旭硝子株式会社(AGC旭硝子) - 日経アーキテクチュアSpecial

agc01 agc02 agc03

 

 石本建築事務所・札幌オフィスの移転は、同じビルの9階から2階へのフロア移動だ。自社で設計したビルに北海道の拠点を構えて50年以上。時代に即したオフィス環境の見直しを思うように図れなかったなか、ようやく機会を得た。2017年8月のことである。

 移転の背景には、国内の拠点間で連携の強化を図る経営方針がある。執行役員で札幌オフィス代表の榎戸正浩氏は、「例えば札幌で担当するプロジェクトの提案内容や品質管理などに、石本建築事務所という組織としての経験や技術を生かしていくわけです」と、連携強化の意図を解説する。

 連携重視の考え方は、札幌オフィスのレイアウトにも反映されている。「9階にオフィスを構えていた時には、パーティションで区切られた個人のスペースを広めに確保していました。しかしそれでは連携を図りにくい。そこで、個人のスペースを狭めてパーティションで区切るのをやめる一方で、コミュニケーションスペースを広げました」。

技術の価値を組織で共有へ
提案に「組織知」を生かす

 ところが、ここで課題が生じる。2階で利用するフロアは9階の時と違って北向き。冬場の夜は冷輻射が著しく、窓際にはコールドドラフトが生じる恐れがある。窓の外はイチョウ並木に季節感を覚えることもできる眺めのため、そこをふさぐのは惜しい。カーテンウオールであることから、建具そのものの取り替えは現実的ではない。

 そこで採用したのが、現場施工型後付けLow-Eガラス「アトッチ」である。榎戸氏は「窓の外がしっかり見える状態を維持しながら、冷輻射を低減する唯一の手法ではないかと思います」と、採用を決めた理由を明かす。

 「アトッチ」を採用した背景には、メーカーと連携し、組織として提案力の向上を図ろうとする戦略もある。

「組織力を発揮していこうというなかで、建築技術の面では『組織知』を強化していきたいと考えています。新しい技術を自社のオフィスに取り込み、その価値を組織で共有できるようにしていくことが重要です。価値を実感できれば、お客さまに対して自信を持って提案することができますから」

 「アトッチ」を提案していく可能性が見込める施設には、自社で採用を決めたオフィスビルのほかにも、札幌オフィスで多くの実績を持つ医療・福祉施設が考えられるという。

「医療・福祉施設では、設計想定を超える温湿度の設定で空調を運転しがちなので、結露の問題に悩まされている例が少なくありません。その対策として、施設全体やその一部に採用することが考えられます」

冬場は温度分布と気流を実測
効果検証が技術力の向上に

 ただ改修の提案のきっかけとなる顧客側の課題意識は、結露問題とは限らない。場合によっては、耐震補強かもしれない。それでも、顧客と接点を持つことになる構造技術者にも「組織知」の一つとして「アトッチ」という技術を共有できていれば、顧客側の課題意識に併せて、それを提案できる。

 今の札幌オフィスに「アトッチ」を取り付ける段階では、施工会社の協力で手順を見学する機会を得た。榎戸氏は「室内側からの取り付けに備えて、施工できる環境を整えておく必要があります。例えば週末を利用するなどの工程の工夫によって、お客さまの負担は抑えられそうです」と評価する。

 札幌オフィスでは「アトッチ」の効果を検証するため、冬を迎えたら室内外の温度分布と気流を実測する作業に入る予定だ。「予測値との差を確認し、差が生じたとしたら、その原因を追究します。そうした検証作業を通して、提案段階でお客さまに信頼の置ける予測値を示せるようになるはずです」。

 榎戸氏は組織としての技術力の向上に大きな期待をかけている。

agc04

(出典 : AGC旭硝子) 

agc_line agc_line