のメールで受け取った場合。このとき、『事前に資料を作成する』というタスクが発生します。そこでユーザーは、インボックス内のメールを関連付けた『打ち合わせ用資料作成』というタスクをTo-Doリストに登録します。行う場所には『職場』を選択するといった使い方になります」(松本氏)
こうしてタスクを新規登録すると、ダッシュボード上のTo-Doリストのうち、「職場」のタブの残留タスク数が1つ増える。その後は、ユーザーがそのときどきに使っているデバイスからClearDeckにアクセスすれば、いつでもインボックスやTo-Doリストが見られる仕組みだ。クライアントアプリはWindows版、Mac OS版、iOS版、Android版が用意されているため、デバイスを気にせず利用することができる。
また、メールやメモを「連絡待ち」に設定することができる。これは、同僚や取引先からのアクション待ちの状態の場合に活用するタスク管理機能の一つ。例えば、返信が必要なメールを連絡待ちに設定しておけば、いったんそれを忘れてしまってもかまわない。というのも、その後受信したメールにリスト内の項目と関連しそうな内容が含まれていた場合は、それがメールに表示されるため、待っていた返信が受信メールの山の中に埋もれてしまうこともないからだ。
「To-Doリストさえ適切に作成してあれば、職場でClearDeckにアクセスしている場合は、『職場』のタブだけを見れば、やるべきことが把握できるようになります。このように、余計なタスクは忘れ、やるべきことにフォーカスしやすい環境をつくれるのがClearDeckの強みです」と正木氏。余計なタスクが頭にちらつき、作業が思うように進められないという経験は誰しもあるだろう。ClearDeckは、情報の“交通整理”を行うことでタスクを可視化し、無用の心理的負担を減らすことで、ナレッジワーカーの生産性向上を支援する。
また、ここではメール機能との連携を例にあげたが、ほかにもOffice 365 のカレンダーに登録した予定をClearDeck上で確認したり、Office 365 のアドレス帳に登録された個人・企業を連絡先として利用することも可能。さらにOffice 365 以外にも、Salesforceなどの外部サービスの情報をインボックスに取り込み、同じように扱うこともできる。
ソリトンシステムズは、こうした外部サービスとの連携に力を入れており、今後はG Suite(旧Google Apps for Business)やEvernote、cybozu.com、名刺管理サービスSansanといったサービスとの連携も予定されているという。
盤石のセキュリティで重要データを保護
一方、To-Doリスト内にはビジネス上の重要情報が多数含まれることになる。気になるのがClearDeckのセキュリティだが、もちろんこの点についても十分な対策が取られている(図3)。

図3 重要データを守るセキュリティ機能
データはセキュアコンテナに格納されており、外部へのコピーなどは行えない。デバイス上にデータを残すことも、また残さないこともでき、企業のセキュリティポリシーに応じて設定できることも特長だ
ClearDeckのサーバーシステムはセキュアなコンテナ上で実行されている。コンテナは企業アカウント単位で隔離されており、コンテナ間をデータが行き来できる経路は存在していない。また、ユーザーIDとアクセス元デバイスの2要素認証に対応しているほか、Jailbreakなどの細工が施された端末の検知機能も実装しており、不正アクセスも未然に防ぐことが可能だ。
「クラウド型で、端末にデータを残すか残さないかは選択できる柔軟性がありますが、さらなるセキュリティ強化のため、アプリ側のコンテナ内のデータのリモートワイプ機能も実装しています。管理者による実施はもちろん、複数のデバイスでClearDeckアプリを利用しているユーザーなら、自分でデバイスを選択し、データを消去することもできます」と正木氏は述べる。管理負荷を高めず、安全な運用が実現できる点も、導入に当たってのメリットといえるだろう。
大量のやるべきことが阻害要因となり、思うように生産性が上がらなかったテレワーク。ClearDeckが実現するタスク管理の仕組みは、働き方変革プロジェクトの新たな武器になるはずだ。