連載Review Ruby biz Grand prix 2017 vol.3 松江市で活躍する3社に聞く島根県で花開いたRubyを核とするOSSコミュニティ

Ruby biz Grand prix 2017の連載もいよいよ最終回。今回は、少し趣向を変えて同アワードを主催する島根県で、Rubyに関わるビジネスを行っている3社に、松江駅前にあるオープンソース・ソフトウェアに特化した研究・開発・交流の拠点「松江オープンソースラボ」に集まっていただいた。なぜ島根県松江市で、ここまでRubyのビジネスが盛り上がったのか、それぞれの立場から話を聞いた。

資本力ではなく技術力で勝負できる
それがOSSやRubyの魅力

──今日お集まりいただいた3社は、松江市でRuby関連のビジネスを精力的にされていると伺っています。それぞれの会社の概要を教えてください。

株式会社ネットワーク応用通信研究所
代表取締役
井上浩氏

井上:1997年3月、現在のネットワーク応用通信研究所(NaCl)の前身となる会社を設立しました。 当時松江市にオープンソース・ソフトウェア(OSS)を中心としたITコミュニティがあって、そこに参加しているうちにIT企業を立ち上げようという話になり、やってみようということになったのです。Rubyの開発者である、まつもとゆきひろもOSSの仲間で、当時浜松で仕事をしていましたが、我々の起業に参加しようと、同年8月に松江に引っ越してきて参加し、今も一緒に活動しています。

当初からLinuxやRubyなどOSSの時代が来るという信念を持っていました。それというのも、商用ベースのソフトウェアでは、メーカーの下で仕事をせざるを得ませんが、OSSなら技術さえあれば、お客様に対して隅々まで自社だけでサービスを提供できます。つまり、資本力ではなく、技術力で勝負ができる。そう思ってこれまでやってきました。

現在の業務はRubyなどのOSSを活用した受託開発が多く、たとえば日本医師会と作った「日医標準レセプトソフト」は全国1万6000以上の医療機関で使われています。無料配布のソフトウェアで、サポートで売上をたてています。こういうことができるのもOSSならではで、オープンソースの新たなビジネスモデルができたと思っています。

株式会社ワコムアイティ
代表取締役
福光靖氏

福光:ワコムアイティは設立25年になり、松江と東京に拠点があります。私自身は16年前に入社し、今3代目の社長を務めています。業務の6割が受託開発で、あとは運用保守やサポートです。開発言語は適材適所で使い分けていますが、特に指定がなければRubyを使うことが多いです。

島根大学との共同研究なども行っており、その成果として、新たな手書きサイン認証技術「Lafcadioサイン認証」などがあります。署名の書き順や速度、タイミングなど動的な情報も併せて照合するため、単純なパスワード認証に比べてより強度の強い認証が可能です。もちろん手書きなので、紛失する恐れもありません。この機能のサーバー側開発はRubyを使っています。

教育事業にも力を入れており、社内はもとより、高校での授業なども手掛けています。松江商業高校で実際にRubyを使ってプログラムを作る授業を担当しており、2017年度はお米屋さんに協力いただいて、高校生が受発注や販売管理システム、ECサイトなどを作成しました。

株式会社パソナテック
島根Lab長
田窪大樹氏

田窪:パソナテックは、パソナグループの社内ベンチャーで20年ほど前にできた会社です。人材派遣業がメインなのはパソナ本体と同じですが、ITやものづくりの分野に特化しており、派遣だけでなく受託開発も手掛けています。

パソナグループは、「社会の問題点を解決する」という企業理念を掲げており、パソナテックも地方創生をテーマに地方の大学と連携し、IT人材の育成を行っています。そのひとつが島根大学との取り組みで、年間を通してエンジニアがプログラミングの授業を行っています。大学にとっては実践的な教育ができますし、自治体にとっては人材流出を防ぐひとつの方法となります。さらに、地場の企業にとっては優秀な人材の採用につながるので、喜ばれていると自負しています。

この取り組みを進めていたことと、自社としても人材育成の拠点にしようと考えていたこともあり、2017年9月島根県松江市に「島根Lab」を開設しました。私は、そのLab長として赴任しました。

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  • 資本力ではなく技術力で勝負できるそれがOSSやRubyの魅力
  • 地方ならではのワークライフバランスの充実技術者不足のなか、人材採用も容易
  • アクセスが抜群の会議室を無料で利用可能進出企業エンジニアの交流の場としても活用
  • Ruby Biz Grand prix 2017