オフィス経営の分岐点

テナントと一緒に盛り上げる
若手オーナーの新しいビル経営

弦本ビルの弦本卓也氏とプロハの梶海斗氏に聞く

2018/05/09
オフィス経営の分岐点

東京・神田錦町にある5階建ての古い中規模ビル。若い人たちがシェアハウスとコワーキングスペースを運営し、興味深いコミュニティが形成されていると聞いた。ビルの名前は弦本ビルで、プロハ(TOKYO PRODUCERS HOUSE)と呼ばれるスペースに若い人たちが集まっていた。オーナーである弦本卓也さんがこのビルを購入したのは2015年、なんと27歳のときだ。オーナー自らテナントを探し、コワーキングスペースを誘致した。「仲間と一緒にビルを盛り上げたい」という若きビルオーナーの思いを聞いた。


弦本ビル代表 弦本卓也氏

弦本ビル代表 弦本卓也氏

――リクルートで働きながら、27歳のときにビルオーナーになられたそうですが、なにかきっかけはあったのでしょうか?

弦本(弦本卓也氏 以下、弦本)そもそもは、リクルートで不動産系メディアの企画の部署に配属されたことがきっかけでした。戸建て住宅の売買情報を担当する部署に配属されたのですが、自分には売買の経験がないので、カスタマーやクライアントの気持ちがわからない。その悩みを先輩に相談したら、「自分で家を買ってみればいいじゃないか」と言われたんです。配属から2カ月後、ローンを組んで新宿区内に新築の戸建て住宅を買いました。その家には自分も住みながら地方から東京へ来る就活生の滞在場所としても提供していました。ある程度の収入はあったのですが、本業のほうで今度は戸建て住宅の「売却企画」を担当することになったので、また「自分でも経験しなくては」と考え、翌年には売ってしまいました。

しばらくして、戸建ての売買でお世話になった不動産仲介会社さんから、「ビルを買いませんか?」と突然、電話がありました。私のことを「物件をうまく活用できる人」だと思っていただいていたようで、連絡してくれたのです。好奇心で見に行ってみたら、面白そうなビルだなと。頑張ってローンを組めば買えるとわかったので、思い切って購入しました。

弦本ビル

弦本ビル

――突然ビルの購入をすすめられても、すぐに決断できるものではありません。一体どこに面白さを感じたのでしょうか?

弦本食べる・住む・働くがひとつの場所にあることです。このビルは、購入時には空室が目立っていましたが、新築時は1階が中華料理店で、2階は麻雀店、3階はスタッフの休憩室、4、5階は住宅になっていたそうです。都会の真ん中にあるビルに、食べる・住む・働くための場所が、コンパクトなサイズでひとつになっている。それでなにか面白いことができるのではないかと思いました。

このあたりでこのクラスのビルを買うと数億円はかかります。しかし、このビルは土地が借地権になっています。毎月地代を支払う必要がありますが、その分、購入するときは建物部分の支払いで済み、1億円もかからないで購入できました。また、建物面積の3分の1以上が住宅として登記されていることもあって、住宅ローンを組むことができ、月々の返済金額が下がることで、フルローンで契約することができました。

――購入した当初から、今のような事業を描いていたのでしょうか?

弦本事業計画はほとんど何もありませんでした(笑)。見に行ったら面白そうなビルだったので、プランニングしないまま購入したというのが実情です。ただ、以前から頑張っている人を応援するような事業を副業でしていたので、そのための場所づくりをしようという漠然としたイメージは持っていましたね。

――現在、1階で以前と同じ中華料理店が営業していますが、その上の階は大きく変わりました。2階がコワーキングスペースで、3階がオフィス。4、5階はシェアハウスとなっていますね。テナントや入居者はどのようにして探したのですか?

弦本まずは身近な人にたくさん会いました。本業の合間にたくさん友人や知人をビルに連れてきて、見学会をやったこともあります。1カ月で100人くらいに声をかけました。ただ、多くの人が「面白いね」とは言ってくれるものの、実際に借りるまでには至らない。借りてくれそうな人を人づてに紹介してもらって、駄目ならまた別の人を紹介してもらって……。その繰り返しです。「仲間と一緒にこのビルを盛り上げたい」という思いがあったので、テナント募集を仲介会社に委ねて、広く募集することはしませんでした。


聞き手:編集部、文と写真:木内渉太郎(特記なき写真)

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