事例研究・バリューアップ術

大手不動産会社の
「老朽ビル・バリューアップ」に学ぶ

空室をリノベーションで解消する三菱地所レジデンスの「Reビル」事業

2018/01/17
事例研究・バリューアップ術

老朽化したオフィスビルを持つオーナーのなかには、空室を埋めるための効果的な手立てを打つことができずに悩んでいる人も多い。こうしたリスク・不安を解消するため、三菱地所レジデンスは既存ビルのオーナーから一定期間ビルを借り受け、リノベーションしたうえで転貸する「Reビル」事業を手がけている。「働きたくなるオフィス大全」編集部は、中小ビル経営のヒントを探しに、「Reビル」事業で再生した東京・日本橋馬喰町のビルを訪れてみた……。


編集部員が向かったのは、「ザ・パークレックス日本橋馬喰町」。JR浅草橋駅からほど近い場所にある元倉庫ビルを、三菱地所レジデンスが一棟丸ごと借り受けて、リノベーションしたもので、2016年12月に利用を開始した。

元は倉庫として利用されていたビル。外壁の色を塗り替え、1、2階部分の外壁タイルをはつった(写真:編集部)

元は倉庫として利用されていたビル。外壁の色を塗り替え、1,2階部分の外壁タイルをはつった(写真:編集部)

まずは「Reビル」事業の仕組みを抑えてみよう。

三菱地所レジデンスのReビル事業部の酒井勇生氏は「リスクや投資を最小限に抑えて、老朽化による空室増加などの課題を抱えているビルの収益力向上を提案する事業です」と話す。

空室で悩む老朽ビルのオーナーに対してリノベーションを代行

首都圏では再開発などによる新しいオフィスビル建設が進む一方で、築年が古く老朽化した中小規模ビルも数多く残っている。なかには好立地で利便性が高いにも関わらず、老朽化が原因で空室率が上昇しているものも多い。昨今の建築費高騰により、建物の大規模修繕や建て替えへのハードルは高くなっている。改修に多額の費用を投資したとして、期待通りの収益が得られるかが不安となり、対策に踏み切れないビルオーナーも多い。

こうしたビルオーナーの悩みに対して、リノベーションによるデザインの力を活かしながらビルを再生するのが「Reビル」事業だ。空室に悩む既存ビルオーナーから一定期間ビルを借り受け、リノベーションしたうえで転貸する。2014年5月に事業を始めてから2017年12月時点で9棟の実績がある。「ザ・パークレックス日本橋馬喰町」は、その7棟目に当たる。すべての物件がほぼ満室で稼働しているという。

「Reビル」事業ではオフィスビルだけでなく、社宅などの賃貸マンションへのコンバージョンも扱っている。賃貸マンションは既に1件の改修・稼働実績がある。「今後、企業が抱える社宅や寮などの老朽化した物件が増えることから、これらについても取り組んでいきたい」(酒井氏)。

「既存ストック活用」の事業としてだけでなく、環境負荷低減、既存建物の耐震化、供給エリアの活性化などの社会的な意義についても評価されており、グッドデザイン賞を2015年度、16年度と2年連続で受賞している。

事業スキームの概要は次のようなものだ。

1)空室に悩む築古の建物を三菱地所レジデンスが一括して借り上げる(マスターリース)
老朽化によって空室率が高まり、不安定な賃料収入のビルを、三菱地所レジデンスが空室保証型の契約で借り受ける(おおむね10年)。

2)三菱地所レジデンスがリノベーション工事を負担・実施

3)三菱地所レジデンスがテナントを募って転貸し、その差益で投資を回収
三菱地所レジデンスは借り上げ(マスターリース)期間の賃料収入の差益によって、改修費用の回収のほかテナント募集・仲介・管理などに関わる経費を賄うことになる。

4)マスターリース期間終了後、リノベーションしたビルをオーナーに返却
契約によって定められたマスターリース期間終了後は、リノベーション後の建物がオーナーに返却されることになる。リノベーションに応じて、将来の賃料収入が増加することも期待される。

「Reビル」事業の事業スキーム(資料:三菱地所レジデンス)

「Reビル」の事業スキーム(資料:三菱地所レジデンス)


文・写真:村島正彦

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