デジタルビジネス時代の攻めのIT投資「働き方改革」

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全社員イノベーション活動で
働き方改革を進めたアクセンチュアの挑戦ハードとソフト、トップダウンとボトムアップの4つの領域で数々のアクションを実践

「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスとソリューションを提供する、グローバルな総合コンサルティング会社であるアクセンチュアでは、2015年4月から「『Project PRIDE』」というプロジェクトを立ち上げ、組織風土改革を推し進めてきた。コンサルティングという事業の特性から、長時間労働のイメージがあった同社では、『Project PRIDE』を推進することで働き方改革を実現するだけでなく、業績においても2年で50%以上の成長を続けている。

トップダウンで推し進められた
アクセンチュアの『Project PRIDE』

働き方改革を進めていく上で重要なことについて、アクセンチュア株式会社 チーフ・マーケティング・イノベーターの加治 慶光氏は、「会社としての核となる価値を確認することが非常に重要だと感じています。会社の理想の姿を描かなければ、今の姿からどのように変革してよいかがわからなくなります。アクセンチュアでは、全世界の41万人が共通の価値観を一人ひとりが共有することを目指して改革を行ってきました」と話す。

アクセンチュアには、クライアントに高い価値を提供するために必要な組織文化を定義した「コア・バリュー」というものがあり、「Client Value Creation(クライアント価値の創造)」、「One Global Network(ワン・グローバル・ネットワーク)」、「Respect for the Individual(個人の尊重)」、「Best People(ベスト・ピープル)」、「Integrity(インテグリティ)」、「Stewardship(スチュワードシップ)」の6つで構成されている。人材こそが競争優位の源泉であるアクセンチュアでは、この「コアバリュー」を基盤として、多様な人材がそれぞれの強みを発揮できる環境づくりが重要なのだ。したがって、インクルージョン&ダイバーシティの活動にも注力。まず2006年から女性の人材活用に取り組みはじめ、2012年からは外国籍の方の採用などのクロスカルチャーダイバーシティを進め、さらにPwD(障がい者)やLGBT(Lesbian Gay Bisexual Transgender)へと、様々なダイバーシティを支えてきた。

このような背景のもと、2015年4月から始めた取り組みが「アクセンチュアで働くすべての人々が、プロフェッショナルとしてのあり方に、自信と誇りをもてる未来を創造する全社員イノベーション活動」である『Project PRIDE』だ。ビジネスパーソンとして守って当たり前のビジネスマナー、核となる価値や業務行動規範、働き方を積み重ねた設計を行い、社員だけでなく、クライアントやビジネスパートナーなど社外のすべての関係者も喜んでもらえる会社となることを目指した。

このプロジェクトでは、トップから現場までが組織全体で取り組めるように、当時副社長だった江川 昌史氏(現 代表取締役社長)がプロジェクトリードとなり、トップダウンで強力に推進。役員レベルの各部門長もサブリードとしてプロジェクトの推進に責任を負い、部署単位で結果を可視化するPRIDE Surveyで四半期ごとの実行状況をモニタリングし、改善に向けたアクションプランを策定していった。また、PPA(Project People Advocator)によって、プロジェクト単位でKPIとアクションプランの実行状況をモニタリングして、日々の現場単位での実行を担保できるようにしているという。

『Project PRIDE』の体制

数々のアクションを地道に行っていく

『Project PRIDE』では、アクセンチュアが世界中でクライアントに対するコンサルティングで活用している組織風土改革のフレームワークをベースにしたものだった、と加治氏は説明を続ける。経営層から現場、ハードとソフトという4つの領域で、「方向性提示と効果測定」「リーダーのコミットメント」「仕組み化・テクノロジー活用」「文化・風土の定着化」を行い、数々のアクションを2年間地道に行ってきたのだという。

アクセンチュアの組織風土変革フレームワーク

 「方向性提示と効果測定」では、徹底的な数値化で各種のKPIを設定し、PDCAサイクルを構築。経営トップがスポンサーとなって組織改革専門のコンサルタントが参画し、横断的な組織で『Project PRIDE』を実行するPMO(Project Management Office)機能を立ち上げている。また、ビデオを使った『Project PRIDE』の概要発表や社長の年度始メッセージで経営上最優先課題であることを説明するなど、周知も徹底され、早く帰るための活動ではなく、早く帰るために、仕事の生産性を上げる努力をどのように行うのかといった社員が誤解しがちなポイントについても社長からメッセージを出していった。さらに、四半期ごとに浸透状況調査「PTIDE Survey」が実施されるほか、残業時間や有給取得率などの約10項目をモニタリングする「PRIDE Dashboard」、各部門のアクションや進捗を共有するために定期的に配信される「PRIDE Update」などが提供されている。

「リーダーのコミットメント」では、9人の本部長が各現場のヒアリングや定量調査に基づいたプランを発表し、毎月の経営会議で「個人別労働時間の実績・予測レポート」に基づいた議論が行われている。また、各本部のチェンジ・エージェントが現状とアクション・プランを社長と共有し、各プロジェクトのPRIDE推進担当者が課題に対してPDCAを回して改善。改善が急がれる現場には、本部長やチェンジ・エージェントが直接訪問し、スタッフ層と管理層を分けてヒアリングを実施して、現場リーダーと解決策を協議している。

「仕組み化・テクノロジー活用」では、ルールの周知徹底・厳格化のための社外窓口設置、残業の適用ルールの厳格化、18時以降の会議原則禁止、短日短時間制度の導入、在宅勤務制度の全社展開、育休制度の充実/徹底、生産性の高い社員に報いるための給与制度の改定PRIDEを実践している優れた社員およびプロジェクトの表彰制度、働きやすい環境作りに向けた管理職研修の義務化、といった仕組みづくりに着手した。テクノロジー活用については、ブログなどのPRIDEに関する情報を掲載するPRIDEポータルの構築、生産性向上につながるツールやコツを提供するPRIDE Tool Boxの設置、グローバルでの社員の知見と事例が集積されたデータベースへのアクセス、SkypeやOffice 365などのコラボレーションツールの徹底活用、フリーアドレスとペーパーレス化の徹底などの施策を行った。

本プロジェクトで最も苦労したとされる「文化・風土の定着化」では、成功事例や社員の声などを定期的に発信し、積極的な挨拶の励行を促進。オフィスの壁一面を使った啓蒙メッセージの掲示やスマート会議奨励のための啓蒙パネルなども製作し、コミュニケーション強化月間なども設置して周知徹底を図った。また、部門ごとに働き方改革に関するディスカッションを実施したり、大切な人への“感謝”を伝えるキャンペーン、家族に理解を深めてもらうためのオフィス公開や説明会、日頃の感謝を社員に伝えるキャンペーン、PRIDE川柳やPRIDEアイデアコンテストの開催と表彰、など社員参加型の施策も行った。さらに、2017年からは、オウンドメディアで生産性向上の具体事例を月替わりで掲載する「挑戦者たち」というコンテンツを提供し、社内外に公開している。

加治氏は、「たとえば、挨拶の励行などを社員全員で取り組むことで、結果的に効率的な仕事ができるようになることを目指しました。相手のことを尊敬するという発想を持った組織にならないと、何かを頼むときや指示を出すときに説明不足となり、無駄な手戻りなどが増えていきます。相手を尊重して具体的かつ着地点が見える指示を出すことで、効率的な仕事を行えるようになります」と説明する。また、地方自治体のプロジェクトに参加している女性社員が家庭の事情で八丈島に移住しても、Skypeなどのテクノロジーや柔軟な人事制度を活用しつつ、付加価値の高いコンサルティングをクライアントへ提供するマネジャーとしての役割を継続して行うことができ、プロジェクトを成功に導いた事例も紹介された。

社員の意識も変革していき
働きがいのある会社にランキング

『Project PRIDE』は、まだ道半ばで、今後も地道な活動を続ける必要があると説明する加治氏だが、2年間の活動の中で、残業減少、離職率低下、有給取得率上昇、女性比率向上などの改革の成果は徐々に出てきているという。また、意識調査では、自ら挨拶している、互いの専門性を尊重した信頼関係があるなどのコアバリューに基づいた社員の意識も高まっているという。

2016年に行われたアクセンチュアの意識調査

さらに、2017年2月に発表されたGreat Place to Work Institute Japanの「2017年版日本における働きがいのある会社」ランキングでは、16位にアクセンチュアが選出されていることも、『Project PRIDE』を推進してきた効果だと言える。

今後は、更なる生産性向上に向けた活動を社内全体で進めていく方向にあると話す加治氏は、「Work HardからWork Smartへ向けて、各ステークホルダーを巻き込み、価値の出し方を徹底的に見直していければとチーム全体で話しています」と説明する。具体的には、月45時間以上の残業を原則ゼロにする制度や取り組みを開始し、有給100%消化も目指し、新しい人事評価制度である「Performance Achievement」を浸透させるという。また、ストレングスファインダーシステムを使って個人の強みをベースにした現場での新たな育成を進め、「Being the most truly human organization」を目指して各種研修プログラムを実験導入するほか、官・学・クライアントとともに働き方改革を推進していくとしている。

最後に加治氏は、次のように話し、働き方改革に向けての心構えを示した。「働き方改革によって、業績が下がるのではないかと心配する声もあります。しかし、勇気を持って取り組むことによって、アクセンチュアでは、イノベーションを実現でき、日本では2年で50%以上の成長を続けています。『Project PRIDE』これからも働きがいを高めるべく、全社を挙げて努力していこうと考えています。日本は長時間労働で一生懸命働くことが評価につながると長年考えられてきましたが、常識を疑って、新しい働き方を信じることで、結果的に業績も上がって会社も変革させることができます。働き方改革の先に、明るい未来が待っていることを信じることが重要なのです」。

加治 慶光 氏

アクセンチュア株式会社
チーフ・マーケティング・イノベーター

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